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平野ロジスティクス、九州の半導体工場ブームに新機能車で活躍へ

日本の九州における半導体産業の集積傾向が最近、さらに高まってきたことはご存じだろう。すでに数十年前から大手メーカーによる半導体工場の設置が進んでいて“日本のシリコンアイランド”という異名をほしいままにしていた九州だが、最近、この趨勢をさらに巨大なブームにまで高めたのは、半導体受託生産で世界最大の台湾メーカーによる熊本県菊陽町での半導体工場開設の決定であった。

世界最大手の半導体メーカーの工場進出を受けて、日本の半導体関連産業も大手装置メーカーを筆頭に、周辺機器・部品製造業も次々に同工場近辺への施設投資に踏み切った。工場関係・建設関係の新たな人口急増も見られ、熊本県菊陽町と周辺の地価や住宅価格は高騰し、建設業者を含めて人手の獲得合戦も熱を帯びているところ。

もちろん、大手フォワーダーすべてを含む物流関係業者もこの“半導体狂騒曲”を受けて、あっという間に九州での物流体制の強化・新設に動いたことは言うまでもない。半導体製造装置をはじめ、ありとあらゆる生産資材が菊陽町を中心に怒涛のように動き出すからだ。日本国内でいま、これほどの物流需要が湧いて出る地域はほかにない。

さらに、そうした物流企業から起用されて実際に「モノ」を運ぶトラック陸送業者も、九州で大車輪の活躍を始めている。その1社が、空港間OLT輸送で名を馳せている「平野ロジスティクス」だ。

GDPに準拠した温調トレーラー+1COOLなど平野ロジスティクスでは顧客の様々なニーズに
対応するトレーラーを空港間で運行している

同社の益子研一・取締役営業本部長は、「精密機器にして大型貨物、それが半導体製造装置ですから輸送には神経を使いますし、トラックもそれに応じた車両を用意する必要があります」と、製造装置シリーズの運送の難しさを語る。

同社は現在、大手フォワーダーの委託を受けて九州地区でも10月上旬から配車をしており、大型の製造装置でもほぼ毎週、それ以外の資材・機器輸送ではデイリーの輸送需要があるという。

また、航空貨物で言えば、熊本空港は 早朝や深夜の発着ができないなど、結局、便が多く設備も良い福岡空港や24時間運用の北九州空港を使うケースがほとんどとなり、九州北部からの横持ち輸送が不可欠になる事情もあるようだ。

「九州の、特に熊本県菊陽町周辺ではトラックが不足しているようで、フォワーダー手配のトラック業者だけでは運びきれない需要がある」と益子氏は指摘する。そのため、「やる以上は平野ロジでしかできない輸送を提供しよう」と、半導体製造装置の輸送に特化した新型トレーラーを作ったという。

「この新型トレーラーは、半導体製造装置の入ったコンテナをそのまま運べる幅広タイプで平ボディのもの。コンテナをトレーラーに固定できるロックも付いています。半導体装置だけではなく航空機のエンジンも運べるので、今後大型のものを運ぶのに活用していけます」

益子氏によれば、新型トレーラーは欧州で製造したもので、この12月には九州で稼働できる予定。半導体製造装置もそうだが、航空機のエンジンも大型化していることを考えて、「いま熊本で運んでいる装置より、もうひとつ幅が大きな最新の装置機械でも載せられるように設計されています」とのこと。すでにオランダや韓国で採用されている実績があるため、日本でもその新型トレーラーの採用に踏み切ったという。

今後の方向性として同氏は、「特殊大型貨物の輸送に特化して、平野ロジスティクスをブランディングしていきたい。大きくて誰も運べないような人工衛星・ロケットなどでも運べる方法を極めていければ」と意欲を示す。

背高&ワイド貨物に対応した+1α。半導体製造装置専用トレーラーはこの+1α進化版となる

一方で、半導体分野では温度調整が必要な部品や資材も少なくないため、これまた半導体輸送に適した温調トラックもオリジナルの設計で発注している。現在製造中で来24年秋には納車される予定だ。九州での半導体狂騒曲に、平野ロジは実輸送のあらゆる分野で積極的にコミットしていく姿勢を見せている。

熊本での半導体工場は昨22年からもっか24時間体制で建設が進んでおり、この23年末に完成する予定で、来24年12月までには生産を開始するという。22年からの10年間で熊本県内への経済波及効果は、なんと6兆8518億円にのぼるという試算まで出されている。

しかも、同半導体メーカーは第2工場、第3工場まで計画に入れており、第4工場まで視野に入れているとされているのだ。九州の半導体産業の集積ブームは10年ぐらいの単位で進みそうである。

2023年12月22日掲載


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