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役者が本番当日に「声」がでないなんて

まさか!!! 朝起きた私は青くなっていたと思う。
劇団藤村組旗揚げ公演2日目にして千秋楽。
私は「班女」と言うテーマで、ひとり芝居をすることになっていた。
初日にかぶっていたウィッグがずれるというハプニングがあったものの、なんとか無事に演技を終えていたのだが…

東京月光奇譚:劇団藤村組のメンバー

なんと、朝起きたら声がでない(◎_◎;)
カスカスの声しか出ないのだ。のどが痛い。
私の頭には自分の声が出なくなるという想定はなかった。
焦る。
私の役は、声を3種類使い分ける必要がある。
自分の地声、高い裏声、それと低い声、約10分間のお芝居で声の高さを変えて話すのだ。
地声はそれでも何とかなった。声が届くか心配ではあるものの、何とか出る。でも、高い声はまったくでなかった。
出そうとすると咳き込んでしまう。
さて、どうするか。

私は歌の先生と、芝居仲間の薬剤師さん、ふたりに助けを求めることにした。声が出なくなったけれど、どんなケアをしたらいいのか聞いてみることにした。
幸い、歌の先生はすぐに返事をくれた。
この時の手当の方法と、コンディション最悪な日でも舞台に立つマインド。このふたつについてアドバイスをもらった。私をとても勇気づけてくれた内容だったので、ここに書いておこうと思う。

まずは、落ち着いて自分を整えることが大前提。
本番で万が一高い声が出なかったとしても、それはその時。
まったく違う演出になっても、そのときのお客さんは演出を知らないのだから、落ち着いてというアドバイス。
その次に、お風呂にお湯を入れて蒸気のある場所で、聖水(歌の先生がオリジナルで作った精油スプレー)をシュッシュしながら、ゆっくり呼吸をする。
イメージはこんな感じ↓

鼻の奥にもその蒸気が行き渡る…。この見えないキラキラな蒸気たちがさおりん(私のこと)を修復していくイメージで、まずはひたすら呼吸に集中して、脳波を整えて!
そして、第一チャクラに手をあてて小さな声でハミングしてみる。これを第七チャクラまで続ける。
その次に、耳の上の場所を人差し指でなぜて癒着を着る。
奥歯で小指を片方ずつ噛みながらハミングする。
①右 ②左 ③両方やってみる。

当時のFacebookメッセンジャーより

呼吸を整えることは、歌のレッスンでいつもやっていて、第一チャクラから第七チャクラまでのハミングもしている。
声が出ないとわかったとき、ホテルにいられる時間はあと2時間ほどだった。時間がないかもと焦る気持ちで、最初は呼吸がうまくできなかったけれど、アロマ水をシュッシュして、呼吸をすると大好きな香りが鼻から入ってくる。そのたびに私の心は少しずつ落ち着いていった。この時点では、演出の先生に連絡しようという気持ちはなかった。何とかなるならば、何もなかったように舞台に立ちたい。

これが聖水のセット

次に届いた先生のメッセージが、本当に心に響いた。

どんなに声がでなくても、万全な体調でなくても、私自身のエネルギーがそこに立てば、私のエネルギーは満ち溢れる。 そのエネルギーを放つことに集中すれば、声なんて関係ない!! ルナちゃんの声が、今のさおりんの声で演じて欲しいのだなと思って。
胸を硬くせず、緩めて!

当時のFacebookメッセンジャーより

ルナちゃんは、今回演じるお芝居の役の名前。
声がでないとか、万全でないとか、そういうことはお客さんにはまったく関係ないのだ。私が舞台に立って、そのときの条件で精いっぱい演じるしかない。
こう思ったら心は落ち着いて、私の覚悟も決まった。
どんな声になっても舞台に立とう。

お風呂にお湯を張ってもわもわにしたためか、だんだんのどが緩んできた。
そして、同じホテルに泊まっていた役者仲間から、漢方薬とロキソニンを分けてもらった。彼女は薬剤師なので、薬の備えはしている。私は甘かったなぁ。そのときの反省事項だ。
漢方薬でさらにのどが緩んできたら、声が出しやすくなった。
あとはこのまま、過ごすしかない。

劇場について、小さくハミングをしてみたら、地声はまったく問題なかった。問題は高音だ。本来の高さでいけるかちょっと心配だった。無理に高い声を出して、咳き込んだら舞台は台無しになってしまう。。。
ここで演出の先生に、のどの調子が悪いことを告げて、本来の高い声がでなかったら、地声でやるかもしれないと伝えた。
先生は納得してくれた。というより、舞台にたったら役者が何とかするしかない。出ないでと言われなかったことに感謝した。

リハーサルは声をおさえて、流す程度で話をしてみた。
すべては本番にかけよう。

私は演技をするときは、必ずその役に「今日はどうしたい?」と聞いている。(自分に聞いているだけですが)
「ルナちゃん、どうしたい?」と静かに聞いてみると、ルナちゃんは普通にやれるような気持になっていたよう。わたし、声が出せるかな…。
ドキドキするけれど、本番は私の中にいるルナちゃんに任せるしかないのだ。もう、声が出る・出ないにこだわるのはやめよう。そのとき出た声で、ルナちゃんのエネルギーを伝えていくだけだ。

私の出番の直前、私はルナちゃんに話しかけた。「ルナちゃん、思うように動いていいよ。」
出番直前に、演出の先生も「できるよ」って感じで微笑んでくださったのも、心強かった。

さて、本番はどうなったかというと…
高い声を出すときに、ちょっと恐怖を感じたけれど、思い切って高く出すことにした。いつもの高い声が高いファの音だとしたら、今日のはレかもしれないのだけれど、それでも地声よりは高い。たぶん、事情を知らない仲間も気づかないくらいの違いだったと思う。
一番心配だった咳き込むこともなく、無事にお芝居を終えることができてほっとした。

お芝居の始まりは舞から
高い声もなんとか出ました
低い声になるところ
終盤:しゃべりきってほっとしました

支えてくれたみなさま、ありがとうございました。

【今回の学び】
声を守るために、のどの薬は用意しようと思う。
そして、ホテルに宿泊するときは加湿器を使う。
朝起きたら、お風呂にお湯を張って、アロマ水で深呼吸もする。
何よりも自分の体力を把握しておく。


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