コンサルタントの顧客分析術 <ニーズセット分析>
みなさんこんにちは。
マーケティングディレクター兼データサイエンティストのtohari.です。
昨今CRMツールやBIツールなどの充実に伴い、データサイエンティストのいない自社内で顧客データ分析を進める企業様が増えていると思います。
ですが、ツールがいかに高機能化しようとも顧客分析に対して一定の経験や知識がないとなかなかうまく使いこなせない、といったことも多いのではないでしょうか?
一般企業においては、組織が事業やブランド単位で構成されているため、その軸での分析は昔から実施されてきているものの、顧客軸という組織単位とは異なる軸での分析となると、まだまだ不慣れで事業単位で行うそれとはやり方も大きく異なってきます。
そこで今回はコンサルタントが普段行っている顧客分析のやり方をご紹介していきたいと思います。
顧客分析には数多くのやり方が存在しますが、打ち手につながる分析のやり方となるとある程度限られてきますので、いくつか覚えるだけで、実践の大部分はカバーできると思います。
もちろんこの記事だけで全てができるようになるわけではありませんが、少なくとも自社ビジネスに有効そうな分析手法についてあたりがつけられたり、やり方の目処が見えたりといったことができるようになればと思っておりますので、ご参考なれば幸いです。
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コンサルタントが主に用いる分析手法
冒頭でも申し上げましたが、顧客分析の手法は多岐に及びますが、主に用いる手法はある程度絞られてきます。そしてそれら分析手法の中でどれを用いるかはその都度で設定する「分析によって明らかにしたいこと」によって変えていく必要があります。
その分析手法とは以下のようなものです。
上記の顧客分析手法のうち、まず基本にあるのは「顧客構造分析」です。
この分析は自社の売上がどのような顧客によって作られているかを可視化するためのもので、様々な軸を用いて顧客を分類していきます。属性分析や新規・リピーター分析は超基本ですが、それ以外にもいくつか重要な分析があります。
どの分類を用いるかは、どのような軸で顧客を管理していくことが今後のビジネス拡大に大きく影響しそうかによって決まりますので、いくつか試しながらビジネスチャンスの発見につながる分類を探していく必要があります。
顧客分析のもう1つが「顧客成長分析」です。
この分析手法は、LTV(Life Time Value、顧客生涯価値)の最大化という視点に立って、顧客成長を促すための施策立案と実施に役立てようとするものです。
例えば顧客構造分析で、自社顧客を購入金額によってライト・ミドル・ヘビーに分解し、ヘビー客がどのような過程でヘビー客化したのか、その成長過程を顧客成長分析で見ていく、という使い方などがあります。
一度に全てのやり方は覚えきれないと思いますが、まずは主な顧客分析手法としてどんなやり方があるのか、全体像をさっとだけ理解しておけば良いと思います。
今回の記事では、顧客構造分析の中の「ニーズセット分析」について紹介していきます。
ニーズセット分析とは
ニーズセット分析の概要は以下の通りです。
上記を見ていただければわかると思いますが、ニーズセット分析は購入品の組み合わから顧客ニーズのパターンをモデル化し、グループ(=ニーズ)ごとに打ち手を変えていくことを想定した分析手法です。
購入商品の組み合わせといっても、1回の購入ということではなく、年間などの一定期間の中で購入された商品の組み合わせを見ていきます。
ですので、基本的には複数回購入してくれている顧客が対象ですし、様々なジャンルの商材を扱う業態の分析に向いています。
ニーズセット分析のイメージ
こちらをご覧ください。
ニーズセット分析の最小単位は、顧客ごとの購入商品構成比データになります。例えばAからCの3つの商品ジャンルを販売している企業があったとして、その中でAジャンルばかりを買っている顧客、Bジャンルばかり買っている顧客・・・、ジャンルを平均して買っている顧客など、その顧客がどのタイプには当てはまるかによって、グループ化していく訳です。
ちなみに、この時商品ジャンルが3つ程度であれば比較的わかりやすいですが、多岐に及ぶ場合人手で分類していくのは至難の技ですので、そのような場合には、多変量解析を使って意味ある分類単位を自動的に導いたりもします。
さらにそこで分類されたグループごとに、顧客特性にどのような違いがあるのか見ていきます。
ちなみに以下は家電量販店での分析結果になります。
家電量販店の場合、最近では家電にとどまらず、生活用品や食品など本当に様々な商品を取り扱っていたりしますが、蓋を開けてみると事業的にある程度意味ある顧客の買い回り方(お店の利用の仕方)としては数パターンに限られることがわかってきました。
*ご紹介する各事例は、機密情報厳守との関係から内容をある程度簡略化・改変しておりますので、あくまでもイメージとしてご認識ください。
某百貨店の分析事例
続いて百貨店の事例も少しご紹介したいと思います。
以下の事例の場合、一定以上の購入点数のある顧客をその構成比を元に4つのタイプに分類しています。
そしてさらに、各グループの顧客特性を深堀してみると、以下のようなことがわかってきています。
まさに「上位客 ≒ ストアロイヤル」ということなのですが、このような顧客を維持するにはどうしたら良いか、他の顧客タイプがストアロイヤルに育つにはどのようなきっかけ、トリガーが存在するのか、といったことが次の分析課題となってきます。
ちなみに、このような買い物の仕方が売り場づくりとどう関係しているかをみるために、以下のような分析も追加で行っています。
上記は、売り場ごとに利用者数と利用回数をプロットしたものになりますが、店舗ごとの比較分析において、非常に多くの売り場が平均以下にある、といったようなことがわかってきています。
まとめ
ニーズセット分析、いかがでしたでしょうか?
今回は店舗データ(会員データ)を元にした分析事例をご紹介いたしましたが、同様の分析はE Cでも実施しています。
それらの分析から共通する知見として、どのビジネスにも幅広いジャンル商品を購入してくれる、いわゆる「ストアロイヤル」タイプのお客様が一定数いらっしゃいます。
そしてストアロイヤルなお客様は、他のタイプと比べヘビーユーザーである割合が強くなります。同時にそうしたお客様は、他の店舗でも売っている商品でもそのお店で買い求めてくれていたりします。
そのようなお客様をきちんと認識し、そうしたお客様がどういう方で、どのようにして成長してくれたのか、またそのお客様は毎年どの程度離反しているのか、といったことを掴むのはとても重要だと思います。
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