見出し画像

ウェブ制作の学習で #今日の積み上げ を多用するのが危ない理由

「今日の積み上げ」というのは、毎日何をするか宣言することで、習慣化を即す学習法というか、ライフハックのようです。

ウェブ制作を勉強している人でも多用している人をよく見かけますが

あれを使い続けるのは、まずいです。
ヤバいです。
危ないです。

あなたは本当に頑張っています。なのであなたそのものをdisる目的ではないとご理解ください。

何が危ないのかを書いておきます。
これを読んだうえで、それでも大丈夫というのでしたら、あなたに合っている学習法でしょうから止めません。

はじめての方はお読みください↓↓

IT関係の学習は、積み上げではなく○○

ウェブデザイナー、エンジニアなど、IT関係の技術の学習は、そもそも「積み上げるもの」ではありません。
まず「積み上げるという意識で学習する」ことの危うさについて書きます。

例えば高校受験、大学受験、TOEICなどは、毎日継続することが重要だと言われますが、それは
「その技術が、今後身につけるすべての技術に必要となること」
「使用すべき場所(受験など)で使用される可能性が非常に高いこと」
が前提となっています。

IT関係の技術は、それが保証されません。

もちろん、プログラミングの基本的な文法、基礎レベルの構文、WordPressのテーマ構造などは必須なので、必然的に積み上げとなります。ですが、現場で使用する派生技術、応用構文やSEO、制作を補助するツールやアプリについては、変遷が激しいだけでなく、受ける案件によってはまったく使用されないこともあります。

----

例えば私の話ですが、8年ほど前に大きめの勉強会で「grunt」という自動化ツールについての発表をしました。当時、かなり頑張って勉強してこの発表をしましたが、一年後には使われなくなりました。「gulp」というツールが主流になったためです。

現在はそのgulpすらオワコン化しており、また新しい技術が使用されています。

ちなみに私はこの頃、Facebookのマーケティング本の共著者もしていますが、現在のFacebookは失速してマーケティングの主流ではなくなり、メタバースに舵を切っているのはニュース等で報じられているとおりです。

このようなことが頻繁にあるため、学習の際は
「それが業界に求められていて、今後の自分に必要なのか」
「どこまで学習する必要があるのか」
を把握しつつ、トレンドではなくなったときは、ためらいなく捨てなければならないのです。

「学習は積み上げ」という意識が高まると、身につけていたことを捨てることが難しくなります。
ここまでやったのに、こんなに努力したのに、となります。
先述のようなトレンドの変化があったときに切り替えがしにくくなるのです。

----

では、私の当時の学習が無駄であったのかというと、それは違います。学習するときに覚えたコマンドの書き方、MacOSの高度なカスタマイズなどは身に付いていて、その後のgulpなどのツールの学習のときに

かちっ

と音を立てて、ハマることがありました。

IT関係の学習というのは、積み木というよりはパズルのピースなのです。少しずつ手に入り、合うものはいつかはまり、合わないものは永久にはまりません。

学習する人の性格にもよりますが、いろんな技術をつまみ食いして、まんべんなく学習した方が良い結果が出ることがあります。マッシュアップとよばれるやつです。

手段が目的になる

この記事を書くにあたって、 #今日の積み上げ のハッシュタグを使っているツイートを100件ほど読みました。だいたいこんな内容でした。

----

#今日の積み上げ

UdemyのWordPress講座を見る
CSSの本10ページ
JavaScriptの勉強

今日もいい天気、勉強がはかどりそう。がんばるぞ!

----

私がこの人を、制作会社で採用する立場だとしたら、このツイートを見て思うのは
「ああ、頑張ってるな」

だけです。

学習した内容について、どう思ったのか。
つまずいたところ、感動したところを記事にしているか。
学習した結果を自分のサイトなどのコンテンツに反映しているのか。

採用者が知りたいのは学習の量ではなく結果です。
ウェブ制作の学習の目的はアウトプットなのです。

インプットだけを記録して、アウトプットをしていない、またはSNSに反映していない人がものすごく多いです。
自分のウェブサイトやブログすら作っていない人もいます。

このようなことを続けると「学習をした」という手段が目的になってしまいます。それは、IT技術に限らずどのような学習であっても危険なことです。

ネットの視界が偏る

ドラマやアニメ、ゲームのハッシュタグを付けてSNSに投稿すると、だんだんタイムラインにフォローしていないユーザーの、関連する投稿が出るようになります。
ここ数年顕著になった「おすすめ」機能です。

趣味の分野であれば、同じキーワードで投稿している人と繋がりを持てるのはとても嬉しいことですが、「#今日の積み上げ」に関しては話が別です。

プロのウェブ制作者は「#今日の積み上げ」というハッシュタグは使っていません。

これがすべてです。

「#今日の積み上げ」を多用すると、あなたがチェックすべき、現在ウェブ業界の一線で活躍している人のツイートは遠ざかり、あなたと同レベルの、参考にならない勉強の記録ばかりでタイムラインが埋まってしまうのです。

なお、プロでもこのハッシュタグを付けている人はいます。教えることを主業務としている人か、私のように、届けたい話題がある場合です。

昨今、ワクチン反対など、極端な思想のコミュニティがSNSで目立つようになりました。それはこの「おすすめ」の影響と考えられます。
当人たちには、自分と同じ考え方の投稿しか見えていないので「みんなそう言ってる」と言うのです。

Twitterだけならまだ良いのですが、最近はスマートフォンのアプリがトラッキングを行っているため、AndroidやiOSのおすすめ記事、YouTubeのおすすめ動画なども「#今日の積み上げ」コミュニティで統一されてしまいます。

こうなると、現場で人気の便利ツール、業界内で知る人ぞ知る人気エンジニア、オンラインイベントに気付くのが難しくなります。

偏った投稿は、ネットの視界を狭くしてしまうのです。

それでも使う人へ

「#今日の積み上げ」が危ない理由は以上です。

使い続けるかはあなたが決めることですが、以下のことに気を付けてください。

・明確な短期目標を持つこと
・感想もどこかに記録すること(よくわからなかった、も含めて)
・本やプレイリストを制覇することを目標にせず、必要な情報を取捨選択すること
・気になる用語が出たら検索して、プロが書いている記事を複数読むこと
・みずからコンテンツを作り運用すること

その手のパズルのピースが、いつか素晴らしい絵を描きますように。

ではでは

----

同業の皆様へ。
これからウェブ制作者を目指す人達に、懇親会や休憩時間に話してるようなことを書き残しています。

激しく同意、違うそうじゃない、どちらでも構いませんので、多くの方にシェアしていただければ幸いです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?