見出し画像

優れたリーダー・マネージャーに不可欠な5要素【孫子の兵法】

最初に

この記事はAteam Group Manager & Specialist Advent Calendar 2020 3日目の記事です。

エンジニア/デザイナーにも密接に関わってきますが、職種問わず共通することなので、Qiitaではなくnoteに投稿しています。

この記事はこんな人におすすめ

・孫子の兵法を読んだことが無い方

・読んだことはあるけど、うろ覚えな方

・将来リーダー、マネージャーを担える人材を目指している方

・リーダー、マネージャーとして、より成長・貢献したい方

・上司視点として、リーダー、マネージャーの評価や指導に自信が持てていない方

早速ですが、質問です。

あなたの考える、リーダーやマネージャーに必要不可欠な能力は、何がありますか?(複数回答可)

答えを求めてすぐにスクロールせず、一度手を止めて30秒〜1分ほど、理由とともに考えてみてください。




さて、いかがでしょうか。

「リーダーシップ」

「誠実さ」

「情報収集力」

「コミュニケーション力」

いろいろ答えがあると思います。

どれが正解でどれがハズレということはなく、あらゆる能力が必要とされているのが事実です。

とはいえ、それら要素が数十・数百個あると、何が強みで何が弱みか把握しづらいですし、次期リーダー・マネージャーを輩出するためのメンバーの能力見極め・支援や、実際リーダー・マネージャー業務をしている部下の公平な評価・支援がしづらいでしょう。

そこで今回のメインテーマを、孫子の兵法から学んでみましょう。

孫子の兵法にはこう書いてある

まずは結論から。

将とは、智・信・仁・勇・厳なり。

金谷 治. 新訂 孫子より引用

戦国の世の将軍、つまり現代で言うリーダーやマネージャーに必要な要素は、『智・信・仁・勇・厳』の5つである、と書かれています。

それぞれ1つの漢字にあらゆる意味が含まれているので、この記事ではこの5つの要素を解説します。

それぞれの意味と補足をする前に、孫子の兵法について軽く触れておきます。

孫子の兵法とは

『孫子』(そんし)は、紀元前500年ごろの中国春秋時代の軍事思想家孫武の作とされる兵法書。武経七書の一つ。古今東西の兵法書のうち最も著名なものの一つである。紀元前5世紀中頃から紀元前4世紀中頃あたりに成立したと推定されている。

Wikipedia: 孫子 (書物)より引用

孫子の兵法について中身を全くご存知ない方も、「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」や、武田信玄の「風林火山」は聞いたことがあるかもしれません。

また、戦国の世の兵法書としてだけでなく現代においても、マイクロソフトのビル・ゲイツ氏や、ソフトバンクの孫正義氏らの愛読書でもあるそうです。

単なる兵法書だったら約2,500年もの間読まれ続けることはないですし、現代で活躍するトップリーダーたちが参考にすることも無いでしょう。

現代のビジネスにおいても必読書と言われることもあり、実際読んでみると、国家のあり方、戦略の取り方、細かい戦術について…と、21世紀の会社経営や人生においても応用できる点が多くあります。

それでいて全13篇、漢文で6,000文字程度のボリュームなので、口語訳で読んでも1〜2時間あれば読めます。ぜひ読んでみてください。

ちなみに今回紹介する『智・信・仁・勇・厳』は、孫子の兵法 全13篇のうち最初の1篇「計篇」の、それも1段落目に書いてある、基本的な考え方のうちの1つです。

1つ目

ここからは、5要素を私の考えを交え、1つずつ補足解説をしていきます。

智・信・仁・勇・厳 まずは1つ目、【】。

これは知識や知恵だけでなく、対人スキル等のあらゆる技術も含めて指します。

カッツ理論による「テクニカルスキル、ヒューマンスキル、コンセプチュアルスキル」3つ全てが、【智】に内包されると考えて良いと思います。

もし【智】が不足していた場合、根拠が薄く行動が行き当りばったりに見られてしまったり、信じて・腹落ちしてメンバーが付いてきづらくなります。

また、実際に論理的に考えられた策・決断ではない場合、博打になるので成功確率も下がっていきます

戦に例えると、戦略・戦術のセオリーを知らない素人集団は、当然敵軍に簡単に考えが読まれますし、戦って勝てるわけもありません。

周囲の意見を聞き、知識を蓄え、論理的に判断し、それを分かりやすく伝える。当然ですが、リーダー・マネージャーにはこれらが必要になります。


これを言われたら【智】黄色信号:行き当りばったり 結局何が言いたいの? 詰めが甘い

2つ目

智・信・仁・勇・厳 2つ目は【】。

信頼や信用といった、人との関係性です。

当たり前ですが、メンバーは「この人は信頼できる」と思う人に付いていきます。

例えば、過去の経歴も実績も知らない人が上司に就いて、突如部署の方針をガラッと大転換した場合、どうでしょう?不安になりませんか?

また、自分の弱点に対し指摘をもらった際、関係性の浅い人から言われた時はイラッとくるけど、信頼している人から言われた時は反省する等、同じことを言われても腹落ち具合・納得度合いが変わるはずです。

名著『7つの習慣』で、信頼を銀行の預金残高に例えた「信頼残高」という言葉で示されているように、信頼は貯金と一緒で、地道にコツコツと貯めるしかありません。そして、失う時は一瞬です。

自らの属するコミュニティにおいて、信頼を高く保つのも当然、リーダー・マネージャーに不可欠なものです。


これを言われたら【信】黄色信号:信じられない 納得できない

3つ目

智・信・仁・勇・厳 3つ目は【】。

仁愛、仁徳、仁義等の、思いやり・慈しみの心です。

いくら優秀で行動力があり成果を上げている人であっても、周囲への配慮を欠いていたり、淡白な感情表現しかしていないと、人が付いてこなくなります。

この人から大切に思われている、期待されていると感じる言動が、心の底から自然とできていることも、リーダー・マネージャーには不可欠です。


これを言われたら【仁】黄色信号:冷たい ロボットみたい 人に興味ないよね

4つ目

智・信・仁・勇・厳 4つ目は【】。

これは漢字から最も読み取りやすいかもしれません。

勇気や勇敢といった、決断や行動する勇ましさですね。

ですが、いちメンバーからリーダーになると、責任の範囲がグッと重くなるので、途端に決断・行動が出来なくなるケースもあるようです。

まずは【智】を以って的確に判断し、【勇】を以ってしっかり決断していくこと。そして決断した後はそれを責任持って成功へ導くこと。

また、よくある誤解や失敗として、「なんでもやる」決断をしてしまわないように注意が必要です。

もし「なんでもやる」のであれば、もはや何も決めていないことと同じです。「なんでもやる」ケースが必要な場合もありますが、大抵はリソース不足の炎上や疲弊で崩壊を招くので、やらない決断をすることも、リーダー・マネージャーには非常に重要な要素です。


これを言われたら【勇】黄色信号:優柔不断 フットワークが重い 決めてくれない 仕事が無限に増える

5つ目

智・信・仁・勇・厳 最後、5つ目は【厳】

○○ハラスメントとすぐ言われがちな現代において、なんでもかんでも容認してしまう、厳しく指摘できないリーダーも多くいるのではないでしょうか。

なにも、常に怒っていろとか厳しい言動をすべき、というわけではありません。

目標やルール、約束を守れていない状況に対し、見て見ぬ振りをしたり、まぁ仕方ないよねという言動ばかりしていませんか?

毅然とした態度を全く示さない場合、その組織は目標やルール、約束に対し執着心が無くなっていき、どんどん秩序が崩壊し、競争力を失っていきます。

割れ窓理論という考えがあります。1枚の割れた窓を放置すると、他の窓も割られ、やがて街全体の治安が悪くなるという考えです。キレイなトイレは汚したくならないけれど、汚いトイレほど、どんどん汚くなるものです。

つまり小さな「まぁいいか」という気の緩み、ルール軽視や目標執着心の低下を、見て見ぬ振りをすると、いずれ大きな不正や歪になって現れるようになります。

時には毅然とした態度を示すこと。私個人の考えでは、現代最も失われつつあるリーダー・マネージャーの要素と感じます。


これを言われたら【厳】黄色信号:優しすぎる、甘い

結論

さて、いかがでしょうか。

この5要素に対し、耳の痛さを感じることもあったのではないでしょうか。

この5要素を高めていくことに終わりはありません。

「孫の二乗の法則」という考え方があります。孫子の兵法を原案として、孫正義氏が成功法則を漢字25文字(そのうち5文字は「智・信・仁・勇・厳」)で示したのです。それを解説した本の中で、孫正義氏自身もこう仰っています。

「これ(『孫の二乗の法則』)は一回僕から話を聴いて、理解した、納得したということで終わっちゃいけない。そんな甘いもんじゃない。二十年、三十年、百年かけて心底、腹の底から理解できたと、実力が身についたと、実践ができたといって初めて、真のリーダーになれると。永遠のテーマだと。僕自身、まだ、実際に達成できているというふうには思っていないと。満足していないと。まだその途上だということであります。

板垣英憲. 孫の二乗の法則 孫正義の成功哲学 (PHP文庫)より引用

私も偉そうにこの記事を書いておきながら、あらゆる黄色信号のワード言われてきたなぁ…と、思い当たる節が多くありました。

今の自分自身を振り返って悲観的になるのではなく、他者を見て批判的になるのでもなく、これからは『智・信・仁・勇・厳』を忘れずに、どうすればそれらを伸ばすことができるか?建設的に考えていきたいものです。

最後に

孫子の兵法について興味を持たれた方は、以下2冊の本を順番に読むことをオススメします。

金谷 治. 新訂 孫子

板垣英憲. 孫の二乗の法則 孫正義の成功哲学 (PHP文庫)


なぜなら

將智信仁勇嚴也

金谷 治. 新訂 孫子より引用

と、孫子の兵法でたった7文字しか書かれていないことを、延々とこの1記事分(4,400文字)書いても足りないぐらい、ギュッと濃縮されたノウハウが漢文6,000文字に詰まっているためです。

また、『孫の二乗の法則』では、孫正義氏が考える孫子の兵法の解釈や、それを更に昇華した考えが大変参考になるためです。


というわけで長くなりましたが、最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事を読んで、面白いとかタメになると思っていただけた場合は、スキやSNSでシェアいただけると励みになります。

明日のアドベントカレンダー

Ateam Group Manager & Specialist Advent Calendar 2020 4日目は @suzuki_sh がお送りします!「Amazon Braketを使って、量子コンピューターで巡回セールスマン問題を解いてみた」という、ゴリゴリな技術系記事のようですね。お楽しみに!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?