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seven the youth (ultraseven for adults) #48 greatest invade: 1st

#48 greatest invade: 1st

大学の授業を終えるとただちに、キリヤは高尾山のアジトへと急いだ。数日前に、レーダーがとらえた怪しい影のことが気になっていたからだ。その影はプロジェクト・ブルー(#19:アース全体を覆う対インベイド・バリア)をすりぬけ、日本上空に接近すると反応が消えた。

九州・北海道から始まり、次に中国・四国の上空、そして東北・関西・北陸に出現し、昨日は東海・中部となれば、今日は関東に姿を現すはずである。

(なにもおこらない。ということには、ならなそうだな)

アジトに向かう中央線のなかであれこれ考えていると、新宿駅に到着した。列車がたくさんの人を吐き出し、それよりたくさんの人を飲みこもうとしたとき、キリヤは背中右下に、鈍い痛みを感じた。すぐに何かが体に刺さっているのがわかる。

(こういうときは、あわててぬいちゃだめだな)

冷静に対処しながらも、意識は徐々に薄れていき、やがて床にうつぶした。車内は一時騒然となり、誰かが非常停止ボタンを押した。ただちに御茶ノ水の附属病院に運ばれたが、予断を許さぬ状況である。集中治療室では、ユリが対応していた。キリヤは譫言でくりかえし呟いた。

(アマダ、レーダーに注意しろ)

「イエス・ホウプ!例の怪しい影か。ユリ、教授の生命、たのんだぞ」

ザ・ユースの他の面々も、それぞれ高尾山のアジトに向かっている。ソウマは警視庁仮庁舎を出て、地下鉄から中央線に乗り換えようとして、ホームに立っていた。21時を過ぎているが、帰宅ラッシュはまだまだ続いている。中央線がホームに停車すると、ドアからたくさんの人が降りてきて、それとすれちがいながら、ソウマは乗りこもうとした。その瞬間、ソウマの身体中に嫌な感じが走った。武器のエキスパートなだけに、身に危険が迫ると本能的に反応する。人波に押されたあと急に立ち止まったとき、左の脇腹を撃ち抜かれた。

(運がいい。立ち止まらなきゃ、心臓だった)

ソウマはそのまま、ホームに倒れた。

それとほとんど時を同じくして、フルダも裁判所から附属病院に立ち寄り、御茶ノ水から中央線に乗ろうとしていた。改札を抜けると4番線に下り列車が侵入してきたところだったので、小走りに階段を駆け下りた。そのとき、急いだ勢いのまま、だれかに後ろから背中を押されてホームから転落した。停車寸前で減速はしていたものの、電車と正面衝突、数メートルとばされて
壁に激突した。

(あぶなかった。受け身をとらなかったら、全身打撲寸前だった)

鍛えぬいた肉体と優れた運動センスをもつフルダも、そのまま気を失った。ザ・ユースのメンバーは、キリヤをはじめ、ソウマ、フルダの三人が、病院送りとなったのである。

「ユリ、俺たちも気をつけよう」
「イエス・ホウプ!アマベくんも気をつけて。バリアのレベルを最大にしておきましょう」
「イエス・ホウプ!怪しい影にまだ動きはない、でも狙われた三人との関連も頭に入れておこう」
「モロボシくんは大丈夫かな、連絡がとれないけど」

エイリャン・ゴースは、これまでのエイリャン同様に、インベイドの妨げとなる地球防衛の拠点である、ザ・ユースとそのアジトをたたき、島国である日本全土を地球侵略の前線基地とすることを狙っていた。すでに日本各地に気配を隠しながら潜伏する侵略部隊は、地下から世界主要都市を破壊できる兵器の準備を進めている。

また、高尾山にあるザ・ユースのアジトを破壊するために、大怪獣パンドンをプラネット・ゴースから、アースに持ち込もうとしていた。

ザ・ユース暗殺部隊は、三人のメンバーを既に病院に送っている。日本は、いや、地球全体が今、史上最大のピンチを迎えようとしていた。

(くそー、いったい俺の身体はどうなっちまったんだ)

モロボシもまた、襲われてはいないものの、原因不明の体調不良に苦しみ、ピンチに陥っていた。授業を抜け出し、キャンパスのベンチに倒れこむように休んでいた。が、キリヤたちが何者かに襲われたことを知り、アジトへと黄色いビートルを走らせる。刺客はモロボシにも接近していた。

(いま襲われたら、まじやばい)

新宿から高速に乗ると、後続車の動きが不自然で、明らかに怪しい。

(きたー)

容赦なくミサイル攻撃を仕掛けてきたが、二車線を利用してうまく避ける。するともう一台が追い越し車線に現れる。

(二台目がいるのか)

二台同時にミサイルが発射されると、加速して急カーブに入る。

(しばらくカーブがないな、次は片輪走行だな)

一台が横に来たので、減速して前方においやる。

(はさまれた)

前後からのミサイル攻撃で、絶体絶命か。

(せーのお)

モロボシがハンドルの中央のボタンを押すと、車体がジャンプする。二台は相打ちで爆発した。

(やった、こんなにうまくいくとは)

八王子まで耐えられそうもなく、石川パーキングエリアで気を失った。だが刺客はもう一台いて、ビートルの後ろに静かにゆっくりと停車した。前後の扉が開き四体のエイリャンが出てくると、一斉にモロボシに銃口を向ける。
だが、トリガーに指をかけようとしたとき、助手席から出てきた一体の化身の攻撃に四体は倒れた。いなくなってからもずっと見守ていたミクラの魂は
モロボシの意識がもどるまで、そばを離れることはなかった。

アマベもアジトも無事であった。

「モロボシ、よく無事にここまでたどりついたな。ビートルが動いてたから安心はしていたけど」
「アマベさんこそ無事でよかった。ザ・ユースはそう簡単にはやられませんよ。でも、少しだけ休ませてください」
「イエス・ホウプ!おまえがいるだけでも、心強いな」

モロボシは休憩室に入ると、ベッドに倒れこんだ。壁の時計は午後11時となっている。夢かうつつか、誰かが呼ぶ声がする。

「321号!」

モロボシが眼を開けると、枕元にはウルトラセブンが立っている。

「いや、地球での呼び名に従って、セブン・ザ・ユース、と呼ぼう。君の心と体は、これまでのエイリャンとの激しい戦いによって、かなりのダメージを受けている。これ以上、ここアースにとどまることはひじょうに危険だ。ネビュラМ78に帰るときが来たのだ」

(でも、この青く美しい星をインベイドしようとするエイリャンは、あとを絶たない。俺がいなくなったら、アースはどうなっちゃうのかな)

「今は自分のことだけを考えることだ。アースに残ることは死を意味する」

(もとの体にはもどれないんかな)

「回復するには、ネビュラM78に帰る必要がある。君の体はノンマルトとはちがうのだ」

(いまは帰れない、アースにとんでもないことが起こりそうなんだ、このまま放ってはおけないよ)

「忠告しておく。これ以上、エネルギーを消耗してはならない。ネビュラM78に帰ることができなくなる。けっして眼鏡をかけてはいけない」

赤い眼鏡が床に落ちた。眠りながら喋っていたモロボシは飛び起きて、額の汗を拭った。ふところに手を入れると、赤い眼鏡がない。眼鏡は床に落ちていた。

(夢じゃなかったのか)

#to be continued to 2nd.

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