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「WABのカルチャーを探る」オランダ滞在レポート

こんにちは。We are Buddies(WAB)の西角綾夏です。今回は、バディプログラム発祥の地、オランダでの滞在期間の様子をレポート記事としてまとめてみました。私とWAB代表の愛梨ぽんは、2022年7月の頭から2週間オランダで過ごしていました。目的は、「オランダカルチャーを感じること」!

WABが行っているバディプログラムは、オランダが発祥であり、WABの根底を貫く思想や組織文化には、オランダカルチャーが浸透しています。私は、これまでオランダで青春時代を過ごした愛梨ぽんからたくさん話を聞くことでイメージを膨らませていましたが、実際にオランダを訪れるのは初めてでした。

教育・福祉大国であるオランダからなにかヒントを得ようと、学校や福祉施設など、様々な場所へ視察に行きました。順番に紹介していきたいと思います!ちなみに、毎日の様子は現地でインスタライブを行い、リアルタイムに私の所感を発信していたので、もしよければそちらもご視聴ください。アーカイブはこちらから!

オランダで40年バディプログラムを行う団体ーVitalismaatjeー

まず、初めは40年間オランダでバディプログラムを行っているWABの本家ともいえる団体Vitalismaatjesへ。この団体へのヒアリングをきっかけにWABが始まって以来、年に1度情報交換をさせていただいています。日本でもバディプログラムが展開していることをとても喜んでくださり、どんな些細な質問にも惜しみなく、全力で答えてくれました。

Vitalismaatjesさんは、活動をより多くの方に届けたいという思いから、オペレーション改善やマニュアル化が喫緊の課題である私たちに、40年間の活動で培ったノウハウをたくさんシェアしていただきました。特に響いたポイントは、初期登録やマッチング後の進捗管理など、工数の多い事務的な手続きはすべてシステム化し、バディズたちのコーディネートにたっぷり心と時間を尽くしているということ。コーディネーターのスタッフは、3ヶ月に1度バディズたちの活動の様子を実際に見に行くなど、2人の関係性の変化を間近で見守る姿勢からは、大きな学びを得ました。

大先輩でありながら、海を越え、同じ思いでそれぞれ活動に取り組む、仲間のような存在。そんな人々とのつながりは本当に素敵だなと、次に会うときにはどんな報告ができるのか楽しみになりました。

モンテッソーリ・メソッドを取り入れた学校

子どもの幸福度が世界第1位といわれるオランダ。多種多様な学校が存在し、どの学校でどんな教育を受けるのか、子ども自身が選択できるオランダの学校。その多様性、子ども中心の学びを見てみたいと、様々な学校へアポを入れましたが、現地はちょうどバケーションの時期。唯一お返事をいただいたのが第6モンテッソーリ・アンネ・フランク小学校でした。この学校は名前の通り、モンテッソーリ・メソッドによってカリキュラムが設計された学校です。アンネフランクの母校でもありました。



モンテッソーリ・メソッドの特徴は、子どもたちが手にとって触れることができる教材で、3R’s(読み・書き・算数)を学ぶということ。教室には、色とりどりの教具が至る所に置いてありました。寝転がったり、地べたに座ったり、自分が心地良いと感じる場所と体勢で、思い思いに教材を手に取る子どもたち。教室が静謐な空間となっていたのは、子どもも教師も、自らにとって切実な、目の前の事象と向き合っているからなのかなと思いました。

ガイドしてくださった先生もとても素敵な方でした。先生方は、子どもたちのことを「主観で判断せず、ただその子が何をしていたか、どんな様子だったか、事実だけに着目する」ということを徹底しているようです。自分のメガネを外して、フラットに相手を見るというのは、簡単なことではないからこそ、私もこの先ずっと取り組み続けたいなと思いました。

重度障害者向けの通所施設

ここからは福祉系の施設。重度障害者の方が、日中の居場所として利用する通所施設Gemivaを訪れました。こちらの施設はフロアごとに、利用者の方の過ごし方が異なっています。障害レベルだけでなく本人が「どう過ごしたいか」によって部屋分けをしていました。利用者の方は、精神障害の方、知的障害の方、身体障害の方など、障害の種類や程度も様々。スタッフの方曰く、「みんなごちゃまぜだからこそサポートし合える」とのこと。

施設内にあるスヌーズレンという感覚療法を行う部屋

こちらの施設では、オランダ発祥のスヌーズレンという感覚療法を用いるお部屋も見学させていただきました。テーマパークのアトラクションの一室のようなお部屋で、ウォーターベッドにゆっくりと身体を沈ませ、ゆらゆら揺れるライトを眺めると、自然と何かに包まれていくような安心を感じました。リラックス効果というと、刺激を排除した空間をイメージしてしまいがちでしたが、光や感触、音など心地良い刺激を用いるというのはとても斬新で面白かったです。日本では認知がまだまだなのかなと感じましたが、設置や仕組みも複雑ではないので、ちょっとずつ取り入れられていくといいなと思いました。

街のなかに溶け込み、関心の有無による分断を防ぐ

このほかにも、ダウン症の方が働かれているカフェや、知的障害の方が働いているベーカリーなど、様々な場所を訪れました。障害を持った方が働かれているお店は日本にもいくつかありますが、オランダはそうしたお店の数が多く、そのどれもが自然と街に馴染んでいることがとても印象的でした。お店の外観や内装、商品などのデザイン性が高く、障害の方がかかわっていることを過度にアピールしていないんです。

もちろん、お店のコンセプトや考え方に共感してそのお店を利用する方もいますが、街を歩いていてふらっと特になにも意識せずに利用するお客さんもたくさんいるのではないかなと思います。関心がある人だけではなく、関心のない人もいつの間にか同じ場所にいるということは大事なことだなあと。

オランダは、障害福祉はもちろん、環境や教育など社会問題につながる分野との接点が圧倒的に多く、人々の関心の有無による分断が生まれにくい社会なのではないかなと感じました。

盛りだくさんだったオランダでの日々。WABが大事にしている「ありのままでフラット」という在り方・考え方。訪れた場所はもちろん、街を歩くだけでも、たっぷりと味わうことができました。例えば、この2週間お店に入って店員さんから「日本人なの?」「オランダはどう?」「旅行なの?」など、話しかけられたことは一度もありませんでした。社交辞令や踏み込んだ介入が全くないのですが、マニュアル通りの接客というわけではなくどこか温かさがある接し方。

一人ひとりが「自分自身を大事にする」ことにまずは取り組んでいるからこそ、「相手も自分を大事にしているだろう」という前提がある。他者の安心安全が脅かされているときには、惜しみなく手を差し伸べるが、それ以外は他人には干渉せず、それぞれが自分を大事にしているという雰囲気がとても心地良いなと思いました。

オランダのこのカルチャーは、現地で空気のようにあたりまえに流れているからこそ、どこか凄いのか、なぜ凄いのか、切り取って説明するのはなかなか難しいです。だけど、目に見えなくても、醸し出される空気感や在り方が積み重なって文化がつくられるはず。日本でもWABの取り組みによって、「自分を大事に、相手も大事に」が少しずつ浸透していくといいなと思いました。


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