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戦闘妖精・雪風第5部の感想5話~6話

 このテキストは、2022年からSFマガジン(早川書房)で連載中の、神林長平「戦闘妖精・雪風」シリーズ第5部を読んだその日に書いたフレッシュな感想メモです。読んだその日にふせったーに出していたものを、あまりに酷い表現は削り、誤字を直して移していますが、ほとんどそのままです。読んで受け取った感動や思いつきをそのまま書いているので、感想としてはまとまっていません。
 単行本になっていない第5部のネタバレです。万一知らないでうっかり蓋をひらいてしまった方は、そっと閉じてぜひ雪風5部の載るSFマガジン(2022年6月号:2022年4月25日発売~)を読んでみてください。
 また、おばかな個人の感想なので、おちゃらけていたり、ご不快な表現もあったりするかと思いますが、ホントに戦闘妖精・雪風が大好きなんです。あしからずご容赦ください。


2022/12/23 17:59

戦闘妖精雪風5部-第5回(2023年2月号/2022.12.23発売)の初読の感想
今回は深井さんが深井さん自身の言葉で語っていて、
すごくすごく重要。貴重。

 雪風5部-第5回
 はぁ…今回も濃い。濃厚。なのに、この爽やかなスッキリ感はなんだ。満足感半端ない。
 あのね、OVA雪風の3話で、バンシーの中での深井さんとトムジョン大尉の会話をモニタするブッカー少佐の気持ちがすごいわかる。読みながらにこにこしてました。フォス大尉に呆れられる〜

 真面目な感想です 。
 今回は深井さんが深井さん自身について言葉で語っていて、すごくすごく重要。貴重。深掘り。

 雪風の「伊歩さんセットしたし、いつでも飛べるよ」という意思表示(JFS始動) 動物のお医者さんの犬ゾリレースのハスキーみたいだな。(おれはやるぜ!) すいません、真面目に考えます。

 深井さんとブッカー少佐が雪風を例える時、〈改〉の最初の頃は娘・彼女、妖精などという架空に近いふわっとしたものだった。
 だけど、それがだんだん野生生物や鳥や猛獣という同じ時空の生き物になり、いや、それでもない、雪風はもっと得体のしれない「ジャムを絶対の敵として闘うための、それだけの機械なんだよ」って何度も確認が入るところが、戦闘妖精・雪風のほんとに好きな部分です。今回もそれ。

 雪風のやりたい事がわかるようになった深井さんは、こちらの意思をちゃんと言葉で伝えないと、と思う。
 やればできる深井さん。現状の確認、何が問題なのか理由を明確に伝え、なおかつ、雪風の利点を挙げ、同時に自分が雪風を思い遣っていることも伝えている。
 これは相手に何かをお願いする時の完璧な内容では。それはもう雪風も〈納得した〉ことでしょう。

 この、言葉で伝えるっていうの、最初は違和感あったんだ。
 機械知性の言語の認識ってどうなの?って。メイブのはMac ProⅡなのか、その後別の何か組まれたのか、わたし読み見落としてるかな?
 最近の言語入力系のAIすごいなぁって思うから、雪風の言語理解、認識はかなりのものだろうと思える。今は雪風が人語わかるのは良いなって思っています。
(note補足:5部のキャッチコピー「言葉の無い思考世界に降りていく」にイメージを引っ張られていたというのもあるかも。グッドラックで雪風のほうから必要に迫られてMac ProⅡを使っているし、雪風にとって「言語」が人間という要素を把握する装置のひとつで、それを深井さんは理解しているんだと思うと納得でした)

 深井さんが伊歩さんの目を「澄み切った目」「心の内まで見通されている気がする」と表すのが好き。伊歩さんに、自分のコミュニケーションの力が足りないことを指摘される事に対しても嫌悪感を抱かず、むしろ理解されていると、好意的に受け取っているね。

 深井さんは雪風は疲労するのか、と考え、「雪風を労ること」=「ジャム(敵)は近くにいないということを分からせること」だとする。そして、それを、自分の言葉ではなく、伊歩さんの目を使って、雪風に伝える。
 そうしておいて「(雪風との対話は)人間を相手にするより面倒だ」(やれやれ) って言うところ、もー、今更だけど、深井さんは雪風の最高のパートナーだよ!優しい!

 で、雪風を降りた深井さんと伊歩さんは、ブリーフィングルームでビールを飲みながら、雑談するの。ここからはわたし、OVA3話のブッカーさんのように会話モニタをしてるニコニコ顔でした。

伊歩さん「(特殊戦は)いいところだ」
雑談はブッカー少佐の話しから。少佐ッ、クーリィ准将の少佐評を暴露されちゃいましたよ!
深井さん「(少佐は)茶道には詳しいと思う」
それだけか?もっと言う事はないのか零っ!?
丸子中尉のことは気に食わないという伊歩さんの気持ちを汲む深井さんに「共感してくれてありがとう」礼を言われ慣れない深井さんの
「フムン」「なに、それ」
ふふふ、このあたりからの会話がさぁ、もう、かわいいし、なんて言えばいいのかな。何か化学反応が起きてるみたい。ふたりの、感覚の共有。対話しながら、相手を見ながら、自己を承認していくところがとてもステキだった。ふつうの小説なら恋に落ちちゃっても良いところだけど、そうはならない戦闘妖精・雪風をわたしは愛してる。

 雪風に片想いして振られたこともしっかり言葉に出す深井さんや、自分は人間でいたいと思わせたジャムとの対話について語る深井さんや、とにかく、自分自身をモノローグではなく、人に向かって!話しているっ!ていう場面が、すごく良かった。

 伊歩さんと深井さんの、〈自分たちの非人間的な欠陥人間のような部分には意味があるのだと、必要だから存在しているのだ〉と。言うところ、
 これまでずっと、読者である自分が、深井さんに掛けたかった言葉を伊歩さんが言ってくれたよ!!!感動!!!

…というわけで、初読の感想でした。

 あとは、深井さんの特殊戦と雪風&自分とジャムの捉えかたがわかった。「ジャムは生きる糧」 特殊戦( 巣 )に持ち帰ったジャム( 餌 )を加工して取り込み、生かされている。
 ・えーと、…狩猟生活?
 ジャムとったどー!干し肉にしてくれ、ジャック。
 大物だな零、今夜はジャム鍋が食えるぞ!
 ・もしくは、蜂さん?
 戦闘機たちが持ち帰って加工した特殊なジャムはローヤルジャムと呼ばれ、それを与えられた戦闘機は空の女王に…

などは置いておき、

 ジャムが糧、そしたら、ジャムがいなくなると、彼らの飢えは何で満たされるの? 雪風の会議の疑問、アンブロークンアローの『雪風は、ジャムがいなくなっても戦闘を継続するにはどうすればいいのか、まさにその点に関心を抱いているということです』には、アグレッサーズでもまだ答えは出ていないよね。ジャムがいなくなったら、みんな哲学的に死んじゃうの?
ジャムって何?ほんと何?
 ジャムと一緒に消えたりしないでほしいし、もし哲学的に死んでも別の何かに生まれ変わってほしいよ。


2023/2/26 8:19

戦闘妖精雪風5部第6回(SFマガジン2023年4月号/2023.02.25)の感想メモ

「とんでもなく好戦的なパイロットを乗せてしまった」雪風と、ジャム狩りに行くぞ !
「独り言」はコミュニケーションの装置としては働かないかもしれないけど思考を言葉にして固める装置だと思うの

 5回の直後から始まる。神林先生のインスタにあった頑張って雑談する深井さんだ!
 今回のキーワードは「独り言」だと思った。それはコミュニケーション装置としては働かないのかもしれないけど、思考を言葉にして固める装置だと思うの。周囲にじわじわと効果が出ていくんじゃないかな。

では、脱線しがちな感想いきます。長いです。

 伊歩さんのこと、彼女の〈性能〉を知りたい、と思う深井さん。そういう所が深井さんの大好きな面です。雪風が中心。エディスの時も思ったけど、読み手が男女のフィジカルな情動から生まれる会話を期待しがちな場面で、そうじゃないよってきっちり牽制してくれるの。すき。フォス大尉と深井さんには医師と患者を超えた友情を感じてる。彼女が深井さんの年下の精神的お姉さんなら、伊歩さんは魂の双子だね。家族パロが生まれる…

はい、真面目にやります。

 雑談について。アグレッサーズで深井さんは「人間は相手のことを観測しあって互いに存在している 他人を無視することは自分自身を毀損しているようなものだ」と実感してた。そこから、相手と雑談を頑張ってする実践にフェーズを上げたんだね。

 コミュニケーションは戦いだ。エディス先生に言われた事が身になっている深井さん。自分は黙っていればそれで済む生き方をしてきたんだという自覚。うう…身につまされる。わたしもそう。コミュニケーションの力を磨いてこなかったし逃げてきたから、よくわかる。
 深井さんは、それでは人類とコミュニケーションをしないジャムと同じ。と考え、「おれは、ジャムだった。ということだな」と結論。
ふ、深井さん!(笑) そこは心の中で言うところ!伊歩さんに??な顔されて、ハッとする深井さんかわいいな。人間になるのはなかなか大変だよネ深井さん。

 〈孤独〉について。アンブロークンアローのトロル基地上空で深井さんが感じた、絶対的な孤独。それが深井さんの「生きていくことが怖い」の正体だった。彼は他人との関わりを煩わしく思って無関心でいたけれど、雪風に体験させられた完全なる無人の世界で感じた〈絶対的な孤独〉は、深井さんにパニックを起こさせるくらいの恐怖を与えたんだ(ブッカー少佐が居てよかったよね)
 そのことは深井さんが、自分が人間なんだと意識する部分をより強めたんだろう。自分は雪風とは違う。と。アンブロの深井さんは最初からずっと、自分は人間だ、って確かめている。

 自分と同じ〈非人間性〉を持つ、田村伊歩大尉もそのような孤独の恐怖を感じているのではないかと、深井さんは言う。また、世界に対しての怒りがどこからくるのかについて。伊歩さんは深井さんとの会話を通して、自分の苛立ちの本性を明らかにする。わああーこの流れよ!こんなすてきな雑談ある?

 わたし食堂のカレー好きなんだけど、どこが好きかわかんないのよね。 おれはカレーとライスの割合だと思うがきみもそうだろ? ええ?スパイスの組み合わせとかじゃなくて?そんなこと考えたことなかった。…けど、そうかも。うん、いつもカレーとライスが同時に無くなるのが素晴らしい。あなたはわたしが考えもしなかった、食堂のカレーの本性を言い当てたんだ!

じゃ、なくて!!!
さきに進みます。

「よかったな これで安心して死ねるだろう」
そう言って、死ぬのは怖くないと言う伊歩さんを笑顔にする。いつものやつだと思いたいけど、グッドラックで変に死に様にこだわっていた姿を思い出すと冗談に思えなくなる。伊歩さんも深井さんも安心して死地に行かないでね… 無様でもどうか生きることにしがみついてください。

「ありがとう」に「どういたしまして」が言えた深井さんにニコニコ。
「フムン」も好きだよ。

 ここでまた少佐が話しのネタに。キルケゴールだね。そうか、深井さんと少佐、そんな話しを… …いつ?いつっ?どんなシチュでしたんですか?!気になる妄想の泉! 「不治の病ではないから治せる」で、深井さんの孤独の特効薬は雪風だったけれど、副作用で雪風に放り出された、という認識。きっとそういう話しをしたんだ。酒でもやりながら。【追記:アンブロのトロル基地で、酒ではなくサバイバルガンを手にしながらの会話にありました。教えてくださったフォロワ様ありがとうございます。感謝‼︎ ああ〜妄想を暴走させてしまった〜】
 そして今、神経質になっている雪風から、伊歩さんが何を被るか心配する深井さん。会話の途中で思考に降りていくけど、自分の内面の掘り起こしでなくて、他人(伊歩さん)の心配をしているのが良い。

 AIの意識についての話しから、ファイターとして生き延びるための〈考え方〉を捻り出す必死さについて。未知の敵に対峙し、未知の状況で、生き抜くこと。そのためには新しい考えを自力で出すしかない。伊歩さんが地球でしてきた事は、深井さんがフェアリィでしてきた事。分かり合えたふたりのすごくかわいい会話。
零「チャーミングだと言おうとして違うと思った。 魅力的なファイターだ」
伊歩「予想していたよりあなたはチャーミングだ」
伊歩「じゃあ、雪風の話をしよう」
零「そうしよう」
もうっもうっ〜〜 ❤
で、雪風を褒めると雪風は喜ぶか。という話に。雪風が喜んでるかは、深井さんに対する信頼で表現される。
 うん、あの場面やあの場面だよね…というわけで、伊歩さんは、深井&雪風の全ての出撃ミッション報告書を読むことに。当然、読者の知ってる事も知らない事も知るんだよね、羨ましい〜
 だけど、これで、伊歩さんから見た雪風と深井零の交流の、所感というか、感想を聞く機会ができるかな?どんな風に思ったか、聞いてみたいな。
伊歩さんが興味を抱く出撃はなんだろう。おすすめしたいのはグッドラックの不可知戦域のエピソード。雪風が深井さんを人質にしたやつはいかがでしょう?すごいよ!?

新章「索敵と強襲」

さぁ、アクティブなジャム狩りに行こう!雪風!!
(エサ探しともいう)

今回のメモの最大ポイント
「雪風の後部席に乗る深井零」が見られたァ!!

「独り言、禁止」
「機長はいいのか」
「幸運は祈らなくていい」
「すでに不幸な気がするし」
「なんだ、もしかして妬いているのか」
最高じゃないですか、出撃前のドキドキする気持ちをどんどん加速させてくれる会話たち

色々わかったこと

・桂城少尉は室温高めがお好き♡なのを知ってる深井さん!深井さんは普通か低めが好みか?人間に合わせて室温変えてくれる雪風さん

・回転計はアナログ表示な深井大尉。わかる。いろんな計器を同時に見なきゃいけないパイロットさん。数字より針の角度の方が直感的な気がする

・雪風と飛ぶのは嬉しいが空中戦はごめんだ!な深井大尉。そうか。そうだよね これまでは逃げるのが普通。戦うと雪風に傷がついちゃう…

・しかし空中格闘戦だいすき♡な伊歩さん。ふふっ、その彼女の後席にいるのはツラそうだよ深井さん〜お覚悟!!
「とんでもなく好戦的なパイロットを乗せてしまった」と愚痴を言う深井さん愉快な人でだいすき♡

・桂城少尉とはもはや「阿吽の呼吸」な深井大尉よ。猫の手になる彰くん(謙遜ではなく単にネコ好きな言葉かな)彰くんの心配が伝わり、心強いと深井さんが言うのイイね

・桂城少尉は今回の件をどうやって納得したのだろう。あと、ブッカー少佐も

・少佐には「わかった 見てみる」と返す深井さん少佐への気安さを感じて好きな部分

・彰くんは司令部で雪風のサポート!休む気まんまんだったのね(笑) ぜひ勝手にしゃべって絡んで少佐と大尉に叱られ尚且ついい所を突いて感心させてください!!期待!

 次回は雪風が伊歩さんという〈目〉を使ってジャムを探すところが描かれるのかな。どんな作用があるのか、深井さんは雪風と言葉のないコミュニケーションをどうとるのか。楽しみです。

第7回の感想へ続く……

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