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戦闘妖精・雪風第5部の感想12話~13話

このテキストは、2022年からSFマガジン(早川書房)で連載中の、神林長平「戦闘妖精・雪風」シリーズ第5部を読んだその日に書いたフレッシュな感想メモです。読んだその日にふせったーに出していたものを、あまりに酷い表現は削り、誤字を直して移していますが、ほとんどそのままです(今回は再読した感想もけっこう入れた)。読んで受け取った感動や思いつきをそのまま書いているので、感想としてはまとまっていません。
 単行本になっていない第5部のネタバレです。万一知らないでうっかり蓋をひらいてしまった方は、そっと閉じてぜひ雪風5部の載るSFマガジン(2022年6月号:2022年4月25日発売~)を読んでみてください。
 また、おばかな個人の感想なので、おちゃらけていたり、ご不快な表現もあったりするかと思いますが、ホントに戦闘妖精・雪風が大好きなんです。あしからずご容赦ください。


2024/2/25 13:48

戦闘妖精・雪風第5部12回(SFマガジン2024年4月号2024.02.25発売)
懐疑と明白 の感想メモ  ※ふせったーの構成をだいぶ入れ替えました

「妖精を見るには妖精の目がいる」の「妖精の目」が5部のテーマなのか。今回はそれぞれの人物がそれぞれの立場で主観で話をする。そこがすごく面白かった。主観と客観。みんなバラバラに生きているのに同じ世界を共有するっていうのはどういうことなのか。
深井さんの目に映る周囲の人々の描写もすごく好き
AIの「うそじゃないもん!ほんとだもん」(違)はすごくSFで哲学だった!

雪風が持ち帰った情報の分析を、パイロットの主観を入れずに行うために二日間の休養を言い渡された深井さん。 その後、情報分析室に行くように命じられる。

「情報分析室」の描写に興味津々~!!
指令室の奥まった一画を透明な壁(ドアはない)で仕切った場所。
特殊戦のすべての情報にアクセス可
遮音&ノイズキャンセル機能付き
会議用デスクは全面ディスプレイ型!タップで操作(カッコイイ~)
各人の手元に個人向けの表示も出る
座席は最低でも横に6名は座れる

↓今回はこんな感じかな?
入口
  桂城・田村・〇・〇・〇・丸子
  --------------------------------
  深井        ジャクスン

▶深井さんによる周囲の人の描写大好きだ~という話
・桂城くんと伊歩さんの様子になんかあったと見当つけれる深井さんがいる!
・丸子中尉に黙礼返し、ジャクスンさんに手を振り返す深井さん…ううっかわいい…と思うのは、深井さんてそういう返礼みたいなのはやらないタイプだとわたしが勝手に思っていたからなんだよね… 
・ジャクスンさんは深井さんにとって地球という惑星の象徴。うん。
・おろしたてのような制服を着ていた少佐~ えっ、地球の方々に失礼のないよう? なんだろ~もっと違う理由があってもおもしろい。あとで訊いてね深井さん。それまでは妄想しながら楽しむ。
・桂城くんへの高い評価と自省が良いな
「自分を取り巻く雰囲気のような〈想い〉を感じ取る能力が必要だろう」 ぐぅ…それはわたしにも必要だわ…

感想メモに大きく書き写した箇所
「自分の笑顔を意識すれば負の感情は消えていった」
深井さん〜~

▶会議前半
・お互いの立場の違いからの口喧嘩になるリリカさんとイフさん。「情報屋さん」ならみんなそうだ。と意見する桂城。思ったことを言っただけなのかアレだけど、ふたりとも冷静に…という気持ちはあったんだろうね。
伊歩さんが桂城に向ける「ど・う・し・て・お・ま・え・が…」という目のとこ、すっごい笑ってしまった~神林先生の文でこういうのが見られるなんて思ってなかった(前例あるのかな)これを感じたのは深井さんなのかなw
・ぎすぎすした雰囲気に耐えれなくて、少佐に助けを求める桂城くん好きだ~眉が下がったかわいい困り顔が見えるよう。
・リリカさんとイフさんのキツイ言葉の応酬を、ジャクスンさんが地球とFAFの縮図だと言う。
・この流れの会話を聞いて意見を聞かれた深井さんが
「言葉は便利だ。攻撃にも盾にも使える。~ 雪風がこれをおぼえたらやっかいだ」で、雪風の話に持っていくのがいかにも深井さんらしいなと思うんだ~ その後「対ロンバート大佐爆弾」「いや情報収集用の偵察ポッド」とか言ってる零&彰好き…叱られるけど

▶リリカさん
特殊戦に囲まれてるから浮いてるけど、リリカさんは一般的に見たら常識的な人なんだよね… 軍での活動には大きなものとの繋がりや、それらに対する益があるかどうかで動くことは大事だし。特殊戦はなんかみんな自分勝手に動いてて、意味わかんないし、元犯罪者とかそういう人間への信頼が持てない~って感じなのかな~
イフさんとはソリが合わなさそうで、だけどお互いをうまく使いたい…みたいな、そういうとこが、えっ?FAFと地球の関係に?

▶ジャクスンさん
フェアリィはジャムの出身惑星ではない。惑星上は基地周辺以外は砂漠。ジャムは惑星間を移動しながら情報を食っている〈異星種族〉で、餌は物質ではない。人間の生命観とは全く異なる異星体だ。
ジャム研究家の分析でSF小説的な異星体が見えてくる~
情報を食われた結果の「砂漠化」というのはどういう意味なんだろう。「情報」というのは何か。それが食われてしまうと、有機生命の活動がなくなる?存在が見えなくなる?ってことかな? デリート? ううーん?
(note補足:「情報を食う」という言葉から非物理的なコンピュータやネットや仮想空間上のデータを消去するというイメージも持ったんだけど、「情報」を持つ「存在」は、認識されないと存在しないモノというイメージもあって、まだなんだかよく分からない)

▶11番機「インバット」登場。
インバットはネット情報によると、「北アフリカ沿岸の厚さを和らげる海風」らしい。じゃあパイロットは北アフリカ出身かな。どんな人なんだろうね~
フラカン…9番機 ゴパル中尉 に続いて嬉しい情報!!

▶フラカンの故障予測AIの「嘘」
 故障個所を判断をする予測AI自体は監視されていない、という信頼性の揺らぎは、「変数」を入れ替えると、特殊戦の人間をジャムかどうか判断をする立場のクーリィ准将の信頼性にも関わってきて、これどんな風に展開していくのかが楽しみ。フラカンのAIに干渉した「雪風」の部分にあたる存在は何か。主観と客観の話になっていくのかな~
 神林先生のインスタで言及のあった「雪風の〈現実〉と人間の〈現実〉の不一致」。それについて描かれたバンカーバスターの一件での分析結果。時間や行動の感覚(主観)の差。これはどういうことなんだろう。アンブロークンアローのあの時空がバラバラになる感覚と似てるけど… 
 「妖精を見るには妖精の目がいる」の「妖精の目」が5部のテーマ…だよね? 主観と客観。みんなバラバラに生きているのに同じ世界を共有するっていうのはどういうことなのか。哲学だな~
(note補足:前回の「言葉の虚構」「言葉は強力な仮想世界を構築してしまう」という話にも繋がってくるのかな。じゃあ、いったい何を信じたらいいんですか?ということになる。これは哲学でなくて信仰?)

▶バンカーバスターを追った移動の記録
・雪風も隊員も同じ体験をしたのは事実だが、時間の感覚がずれている。
・雪風の時間経過はバンカーバスターの追撃に時間の切れ目はない。一定時間をかけてその分の燃料も使用して移動している。
・乗員と基地の人間はポイント間の移動は一瞬だった。
・そのため、「(雪風の)機内時計は(FAFの基準時計から)10分ほど進んでいた」
深井大尉「われわれは、雪風とは別個に移動したんだ」
ー雪風は、おれとは違う現実を生きている。
これは明白な事実だ。

▶FAFのテレビ番組
「お笑い番組」の存在を確認!! 戦争なんかやってられるかネタをしてるw 欧米コメディアンがやる「〇〇ショータイム」みたいな風刺番組を想像した。 FAFの放送局って何部門なんだろ福利厚生?

▶深井さんとブッカー少佐
・前代未聞な命令「休養を取れ」の丸一日の時間は何してたんだろね~ 深井さんて、雪風に逢えない休みの日って何してるんだろ。とはいつも思う。部屋の掃除…とか? ジョギングとか? 趣味なさそう。
(note補足:深井さんの休養は「駐機場の雪風の機体に上がって点検作業をする、いつもの日課を過ごしている」だったようです。でもな、一日中雪風の機上にいるわけではなかろう…えっ?一日中だったり?!) 
・准将に叱られたブッカー少佐…気の毒に…いや、気の毒なのは桂城少尉だったw カワイソウ 愚痴くらい聞いてあげよう。
・深井さんの慰めになっていない慰めに慰められる少佐が好き。気の置けない人間との会話って内容よりも会話という行為そのもので気分がラクになるんだよね。

今回も濃かった…
どこまでもついて行きたい!


2024/4/26 11:47

戦闘妖精・雪風第5部13回〈懐疑と明白〉の感想メモ
(SFマガジン2024年6月号2024.04.25発売)

「アナタハ雪風ヲ信ジマスカ」雪風の〈現実〉と人間の〈現実〉の不一致についての回答へ向かう助走。そして新生回路の存在!
雪風が乗員の存在を意識したのっていつごろからかなのか…

それぞれの人間が自分の主観を話す前回の流れから、雪風の〈現実〉と人間の〈現実〉の不一致についての回答へ向かう助走。

 前回の深井大尉の、「われわれは、雪風とは別個に移動したんだ」をどう解釈するのかという話し合い。納得できない丸子中尉に対してそれぞれ自分の見解を述べる構成。

桂城彰が問う
「いま肝心なのは、雪風を信じられるかどうか、だ。」
  ~アナタハ雪風ヲ信ジマスカ~  そういうこと!?

 ブッカー少佐「雪風もわれわれ人間も、相手を警戒するという点では対等だ」 ここは少佐らしさ全開!!少佐は機械を頭から信じたりしないよね。雪風とは対ジャムという同じ目標を向いているから、その部分での信頼や共闘が可能だということかな。
 お互いに警戒はしつつ、感情よりも、機能や性能で信頼を判断するのか…普通の人間同士でそういった関係はなかなか厳しいんだろうけど、ほんと少佐は特殊戦な人なんだな…

 伊歩さんの援護射撃。(雪風は)「現実に目の前に存在し、触れることができる」「言葉でなく身体で感じるしかない」
 物理的な存在として実際に搭乗したパイロットならではの感覚だけど、雪風との肉体的な接触が少ない丸子中尉は、そう言われたら黙るしかないよな… 

 んでも、疑念を挟むリリカさんの存在があることで、議論が深まるのはありがたいんだよね。

 桂城くんは「深井大尉は雪風に絶対的な信頼をおいている、というのがわかる」ので、ぼくも雪風を信じます。と続きそうだねw 雪風への信頼より深井大尉への信頼のほうが上回ってるんじゃないか!!

 そうして、雪風に絶対的な信頼をおいている深井さんが、話を元に戻す。

 深井「雪風とわれわれは異なる世界を体験しているのに、行動を共にすることができるのは、奇跡ではないか。なぜそんなことが可能なのか」
 ジャクスン「あなたは、よりジャムに近づいたようですね」
 深井「雪風がわかるというのは、ジャムに近づくことなんだ。われわれが感じ取っている雪風というのは本来の雪風とは異なるのだ」
このセリフ、雪風とジャムを入れ替えてもOKかもしれん、と思えてスゴイ。
自分の世界認識が変わったことで、ジャムに近づき、ジャムを発見しやすくなった気がする。という深井さん。どういうこと???

 ジャクスンさんが捉えてる「ジャム」は人間とは全く異なる生命観を持つ異星種族ということだから、それはそう。世界認識を変えなければジャムがなにものかは見えてこないのかもしれない。

 それはそうと、深井さんとジャクスンさんの交流は、なんかいいね。お互いに理解者だと感じているみたいなところ。ジャクスンさんも人間世界で孤独にジャムと戦ってきた。クーリィ准将が戦友と認めるように、深井さんもジャクスンさんに「戦士」を感じているのかな。

 「異なる世界を体験しているのに行動を共にできる」のは人間同士であっても世界認識はひとりひとり違うんだし…と思ったんだけど、「あなたはまったくわかっていない」「そんな単純な話をしているのではないんです」…はい。人間同士では時間の主観的感覚に違いはあっても、物理的に時間がずれるとかないものね。(光速で移動したのなら別だけど)
 雪風と乗員のずれは「物理的なエビデンスがある」(ブッカー)

「意識の問題だと思う」と深井さん。
 〈意識〉とは何かについて深井さんの見解
「世界を生じさせているのは、意識だ」〈意識〉とは「個体に備わった能力」で「あらゆる主観的な体験のこと」「感覚器とコミュニケーション能力がある物体にはすべて意識がある」
 うん。感覚器が無いと世界を認識できないし〈主観〉も生まれないものね。だいたいの生き物にはあるってことだ。深井さんはあえて「物体」と言うことでそこに無機物「機械」も含まれると言っている。
 そして、コミュニケーション能力というのは、同族同士で分ればそれで良いんだろうけど、ここではジャムや戦闘機など別の種族や存在を認知&理解できるかどうかということになってくる…これはずっと雪風のテーマのひとつにあるよね。
 
……「個体」はどこまでが「個」なのか…「我」とはどこまでが「我」なのか…は今はまだ課題じゃない。

「特殊戦以外の戦闘知性体は人間の意識行動に関心を持っていない」
人間の存在は知っていても、人間そのものには興味なさそうだよね。
だけれど、
桂城「雪風は、乗員の存在を意識している。~ (雪風は)ぼくらの意識を読み取った」
深井大尉 「雪風は、登場する人間の意識を共有する手段を構築しているにちがいない」
少佐「それらしき回路は、すでに見つかっている」
それは驚きポイントでしょう?何ですって!? とだれも言わないのね(笑)

その「人間意識内容を探知するための回路・プログラム」「対人意識共有システム」の名前は
>>>> 新生回路・NCN1022 <<<<<
どういう意味っ?! 気にナル~~ 
一般人だから10月22日とか考えちゃうじゃん。
調べたらパラシュートの日だけどさ… 
Ningen Chuumoku Nanisiteru 回路

アンブロークンアローで、雪風がブッカー少佐やフォス大尉の内心を読み取ったように見える部分があったね。そもそもアンブロークンアローという小説自体が雪風の視点によるもの…という話もちょろっとあったような…

 雪風が乗員の存在を意識したの、いつごろからかなのかなあ… 感覚としてはだいぶ前な感じ、自分を操縦する奴がいるんだもの。それこそ棘を抜く者以前からなのかと思えるけど、ATDSを真似て「人間の意識を共有する手段を構築」し始めたのは、アグレッサーになってからということね。でも、そこに至るまで、MacProⅡを入れろと要望したりして、雪風もコミュニケーションを取ろうと行動していたよね。
 雪風が〈人間〉でなくて〈深井大尉〉のことをもっと知りたくなった結果のかな…とか妄想すると、かなり熱いね!! 彼の意識を共有したいって雪風が思うに至った出来事ってどのあたりなんだろうなあ…

で、桂城くんの雪風観…「深井大尉の行動を追跡している」どこにいるのか、誰とどういう会話をしているのか…
そう書かれると雪風どんだけ深井さんのこと好きなん~!てなるよね!
生き残りのために必要な手段のひとつなのかもだけど、それにしたって、深井さんを追い求めているということに変わりなくてさあ…イイ…イイよ

 「言葉を使わない、意識レベルでの対人情報交換システムを独自に組み上げた」
→その回路は「だれからも干渉されずに自己改良していくために用意された部位」にある。これって、シルフィードの頃から持っていた部分な感じがする(棘を抜く者) 特殊戦のスーパーシルフの中身を組んだ人すごいよね… (ブッカー少佐も関わってるよね)

〈request a sortie〉
 モニタに呼び出した雪風から荒っぽく出撃を求められる深井さん。
インバットに何かあったんだね!
前回、故障予測AIというツールを使ってフラカンによる、雪風飛行コースの実況見分を阻止したらしい雪風さんだけど、代わりに出たインバットの故障予測システムにも異常が出たのかな。インバットと雪風はそうなると分かっていたのか……
深井さんも予感があったみたいで「雪風と意識を共有しているかのようだ」複合生命体とはそういう感覚なのかな

どんな展開になっていくのか、次号わくわくするね!!

以下箇条書きメモ

・(深井)雪風は人間のジャム観を知りたいと思っている
・深井「(雪風は)言葉でのやり取りでは掴めない(人間の)真意や思惑を探ろうとしている」
・深井「おれと雪風は、意識が一致するところで世界を共有できる」深井さんは雪風の意識内容を想像する。雪風は対人意識共有システムを構築して人間の意識のシミュレーションを試みる。「対人意識共有システムだ」
・桂城「雪風はジャムに勝利するため人間と共闘することを決意した」ブッカー「ジャムとの闘いに人間の主観的体験の情報が必要だと気づいた」


いよいよクライマックス。5部の終わりはどんな風なのか。雪風が飛ぶところで終わるのかなあ。5部は終わってもシリーズは終わらない。きっと。
神林先生の筆が示すベイパートレイルをこの先も追いかける。
2024年6月23日


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