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現世界グルメ「続・ラーメン屋(献立編)」

 前回↓



 世の中には、多種多様な料理の提供方法がある。それこそ、料理の数ほどあると言っていい。
 さまざまな分類法やジャンルはあるが、とある方式で分別すると、料理は大きく2つに分けられるだろう。その中間を加えても、3つ。
 コース料理と、アラカルト料理と、その中間に位置する「御膳」だ。
 簡単に言えば、一品料理を食べさせるアラカルト。そして、その一品料理による献立の組み合わせを楽しむコース料理。
 コースは基本的に順序立てて、食事が進むとともに料理が提供されるが、その中間となる「御膳」は、前提としてほぼ全ての料理が最初に出される。
 これは和食のように、白米で「おかず」を食べると言う文化によるものだと言えるだろう。
 実際には、付き出し・御膳・水もののように、提供される場合も多いので、細分化するとキリがない。
 コース料理にしても、アミューズ(付き出し)、オードヴル(前菜)、スープ、ポワソン(魚料理)、グラニテ(氷菓子)、ヴィアンド(肉料理)、フロマージュ(チーズ)、アヴァンデセール(軽い菓子)、グランデセール(デザート)、プティフール(お茶うけ)に加えて、パンとコーヒーのようなフルコースもあれば、前菜・メイン料理・デザートのように簡略化されたものもある。
 これらに関して語り出すと、夜が明けてしまうので割愛させてもらおう。
 ちなみに、個人的にはコース料理が大好物である。
 何故なら、そこに未知があるからだ。
 例えば、アラカルトで、完全に自分の好みを反映して料理を組み立て、フルコースを作ったとしよう。
 確かにそれは贅沢で楽しい食事だ。しかし、それは料理としては既知の喜びでしかない。
 コース料理には、自分の知らない料理や、その組み合わせが潜んでいる。思わぬ出会いがそこにあるのだ。だからコース料理は楽しい。
 そして、コース料理の提供には、どうしてもマンパワーが必要となる。
 どれだけ料理が美味しくても、素晴らしくても、提供するタイミングが悪ければ台無しになってしまう。
 客のテーブルをしっかり観察し、抜群のタイミングで次の皿を提供する。それは、充分な人手あってこそのサービスなのだ。
 単純な話に過ぎない。人件費が掛かる。だからコース料理は高級料理という分類なのだ。
 誤解しないで欲しいが、高級だから良いという話ではなく、コース料理というスタイルは、必然的に金が掛かるという意味でしかない。
 何故なら、アラカルト料理なら安いかと言うと、そう言う訳でもないのである。
 確かに、ポーション(一皿の量)の多い少ないはあるが、コース料理はセット料金でもあるため、同じ料理をすべて単品で注文するより安くなるのだ。
 時代や多少の違いはあれど、自動車やパソコンなどはゼロから自分で組み上げるより、完成品の方が安い。ただし、自分で組み上げれば必要に応じた好みのものが作れる。料理も同じだ。
 また、自分の好みがわからない、専門知識が不足している、組み立てを考えるのが面倒、などと言った理由からも完成品が好まれる場合もある。
 一品料理の場合は、メイン料理のみを注文する事も可能だ。
 ちなみに、「御膳」は、白米とおかず、という組み合わせによって完成される料理の形式だとも言える。形を変えれば、ワンプレート料理も近しい。
 また、コース料理仕立てもあるが、本来の中華料理は、テーブルに注文した料理を並べまくるスタイルなので「御膳」に近い「アラカルト」と呼べるだろう。
 この「御膳」「ワンプレート」を、より簡略化し、一品料理としての完成度を高めたものが、日本で言えば「丼もの」がそれに該当する。
 ご飯に合うおかずが、ご飯の上に乗せられた状態で提供される「丼」 これまた、完成度の高い料理だと言えるだろう。
 特に、カツ丼や親子丼のような「玉子とじ」タイプは、ご飯とトッピングの親和性を高める繋ぎとなり、丼の中でも、より完成度が高いと言える。
 逆に言えば、ただ天ぷらを乗せただけ、唐揚げを乗せただけ、という丼は、一品料理としての完成度が高いとは言えない。この辺りの道理はご理解いただけるだろうか。
 例えば、お子様ランチだ。
 お子様ランチは、チキン・ライスにナポリタン・スパゲティ、ハンバーグにコーンと言うような組み合わせがメジャーである。
 料理など所詮は個人の好みだ。どんな組み合わせでも個人が幸せなら口を挟むことではない。好きな料理を、好きな組み合わせで、好きなだけ食べる。これが嬉しくないはずはない。
 しかし、グルメとは、美食とはそうあるべきではないだろう。
 チキン・ライスにナポリタン・スパゲティ。両方がトマト・ケチャップ味だ。
 その組み合わせが悪いと言っているのではない。好きなものがたくさん乗っている。何も悪い事じゃない。だがどうせなら、もっと美味しい組み合わせがあるのではないか。そう言いたいのだ。
 簡単だ。チキン・ライスを楽しみたいなら、卵でとじてオムライスにした方が良いのではないか。
 だとすると、スパゲッティはクリームソースにした方が目先が変わる。
 そうなると、ハンバーグは和風ソースにした方が飽きも来ない。付け合わせの野菜はコーンよりもブロッコリの方が口のないをクリアにしてくれるだろう。
 そんな組み合わせを考えるのが美食なのではないか。そう思う次第である。
 さて。話をそろそろ本題に移したい。
 今回の話は前回に続きラーメンである。
 個人的に、あまりラーメンが好きではないという話は、前回に限らず、度々触れている話だ。
 個人的にラーメンが好きでない理由のひとつは、一品料理としての完成度の低さである。
 うどんや蕎麦なら、基本は麺と出汁でそのほとんどが完成するだろう。
 だが、ラーメンはどうだ? チャーシューだの煮卵や半熟卵、海苔だの何だのと具を乗せなければ完成しないのか? ネギやニンニク、ゴマや紅生姜と薬味にも節操がない。
 それどころかトリプルスープだの何だのと、基礎となる味さえゴチャ混ぜ。
 味に統一感や洗練さがない。まるで、子供の「ボクが考えた最強ロボット!」だ。
 そりゃあ最強ロボットを考えるのは楽しいさ。空想は無限の遊びだ。だが、兵器としての実用性を考えれば、長距離兵器なら長距離兵器。近接兵器なら近接兵器としての運用を考えるべきなのである。
 だからこそ、ラーメンは一品料理という形式でありながらも、「お子様ランチ」なのだ。
 中華麺が中華麺としての完成度を高めていれば、スープがスープとして完成していれば、具など不要。あくまでオプションとして選べればいい。
 そもそも煮卵とラーメンの組み合わせは本当にいいのか? 箸休めだ? おかずだ? だったら、うずら卵の方がそれに適しているではないか。
 海苔だってそうだ。海苔が破壊的にラーメンの香りを支配してしまう。それに、海苔はいつ食べるんだ? パリパリのままで食べるのなら別添えにすべきだろう。浸して食べるなら、針海苔でも散らせばよかろう。
 インド料理などのようにスパイスや薬味を組み合わせて味を作るケースもあるが、基本的に薬味は料理の方向性を決めかねない。
 そんな薬味となるものを3つも4つも5つも組み合わせても、味が迷子になるだけである。
 スープもそうだ。トリプルスープだなんて銘打っている店のスープは大概が、バラバラの味になってしまっているではないか。
 ハンバーグとサンマの刺身とアイスが大好きだからって、一緒に口の中に入れるのか? それは本当に美味しいのか?
 多くのラーメンは、その辺りの料理の基礎が出来ていない。
 アレもコレもソレも入れれば美味しいに違いないなんて、まるで、子供のおままごとの泥遊びだ。
 逆に言えば、ラーメンスープとの相性が実にいいキャベツを使用する店は少ない。
 白菜なんかも実によく合うが、出会う事は稀だ。
 だが、例えば、ラーメンによく合う具としては「メンマ(シナチク)」があるのだが、白菜との組み合わせはイマイチだったりもする。こういった組み合わせを考える事こそが料理なのではないのか。
 はっきり言って、ラーメン屋はプロの料理人が作る料理として考えると、仕事が雑なのである。
 例えば、あえてチャーシューと言うが、本来のチャーシューは硬い腿肉を使用するもの。
 硬いからこそ、脂も水分も少ないからこそ、薄切りにして食う。
 それがラーメンの具になると、スープに絡み、薄く切り、温まり、油と水分を補われる事によって完成する。
 何なら、冷やし中華でよく見るように、細切りにして麺と絡めて食う方が美味い。
 だが、そんな風にして提供する店はあるだろうか。知る限り、多くはない。
 そもそも、日本のラーメンの具に使用されるチャーシューの多くは煮豚であり、叉焼(焼豚)ではない。腿肉ではなく、肩ロースどころか豚バラ肉を使用する店の方が多いぐらいだ。
 脂が多く、味も濃いラーメンに、更に脂の多い煮豚を、分厚く切ってある。
 どんな組み合わせだ? しかも、冷蔵庫から出した分厚い煮豚が、ラーメンのスープごときでは温まらず、冷たいままだったりする。
 これでラーメンという食べ物が「高級料理」に移行しつつあるなど、それこそヘソで豚が煮えるレベルだ。
 さて。前回はラーメンが高額化し、高級料理を名乗るなら、せめて「予約」を取らせろ、という話をした。
 今回言いたいのは、その続きである。
 ラーメンを高級料理にしたいと言うなら、ラーメンはコース料理化するべきではないのか。
 前述したような煮豚も、しっかりと温めて、カラシをつけて酒を飲むなら、実に完成度の高い料理なのだ。
 ラーメンの具の多くは酒や白米との相性がいい。多くのラーメン屋にある餃子や唐揚げも然り、である。
 だとするならば、粋な蕎麦屋で一杯やる雰囲気で、酒を飲み、餃子や唐揚げの前菜を楽しみ、〆のラーメンをすするような、そんな高級ラーメン屋があってもいいではないか。
 そう思うのである。
 まあ、ラーメン屋の出せる料理は、どれもだいたい味が似通ってるので、コース料理として編成し直すにはかなりの労力と技量は必要になるだろうが。
 そして、そこをきちんとした手順で、真っ当に改善すると、


 普通に美味しい中華料理コースになるだけ。


 という懸念はある。うん。それはもう存在してるな。

 ※ この記事はすべて無料で読めますが、コース料理が好きな人も、アラカルトが好きな人も、投げ銭(¥300)をお願いします。
 なお、この先にはワタクシがラーメン屋を好まなくなった事件についてしか書かれてません。(内容的に批判が来そうなので通常の3倍の¥300にしとく)


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(´・Д・)」 文字を書いて生きていく事が、子供の頃からの夢でした。 コロナの影響で自分の店を失う事になり、妙な形で、今更になって文字を飯の種の足しにするとは思いませんでしたが、応援よろしくお願いします。