見出し画像

逃げ水


 皆さん、こんにちは。逃げ腰の木賃ふくよし(芸名)です。
 さて。ワタクシ、走るのは無茶苦茶遅いんですが。ええ。

 冗談抜きで、
 走るより、
 歩いた方が早いのよ。


 いや、さすがに50mや100mは走った方が速いですよ。さすがに。
 ただ、これが2kmや3kmとなると、確実に歩いた方が速い。

 激しい運動だと、肺がもたなくて、途中でダウンするからである。多分1kmぐらいが、走った方が速いギリギリの距離。へばって動けなくなるから、最初から最後まで歩いた方が断然速いのである。


 (´・Д・)」 や。マジで。


 そりゃダッシュすりゃワタクシでも時速10kmを超えるだろうけど、そんなの5分と維持できない。さりげなく全身運動になってるジョギングにしても時速7kmに満たない程度。これだっておそらく10分ぐらいしか頑張れないだろう。だろうってのは、この20年ぐらい、10分も走った事がないからだ。わからなくて当然。それぐらい走るのは苦手なのだ。


 逆に。


 (´・Д・)」 歩くのは平気なんだよな。


 マジで。かなりの長距離でも平気。若い頃の話だけど、実際、明石~京都間を歩いた事があるし。(約100km。ほぼ歩き通しで、確か夜通し歩いて丸一日ぐらい掛かった)

 んで、今Googleマップで調べたら約95km、20時間と出たので、食事の時間などを除けば、ほぼペースを落とさずに100kmぐらい歩けたって事である。


 実際、歩く速度はかなり速い模様。
 世間では徒歩が約4.8kmという計算をするらしいが、ワタクシ、徒歩なら時速6kmぐらいあるのよ。マジで。ちゃんと測ってないけど、たぶん今でも。
 つまりワタクシの場合、下手にジョギングなんかするより、歩いた方が圧倒的に速いって事になる。

 で。実際ワタクシ、走るのが遅い癖して、歩くのが遅い人が道を塞いでるのを見ると「遅ぇなあ。ちんたら歩くなよ」と心の中でブチブチ言ってる始末である。走るのが遅い癖して。

 そう。数少ない自慢のひとつ。歩く速度だけは、大概早く、ペースが落ちずに長距離移動が可能。走るのは遅い癖して。

 だからこそ、日課であるダイエットも徒歩を選んでいる訳だ。
 実際、山道を登るのでペースは落ちるが、ノンストップなら伏見稲荷山を1時間を切れる。(猫を見かける度に足を止めるので実際には実現不可能だが)
 ガイドによると、標高233mで一周が4km。参拝にかかる時間は休憩などを含め2時間を見込んでいる模様。半分以下である。

 まあ、ジョギングコースにしている人間などを除けば、誰にも抜かれる事はないし、見えてる人は全員追い抜く。意識してる訳ではないが、それが普通だった。

 昨日までは。


 昨日の、人っ気の少ない早朝の出来事である。下山し始めたいつ頃か、気が付けばワタクシの数メートル先に、女の子が歩いていた。
 小柄な女の子で、少し距離があるので年齢は不明。パーカー付きのスポーツウェア的なファッションなので、本当に年齢が不詳だ。小学校高学年から、大学生ぐらいだとは思う。
 しばらく、その女の子の背中を見ながら歩いていたのだが、違和感を覚えつつも、何が違和感なのか理解するまでに1分以上必要だった。

 そう。



 女の子との距離が
 縮まらないのである。



 (´・Д・)」 え? マジで? そんなコトある?


 特に早足だったりする訳でもないのに、ちっとも縮まらない。背は低いから、ワタクシより歩幅があるって事はない。下り道だから、パワー負けしてるって事もない。
 わずかに近付いては、気が付けば引き離される。そう。まるで逃げ水のように。

 後から冷静に考えれば、近付いたり離れたりする理由はわかる。
 坂道か、階段か。要するに二人とも、階段を一段ずつ下っているのだ。山道なので階段と傾斜がある。つまり、階段になっていない場所では歩幅の差が出てしまう。
 ワタクシは坂道でその距離を詰め、階段で引き離されていたのだ。

 え? 何この子? 早過ぎない? 見た感じ、特に早足で歩いてる感じではない。しかし、速い。ナチュラルに速い。無理なく速い。何なの? この子? 天狗の子か何かなの?

 確かにワタクシは、トレーニングを兼ねて2kg超の重りを身に付けている。しかし、たかだか2kg程度だ。例え小柄な女の子でも、上り坂でパワー負けってのなら悔しくても理解できるが、下り坂で追い付けもしないってのは異例である。しかも、歩きの速さにはいささか自信があっただけに、この子の歩き、

 めちゃくちゃ速くね?


 と素直に驚愕したのである。
 自身の速度に少々の自負があった。つまらないプライドではある。だが、負けてはいられない。いわゆる「早歩き」にならないよう、ただ足の動きだけを早める。これで追い付けるはずだ。そう思った。
 しかし、その距離は一向に縮まらない。特に階段部分ではやはり引き離されている。

 いや、速すぎだろ、この子。


 もはやコレは蜃気楼だ。「逃げ水」だ。追えども追えども辿り着かない。この子は小天狗か、それとも幻なのか。
 かなりギアアップしたものの、分岐点で別れるまで、ワタクシはついぞ、その女の子に追いつく事が出来なかった。
 かなり無理をしていたのか、下り坂だと言うのに息が上がっている。呼吸が荒い。悔しいが、完敗だ。震える呼吸を整えながら、ふと気付く。



 あの子の視点から
 状況を判断するに、



 後ろから
 ハァハァ言いながら、
 どれだけ早歩きしようと、
 ジワジワと距離を詰めてくる
 ヒゲデブのおっさんがいる


 って、事案発生やん。



 あの女の子に、素直に謝りたい。



 ※ この記事はすべて無料で読めますが、慰めの言葉より、投げ銭(¥100)が欲しいです。
 なお、この先には特に何も書かれてません。


ここから先は

53字

¥ 100

(´・Д・)」 文字を書いて生きていく事が、子供の頃からの夢でした。 コロナの影響で自分の店を失う事になり、妙な形で、今更になって文字を飯の種の足しにするとは思いませんでしたが、応援よろしくお願いします。