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150円やるから、笑ってみろよ。


 皆さん、こんにちは。木賃ふくよし(芸名)です。
 近頃、ワタクシはコンビニや、牛丼チェーン店で、意識して、わざと

 「ありがとう」
 「ごちそうさま」


 を、

 言わないようにしている。


 いえ、間違いじゃありません。言わないようにしてます。はい。
 ワタクシね、働き始めて30年ほど経ちますが、その殆どがサービス業なんですよ。
 だから、「ありがとう」とか「ごちそうさま」は言うのが当然だと思うんです。控え目に言って、ワタクシにとっては当然な部分があったんですよね。

 だから、言わないようにしてるんです。

 ええ。「ご馳走だと思わなかった」とか「ありがたく思わなかった」とか「サービス業を下に見てる」とか「言葉が勿体無い」とか思ってる訳じゃないんです。
 食い物が上げ膳据え膳なのは有り難いし、自分がサービス業ですし、喋るのが仕事だし、そういった事は思ってないんですよ。ちっとも。
 強いて言うと、見知らぬコンビニ店員さんとかに「ありがとう」って言うのは、何か上からの態度な気がするし、かと言って「ありがとうございます」って言うと堅苦しいんで、「どうもー」って返す事は多いですけどね。
 無論、知ってる店員さん、馴染みの店員さんには挨拶する。そりゃね、人として、挨拶ぐらいしますけども。

 じゃあ、何で見知らぬ店員にはお礼の言葉を言わないのかってーと、言葉を発するのが勿体無いからではない。

 店員さんに愛想を求めなくなったからだ。


 恥ずかしながらワタクシ、この歳になるまで、何かを勘違いしてたんですよね。
 何かと言うと根本的な事だ。
 例えば、450円のうどんを食ったとする。
 実際には異なるし、雑な計算になるが、飲食は原価の3倍が値段と言われる。大きく分けて、だいたい原価が150円、経費が150円、利益が150ってところだ。
 個人店の場合は経費に家賃が含まれ、会社の場合は人件費が含まれる。
 どっちでもいいけど、要するに人の値段は150円って事だ。

 さて、もしあなたが

 おい、お前、150円やるから愛想よくしろよ。


 と横柄な態度を取られたらどうしますか?

 顔面グーパンですよね?


 まぁ、ワタクシは今、お金に困ってるんで、笑うだけで150円も貰えるなら、にひにひ笑いますけども。にひにひ。
 てな訳でですね。
 飯屋ってのは飯が食えたら御の字で。コンビニは物が買えたら充分で。そこに愛想なんて求めるほどの金を払っちゃいねえよな。という事に、ごく最近、よくやく気付いたんですよね。

 端を発するのは、15年ほど前。
 コンビニでバイトしてるTさんと知り合ったんですが、彼は中々の社会不適合者でした。
 Tさんはコンビニの深夜バイトで働いてたんだけども、彼の言い分は、

 「客にありがとうって言わなきゃならないのが理解できん!」

 ってな具合ですよ。まあ、彼はワタクシより10近く若かったので、その所為もあるかな、と宥めてたんですが、そこに反論が来ました。

 「こんな深夜に物が買える場所が開いてて、売ってくれてありがとうございます!って言われるべきですよ!」

 ワタクシは「そりゃそうだ!」と笑ってたんですが、よくよく考えたら彼の主張は何も間違ってないんですよね。
 無論、金を貰ってるんだから、愛想良くするのが当然、という意見もあるでしょう。わかります。でも、ホラ、彼らに給料を払うのは我々、客じゃなくて、会社の方ですし。
 よしんば直接払うとしても150円だよ150円。
 150円をバラ撒いて、愛想良くしろよってのは格好悪すぎます。小銭を拾え、這いつくばれってのは今時なら小学生でも応じないっすよ。
 つまり、店員はそいつの横柄な態度にムカついたら、150円(自費で)を投げ返して「失せろ!」って言ってもいいと思うんですよ。
 ワタクシは自分がサービス業、ましてや自営業な所為か、お客様は有り難い存在である。しかし、それ故に目が曇って、店員ってのは愛想を振りまかなきゃいけない、と思い込んでた気がするのだ。
 言うまでもなく、笑顔はあった方がいい。自営であれ、会社であれ、バイトであれ。
 しかしそれは、本来なら自発的に出て然るべきものである。
 少なくとも、客が求めて、「こっちがありがとうと言ってるのに笑顔もない!」なんてのは、割と逆ギレなんじゃないかと思うようになったのだ。

 どちらの「ありがとう」も、義務で言うものではない。
 ワタクシは最近になって、ようやくそれに気付けた気がする。確かに「こんな深夜に物が買えてありがとう」と思ってるし、それを言う事は良い事だと思う。
 けれど、それが形骸化し「店員の笑顔が足りない」なんてのは客側の傲慢ではなかろうか。故に、コンビニやファストフードってのは、商品さえ手に入れば充分ではなかろうか。
 ワタクシはこれまでずっとサービス業だったし、同時にそれ以上に客だった。
 「ありがとう」を言う事が勿体無い訳でも、面倒な訳でもない。
 ただ、形骸化が進む、両側の「ありがとう」に対し、ささやかながらの抵抗として、近頃は意識して、あまり「ありがとう」を言わないようにしている。
 無論、この記事は「ありがとう」を言う人への批判でも、礼1つ言えない人への賛同でもない。
 自分の中で「ありがとう」って言葉が、気持ちから出てるか、少しだけ、思い直して欲しいだけである。

 これは比較的、最近気付いた事なので、いつか発表したいと思っていたが、早くしないと店が閉まってしまう。閉まってから言うのは卑怯だと思ったので、言うなら今だ!と筆を取った訳ですよ。
 いや、閉まる前提で言うのも卑怯ではあるんですが、気付いたのが最近なのでそこは許して欲しいの。

 なお、この記事は無料ですが、投げ銭もできます。(今回は記事に倣って¥150です)。ワタクシは今、とてもお金に困ってるので、「¥150やるから愛想よくしろよ!」って投げ銭されたら、にひにひと笑います。

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(´・Д・)」 文字を書いて生きていく事が、子供の頃からの夢でした。 コロナの影響で自分の店を失う事になり、妙な形で、今更になって文字を飯の種の足しにするとは思いませんでしたが、応援よろしくお願いします。