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うぇいの哲学

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哲学みがある記事のまとめ
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#読書感想文

生きている人間を「状況の産物」として眺める

遺伝か環境か――このような二分法は適切ではなく、「遺伝も環境も」という言い方が適切だろう。 「自らは自由に意思決定している」。このような信念を抱く者は多い。現行の社会制度もこの考えを下地につくられている。 けれども、個人の選択によって影響を与えられる範囲は限りなく狭い。なぜなら、当人は、物理的な身体及びその身体をとりまく環境に大きく規定されているからである。 現代の脳神経科学が示すところによれば、行動をする直前にそれをしないか否かを決定する程度の選択しか私たちはなしえな

「詩」としての哲学——理性ではなく「想像力」重視の哲学

「哲学って、難しいことをゴチャゴチャ言ってるだけじゃないの?」と思っている方もいるかもしれません。まぁ正直そういう側面もあります。「真理探究」の学(Wissenschaft)としての哲学(Philosophie)においては、かなり込み入った議論が行われているからです。 ただ、そのような自分の意思には関係なく定まった対象(例えば客観的真理)を把握しようとする哲学以外にも、哲学の活動領域は拡げられるはずだと僕は思うのです。 本記事は、冨田恭彦『詩としての哲学』を頼りに、「可能

なぜ「個性」があったほうがいいのか? J.S.ミル『自由論』から考える

どーも、うぇいです。最近、「多様性が大事!」とよく言われますよね。ここで言われている主張とは要するに、「みんなそれぞれ好きなように生きていいよね」ということだと思います。 ではなぜ、同じような生き方をするよりも「みんなそれぞれ」の生き方をしたほうがいいのでしょうか。 この問題を考えることは、「個性」の重要性を考えることでもあります。 本記事では、イギリスの哲学者ジョン・スチュアート・ミル『自由論』第3章「幸福の要素としての個性」をもとに、多様性の問題、個人の生き方の問題

毎日頑張ろうとするとそれはそれで緩急がなくなり間延びしてしまうから、「休日」を意図的に設けたほうがいいかもしれない

何か大きな目標があるときは、単調な努力を重ねなければならないでしょう。コツコツとか、泥臭くとかそんなふうに形容される行動の積み上げです。例えば、受験勉強とか部活動の大会に向けての練習です。 でも、そうやって必要なことを淡々とこなしていくのは案外難しいものです。これには1つの大きな理由があるように思われます。それは時間(Zeit)の問題です。 目標達成のために毎日淡々と過ごすというのは、昨日と今日と明日がほとんど区別されない等質的な時間を生きることと言えるのです。人は、平均

ため息、諦め、パラドクス

お酒はあまり飲まなくなったが、一方でタバコを吸いたいと感じる瞬間が増えてきた。ただ、僕の趣味はランニングだから、ランニングの心地よさを減じてしまうようなタバコにハマるわけにもいかない。 というわけで、今は友人が喫煙者だった場合に数本もらうという状態で落ち着いている。 (以下、本記事の内容はとてもネガティブなものです。したがって、「幸せになるために人は生きている」という信念を抱いている方には読むことを勧めません。他の楽しそうな記事を読んでいただければと思います。) ふつう