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『せりふの構造』読書ノート2-1

せりふの構造2−1

第一章 モノローグの諸相


・序論においてわれわれが確認した演劇のコミュニケーションの図式に照らし合わせてみれば、モノローグとディアローグという伝統的な一対が、基本的類型として現れてくる。p45

ディアローグ:演劇の二重コミュニケーションを十全に満足。

二人以上が交わす会話。

モノローグ:横軸のコミュニケーションを欠く、欠如体。

登場人物が相手なしに一人で言うセリフ。

・イリュージョニズムの立場では、モノローグはできるだけ排除されるもの、少なくとも正当化を要求されるもの。p47

極端なリアリズムとしてのイリュージョニズム(舞台に現実のイリュージョンを求める立場)p37

イリュージョニズムは横軸コミュニケーションのみ注目

縦型コミュニケーションが顕在化しないことを求める

・モノローグ

内世界的受信者=劇中人物を持たない、横軸コミュニケーションを停止

縦軸コミュニケーション=舞台と観客の存在を浮き彫りにする


・モノローグをディアローグ的に捉えようとして模索・・・

・・・するためには、

 人物があたかも二人の人間に分裂して・・・、一人問答というべき現実・・・、近世的自我の反省的自意識・・・

・・・が必要。

 内世界を現実世界の模像として完成させようという素朴的なリアリズム精神=イリュージョニズム

(保坂は一人語りやト書きが多い、神林長平やウィリアム・ギブスンを思い出す。)


・モノローグに与えたこの正当化は、致命的な欠陥・・・

 厳密的な意味ではひとりごとではない、リアリズムによっては説明が付かない、演劇という芸術形式に固有の約束事


・モノローグの技巧性(!!!)p48

「演劇のモノローグは一つの技巧にすぎない。しかしそれは、われわれの意識の常態である無言の対話を表現するためのものなのである。」ルイ・ラヴェル

この技巧ということあるいは約束事は、演劇にとってきわめて基礎的な事柄、


・作劇法の論理に従う最も手近な道は、必要なことをモノローグ式に語ってしまうこと・・・

作劇法=ドラマツルギー、劇(ドラマ)を成立させるにふさわしい戯曲・脚本の創作法。


・無理に作りながら「自然な」印象を生み出している秘密はどこにあるのか。それはこの言葉が相手役に話しかけられているということ、その言葉の実質(体験の中で感じ取られる「言語使用の種類」)が普通の会話と変わらない、という以外何もない。p50


2022/08/18 3:11

・われわれの「印象」は・・・その反面だまされやすいとも言える。

・この言葉は作劇の論理のみに従うものであって、それを台詞として許容するのも、やはり演劇芸術の約束事である。
>保坂は中平卓馬の植物図鑑の悩みを思い出す。

・演劇は「すべての登場人物をみな行動し現実に活動している者として再現する」ものであり・・・一切が言葉の中に明らかに現れてこなければならない。いかにそれが心の真実の証であるとしても、寡黙な恋人は恋愛劇の主人公に向かない。
>保坂はこの演劇の要件が、写真の要件に思える。

・そして、登場人物の発話が、演劇の基本条件の一項であることを考えれば、その条件を最も直接的に満たしているモノローグが、演劇の本質の一面を最も良く表現していると考えることも理あることである。p51

2022/08/20 10:30

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