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道南道の駅完全制覇の旅 #3

4/28 14:00
太田山神社入口。

もはや壁


壁のような角度の階段。ロープが用意されてる時点でもう…。
とりあえず登ってみる。若干の高所恐怖症、転げ落ちたら死ぬと思うと足が震える。下を見ないようにとりあえず階段を登り切る。
階段の上からは海がよく見えた。海の見える神社は初めてだった。

落ちたら死


さらに登る。
直角の梯子、杭が引っこ抜けて脆弱なロープ、生え放題のアイヌネギ。自分が向かっているのが神社だということを忘れそうになるくらい険しい道。
夏の峠越えくらい汗が噴き出てくる。タオルも飲み物も自転車に置いてきた。少し後悔。
調べてないのでどれくらいで本殿に着くのか分からない、腰ほどの高さの岩や段差に当たるたび、引き返そうか迷ったが進みたい、先を見たいという気持ちが勝っていた。

雨が降っていたのでところどころ滑る。
ひとり黙々と進むこと約40分。本殿付近に辿り着く。
今にも崩れ落ちていきそうな鉄の橋。雨のせいで油が塗ってあるのかと思うくらい滑る。本来足を引っ掛けて進むであろうロープは千切れている。横と後ろは崖、足を滑らせたら…。
ふと、先を見ると鉄の輪っかがぶら下がる崖。
これ以上は流石に危険と判断。勇気ある撤退。
下りながら、これまたゴールのためにアイヌネギを摘む。

全体的になかなかのスリルだったが、再訪するなら雨の日はやめておきたい。
太田山神社、「日本一危険な神社」の名を欲しいままにする神社だった。
※調べると写真が出てくるので、行ったことない人はぜひ見てみてほしい。

4/28 15:00
下山。登りではあんなにビビってた階段も、険しい道のりを経て、下りるときはスムーズ、なんなら少し小走りだった。
休憩ほぼ無しで往復1時間ほど。本殿までゆっくり行ったら1時間半というところだろうか。いつかリベンジしたい。
太田山神社の下見という本日の目的を果たし、あとは宿へ向かうだけ。
初日の爆風向かい風とは打って変わってご褒美の激強追い風。
せたなの街を過ぎ、後志利別川沿いを進む。
2年ぶりの今金へ。
前回は札幌側からだったので逆の道は新鮮だった。
この日は宿をとっていた。今金にある「さくま旅館」という宿だ。

2年前、初めて今金に来た時のことについて少し書きたい。
2021年、SOMAに乗り始めてから3ヶ月後の7月、札幌から日帰りで行けるところはあらかた行き尽くし、自分が一日どれくらい乗れるのか、連日になったらどこまで行けるのか検証するため、初めて宿泊ありの自転車旅(2泊3日)を敢行した。
当初の予定では初日は倶知安に泊まる予定だったのだが、中山峠を越えて喜茂別に着いた時点で11:00。
まだまだ進めると確信し、豊浦に出て通行止めの礼文華を通り、長万部を過ぎ今金へと向かった。
札幌→今金180km、日没ギリギリ19:30頃に到着し、その時泊まったのが、「さくま旅館」だった。
初めての自転車旅の宿泊地、ハイシーズンの当日予約だったにも関わらず、快く受け入れてくれた思い入れが深い宿だ。
ちなみに当時は今金を出た後、海外沿いに進み岩内でもう一泊し、積丹・神威岬を拝んで札幌へと戻った。
2泊3日で500km近く進み、その後の指標になった旅となった。

そんなさくま旅館、あの時の「また来ます」という約束を果たしにきた。

再訪嬉しい

覚えててもらえて嬉しかったし、時々思い出してもらうこともあったらしい。当時のこと、その後にしたたくさんの旅のこと、話したいことが山ほどあった。
積もる話がありすぎたが、話をする前にとりあえず雨と汗と砂で全身ドロドロだったので、おなじみの今金あったかランドへ。相変わらずのしょっぱい温泉。おしりの擦り傷にしみる。
しっかりと風呂上がりのコーヒー牛乳まで済ませ、旅館の夕飯いただく。私以外にも一人だけ宿泊者がおり、同じタイミングでの食事だった。話を聞いてみると仕事で時々来ており、その度にさくま旅館に泊まっているとか。よくよく聞いてみるとなんと乙部在住の方だった。ミカミさんというらしい。
今日は乙部から来たこと、乙部で行った場所を伝えると、なんとミカミさんは「四季彩岬」の常連さんらしい!街でも道の駅でもお世話になったご主人の顔が浮かぶ。

こういうのなんだ。旅をするとこういうのがあるからやめられない。
求めなくても勝手に繋がっていく。不思議だ。
ひとりはすきだけど、ひとりになれない環境だったり、ひとりにさせてくれない出会いがある。
繋ぎたくても繋がらない縁もあるけど、繋ごうと思ってなくても繋がる縁もある。繋がるものだけ大事にしていれば良いと思う。今はそう思える。

「乙部に来たら四季彩岬で奢る!」と約束してくれたミカミさん。
こりゃほんとに、また乙部に行かなきゃな。
なんだか盛り上がって女将・ゆうこさんにビールをご馳走になり、この日は眠りについた。

楽しい夜


4/29 6:30
朝ごはんの時間。
民宿に泊まると毎回思うのだが、こんなに早くからご飯を用意してくれてるなんて、宿を運営されてる方には頭が上がらない。本当にすごい。

あさごはん

ゆうこさんから今金男爵をいただく。昨夜「せっかく今金に来たから男爵いも買いたいけどどこにも売ってなかった」という話をしたら3つ譲ってくれたのだ。
ありがたくいただき、また来ることを告げ、さくま旅館を出発した。

越冬した美味いやつ

熊石のアスパラ、太田山のアイヌネギ、今金男爵。
ゴールで待つしおり先生に早く渡したい。

4/29 10:00
ここからはもはや「いつもの道のり」
しかし、海沿いのあの直線に飽き飽きしていたこと、車通りが少ない所を走りたかったため、新ルート開拓に乗り出す。
長万部の街の分岐で山側の道に入る。
静狩湿原の裏側を通ることになるのだが、結論から言うとこの道、最高。
車が全く通らない、それでいて道も広く、道路のツギハギも無し。走りやすいことこの上ない。
途中通行止めで迂回するシーンはあったが、気になるほどのロスではなかった。
何度も通ってる長万部の新しい一面を発見できて嬉しかった。やはり一度走っただけじゃ何もわからない、何度も来て、何度も走って初めて見えてくるものがある。
それを一つでも多く見つけたくて、気付きたくて走り続けている。

車ゼロ
知らなかった場所

4/29 11:00
もう何度目かもわからない静狩峠。しかし、逆打ちは初めて。
心なしが逆打ちの方がキツく感じた。
札幌側から来る時は初日に通ることが多いが、今回は3日目。コンディションの違いもあるので一概には言えない。
そんなことより、早くトイレに行きたい。

4/29 12:00
静狩峠あるある、いつの間にか越えてる。
峠を超えたかと思いきや、礼文華、大岸のアップダウン。
普段なら楽しいのだが、今はとにかくトイレに行きたいから上りがしんどい。

体感アップダウン5回

4/29 13:00
道の駅とようらに到着。ようやくトイレへ。
2時間以上我慢していた。旅中、良くないタイミングでトイレ行きたいとかならないようにこまめにトイレ行くやうにしてるけど、時々油断して寄らずに峠に突入してしまう。
道の駅でアイヌネギが500円で売られてるのをみて、「摘んできたもんね」と得意げになる。

4/29 13:30
JR洞爺駅付近に着く。
さくま旅館の朝ごはん以降まともにごはんを食べていなかったので、お腹が空いてきた。
のんびりかKOTTAに入ろうかと思ったが、この空腹をゴールまで取っておきたかったので我慢。
お肉屋さんたどころでぐるぐるソーセージを買い、湖畔へ向かう。静狩以降、いいだけトンネル潜ってきたので西山を越えて行く。実は初めて通る道。

西山爆裂下り中

4/29 14:00
ZERO DAYに立ち寄る。
そう、今回はここがゴールではないのだ。
少しお話しして、再出発。
ゴールはすぐそこ。

4/29 15:30
この旅のゴール、仲洞爺キャンプ場に到着。
初めて来るキャンプ場、しおり先生が出迎えてくれる。
「THE MAP」のスタンプを押してもらい、サイト内へ。
しおり先生が夜の雨予報を見越して、私のテントスペースにタープを立ててくれてる。ホスピタリティが染み渡る。
「カレーたべたい」って言ったら、本当にカレーを作って待っててくれていた。しかもあいがけ。
今金でもらってきた男爵いもも入れてくれた。
これを最大限に味わうためにお昼ごはん食べなかったと言っても過言じゃない(お昼時に峠越えてただけというのもある)
美味しい、おいしい。一瞬で平らげおかわりも完食。

パニアパンパン
場所取りありがたい
今金男爵入りカレー
嬉しそう
また泊まりに来る


4/29 19:00
ZERO DAY オーストリア旅の報告会。
実はたまたま休みの日の開催だったので、これに合わせて旅の予定を組んだのだった。
身近な人の旅の話は面白い。ずっと聞いていたい。
気になることがあり過ぎて逆に質問がまとまらなかった。

オーストリア、いいなあ。
「海外に行ってみたい」
そう思う時が来るなんて1ミリも思ってなかった。

自転車に乗り始めてから新しい景色に触れ、自分が元々持っている思考や感情、感覚がその先に進んだような気がする。
考えれば考えるほど、意図的にも、意図してなくても、何かが研ぎ澄まされて、価値観も少しずつ変わっていくのを実感する。

乗れば乗るほど、何かが進んだり、何かが芽生えたり。
物事や出来事だけじゃなくて、自分の中にあるものを見つめ直すこともできてる。
よくある言葉で表現するのなら、「生きる意味」みたいなもの。
意味なんて無くていいけど、自分の中で納得できる落とし所というか、腑に落ちる何かを見つけたいのかもしれない。
まともに考えたことなかったけど、考えないようにしていたか、考えたくなかっただけだった。
自分の思考レベル、環境、心の持ち方、全て鑑みて、避け続けていたことに向き合える時が来ているのだと思う。
自転車を通して、それができるんじゃないか、そういうタイミングが来てるんじゃないか、と。

なんやごちゃごちゃ書いているけど、今、総じて言えるのは「生きる」ってたのしい!って思ているということ。

旭川に向かう特急の中で、そんなことをぽつりぽつりと書き残している。

次の旅に続く。

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