ギリギリ人間

ひと山こえたと思ったら、またもうすぐひと山だ。一体いくつ山があるんだ。でも、それもこれも、私が日頃から地道にコツコツ、計画的に準備しないからいけないんだ。なんでもかんでも、ギリギリになってからじゃないとできないんだよね。まあ、生きているうちにだんだんとやることが増えてきた結果、ギリギリになってからやってたら本当に間に合わないから、仕方なく、否応なしに、もうちょっと早くから手をつけるようになったけどさ。やっぱり基本的には、ギリギリの人間なんだよね。

「あ~、そろそろあれやったほうがいいかもなぁ」と思っても、物事をやりはじめるまでのハードルがめっちゃ高くて、基本的に現実に耐えられない性格もあいまって、すぐに現実逃避しちゃう。こんなんじゃダメだ!と思って一念発起、計画を立て、それにしたがい実行する。なんてことも、ほとんどできない。計画を立てるまではできたとしても、途中で計画とは違うようになっても何も気にならないし、ToDoリストはどんどん先延ばしにしちゃう。そもそも、計画を立てることからして苦手だ。自分一人だけが見るのならまだしも、たとえば、会社に業務目標と達成するための計画みたいなのを提出しなきゃいけなかったりするじゃない。私が勤めていた会社にはそういうのがあったのよ。なんとなくそれっぽい計画を作成してみるも、ぜったいこの通りにやらないよなぁと思うと、なんだか人に見せる意味がわからなくなるし、もはや作成した意味さえわからなくなってくる。

計画どおりにやるなんてできないけど、正直、ギリギリ人間なりに頑張って取り組んできたかなぁと思うことも多い。でも、世の中で遭遇する価値観の多くは、計画を立て、コツコツ実行することを称賛しているから、ギリギリ人間のままじゃダメなんだ、コツコツ人間にならなきゃ!ってなっちゃう。とはいえ、毎日同じくらいのパワーで計画的に物事に取り組む力は、私にはあんまりそなわっていないみたいで、ギリギリ人間から脱却できなくて、そんな自分が嫌になったこともあった。ギリギリ人間はコツコツ人間には勝てない、って思い込んでいたこともあった。まぁ、今でもこれはおおむね正しいと思ってるけど。

あるとき、会社の上司と面談することになったんだよ、たしか。やっぱり例のごとく計画表みたいなものを提出しなきゃならなくて、どうせできないですよーと思いながら作成していた。面談のときも、そういう気持ちが露骨に出ていたのかいろいろツッコまれたので、バカ正直に、自分がギリギリ人間であることを白状した。てっきり、うんたらサイクル(PDCAサイクルね)とか持ちだして説教されて、ギリギリからコツコツへの改善を要求されるかと思いきや、上司から出た言葉は「そういうほうが向いてる人間もいるから」だった。まじか、そういう受け止め方もありなのか、って思った。

いまだに、計画的にコツコツ取り組めない、現実逃避が得意のギリギリ人間な自分が嫌になることもあるけど、「私はこういう人間なので」って気持ちが強くなってきた感じもある。できないことをできるようになろうとする努力はとても尊いものだけど、自分の性質やできることとうまく付き合って、あわよくばそれを活かして生きていくほうが、少なくとも私は楽だし、自分に合ってるなって思う。やはり結果として、山になってしまうのだけどね。

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