赤い花嫁は銃把を握る

 気がつけば花嫁の世界は何もかもが変わっていた。
 爆破されて瓦礫と化した教会。死屍累々と転がる参列者たち。そして血まみれになって倒れている夫。無事であるのは花嫁だけだ。それは幸運でもあり、また不幸でもある。

「そんな、どうして」

 亡骸を花嫁は抱きしめる。夫の血が染み込んで彼女のウェディングドレスは真っ赤に染まる。
 
 空は地球の文明でない飛行体が飛び交っている。宇宙人の侵略。冗談としか思えない出来事が現実に花嫁の夫を殺したのだ。

「酷い、酷すぎる。私とこの人が何をしたというの?」

 夫の死に花嫁はさめざめと泣きはらす。
 しばらくの後、涙は止まる。

 花嫁は立ち上がる。視線の先には爬虫類のような宇宙人の姿があった。そいつは光線銃で目に映る人々を手当り次第に殺している。
 たまたま落ちていた消化斧を拾い上げた花嫁は、それを宇宙人めがけて投擲した。
 突然、背中に斧を投げつけられた宇宙人は痛みと混乱で悲鳴を上げ、その場でのたうち回る。
 花嫁はつかつかと宇宙人に歩みより、再び斧を拾い上げてそれを宇宙人の脳天に振り下ろした。

「よくも! よくも!」

 斧を何度も何度も振り下ろす。何度も、何度も。
 
 地球外生命の血は赤色であった。返り血を浴びた花嫁はますます赤く染まる。
 宇宙人の頭の原型が無くなる頃に花嫁は斧を手放し、足元に落ちていた宇宙人の光線銃を拾う。
 それは異星の技術によるものだが、直感的に使い方を理解できる構造をしていた。元兵士の花嫁は地球の銃と同じように扱えるだろう。

「殺してやる。宇宙人なんて誰一人この星から生きて帰すものか」

 赤い花嫁は銃把を握る。ありったけの憎悪を込めて。

 夫を殺した宇宙人を根絶やしにする。不可能だと全ての人が言うだろう。しかし赤い花嫁は本気であった。
 赤い花嫁は一歩踏み出す。宇宙のとある知的生命体の種そのものが、たった一人の花嫁によって絶滅させられる最初の一歩である。

【続く】

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