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世界を救う理由

暁月のフィナーレのネタバレあり

 アルフィノとアリゼーが作り出した光の階段を光の戦士は登っていた。一歩、一歩確かめるように。
 天のはて、ウルティマ・トゥーレ。気がつけば随分と遠いところまで来てしまった。どこにでもいる一介の冒険者のはずだったのに、気がつけば星の命運というあまりに重たい責任が背中にのしかかっている。
 食い扶持を稼ぐために、ただ仕事を選り好みしなかっただけなのだ。実のところ、光の戦士は仲間たちほど高潔な意欲を持って事にあたってはいなかった。

 冒険者として光の戦士はたくさんのものを見てきた。どこに行っても卑しいものがそこにあった。
 良心をはした金で売り渡した者。誇りだの魂だの言って略奪を正当化する者。精霊などという不確かな根拠で他人を排斥する者。重篤な発狂を信仰とごまかす者。
 こんな世界、どこに救う価値があるというのか。

 エメトセルクは古代人をまっとうな存在と言っていたが、過去の世界でみた連中は、星をより良くするとお題目を掲げているが、単に自分たちのロマンチシズムにとって都合の良い世界を作るために、命を創っては勝手に「善くないもの」と判断して無責任に斬り捨てていた。

 それでも光の戦士が終焉に立ち向かうのは、個人的なこだわりに過ぎない。
 メーティオンは言った。どうせ全ては無駄なのだから、今すぐ終わった方が幸せだと。
 冗談じゃない!
 依頼を果たした時の「ありがとう」の一言。心身ともに凍えている時に差し出された一杯のジンジャーティ。ささやかな親切から命を救ってもらった大恩まで、たくさんの善意を受け取った。
 それが無駄と侮辱されるのは我慢ならない!
 義理と人情! そのために光の戦士は世界を軽蔑しながらも救おうとしている。

 汚泥を吐き出し、世界を卑しいものに貶めている連中が何人死のうと知ったことではない。だが、受け取った善意が無駄ではないと証明するために光の戦士は戦う。
 この星はまだ滅びる時ではない。滅びとは、人が善意を完全に忘れた時、自業自得によってもたらされるべきなのだ。
 光の戦士の武器を握る手に力がこもる。
 終焉を謳う者よ。救いだの慈悲だのと言って、結局は他人を不幸にしたいだけの卑怯者よ。
 そのねじ曲がって腐りきった性根にふさわしい報いを与えてやる。


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