勉強の進捗 2023/10/15

今年(2023年)の5月に「Suggest Toolを使った勉強」というタイトルの記事で各分野について勉強を進めている内容を書きました。

しばらく経ったので、また最近の勉強の進捗について書いてみたいと思います。

これまでの流れ

2022年の終わりに、2023年から各分野について勉強していくために、現在それぞれの分野についてどの程度知っていて、今後どういう方針で勉強を進めていきたいか整理しました。

その後、もともとクイズの問題順選定のために作った"Suggest Tool"を使って勉強する分野を決めて、順に取り組むというのを3月あたりから開始しました。

実際に勉強した内容は以下の通りです。詳細は5月の「Suggest Toolを使った勉強」の記事を参照してください。

  • 映画 2023/03/22〜

    • 主に世界映画史のおおまかな流れについて勉強した

  • 茶道 2023/05/04〜

    • 茶道の歴史と各流派の違いについて勉強した

    • 関連して仏教と日本史について少しだけ触れた

以下、それ以降に勉強した内容について書いていきます。

生物科学・植物学・動物学 2023年7月31日〜

茶道についての勉強の際、関連して仏教と日本史に手を付けようとしたら、流石に範囲を広げすぎてしまって、ほぼ3ヶ月くらいずっとこのトピックのみを扱う形になってしまいました。今回の勉強はある程度広く浅く触れることを目的としているので、これ以上の深追いは避けよう、ということで、7月末にSuggestを振り直しました。そこで出た結果が「生物科学・植物学・動物学」です。

大学で理学部にいたので、400番台の分野は比較的知っている範囲が多いですが、生物学は中では少し手薄なところです。高校では物理・化学選択だったので生物については最小限しか扱っていなくて、大学でも基礎生物学の講義で細胞生物学について少しだけ、それから分類学の講義を受講した程度です。それとは別に、具体的な生物について知るために主要生物の学名を丸暗記しようと思い立ったことがあって、哺乳類の学名を270個くらいピックアップしてAnkiに入れて覚えていました。一部はまだ覚えていますが多くは忘れています。

生物学は基礎的な部分をあまり知らないので、基礎を学ぶにはということで『キャンベル生物学』を読み始めました。B5版1704ページにわたる分厚い本なので、一気に全部読み通すのは結構大変で、結局約半分の第26章くらいまで読んで力尽きました。まあでも一気に半分読めるということは同じくらいの気概があればもう半分同じ感じで読み通せるということなので、気が向いたときに続きを読めば読み通せそうです。読んだ範囲で気になったところでいえば、カルビン・ベンソン回路とかクエン酸回路のような複雑な段階を踏んだ反応の仕組みをどういう研究手法を使って明らかにしていったのかが面白そうなので、どこかで論文とかを探して読んでみたいです。

博物学的な部分については、まず前に哺乳類の学名を覚えていた部分にもう少し理論的な話を補強しようということで、東京大学出版会から出ている『哺乳類学』の本を読みました。哺乳類に関して色々な視点で述べられているのは面白かったです。これはそういうコンセプトで書かれた本なので仕方のないところではありますが、日本の哺乳類という部分に特化しているのは若干不満で、別の文献を探して日本以外についてもう少し詳しく触れているものを読みたいという感想を持ちました。

哺乳類以外のターゲットとして次は魚類に焦点を絞って、矢部衞『魚類学』を読みました。魚類の方が哺乳類と比べると解像度が低く「どれも同じに見える」感が強かったですが、魚類の各種特徴について1つ1つ章立てして説明がなされていて、このあたりの解像度は少し上がった気がします。最後の方の章で書かれている分類大系に関する話は個別の魚類種について整理する上ではかなり役立ちそうです。魚類については他にもいくつか図書館で借りた本を読んで、また実際に魚を見るために葛西臨海水族園に行ったりしました。また哺乳類と同様に学名を覚えようかとも思いましたが、リストを作るのが大変で今は途中までになっています。

植物について、『テイツ・ザイガー 植物生理学・発生学』を買って読もうとしましたが、こちらは結局積ん読の状態で放置しています。そのうち気が向いたら読もうと思います。

生物学に関連して、農業に関する話がちょっと気になったので、そちらも少し調べてみました。農山漁村文化協会(農文協)が出している「農学基礎セミナー」のシリーズから、『農業の基礎』『作物栽培の基礎』『野菜栽培の基礎』『果樹栽培の基礎』を買って読みました。ただ、これらはあくまで教科書的な基礎について扱っているものなので、より詳しい内容が気になっているところです。

農業に関連して、土壌学に興味を持ったので、日本土壌肥料学会『土のひみつ』、久馬一剛『最新土壌学』、 犬伏和之・白鳥豊『改訂 土壌学概論』を読みました。大学で地質学について学んだので、それとの関連性を気にしながら読んでいましたが、例えば礫砂粘土の粒径定義について、地質学で用いるφスケールと土壌学の土性の定義に用いられるものとでは境界が違ったりしているような話は面白いなと思いました。また、中学・高校の地理で成帯土壌・間帯土壌についての話を学びましたが、藤井一至ほか(2019)『高等学校地理科目における土壌教育内容の更新の必要性』(https://doi.org/10.18920/pedologist.63.2_73)に詳述されているように、高校地理で使われている土壌関係の用語は土壌学で専門的に使われている用語とは異なる部分がある、というのにちょっと驚きました。

文学理論 2023年9月17日〜

私は時々趣味として丸善・ジュンク堂のような大きめの書店に行って全ての棚を眺めて回る、というようなことをやっているのですが、9月に丸善 丸の内本店に行ったとき、文学理論に関する本が目にとまってちょっと興味を持ったので、Suggest Toolでは出ていないですが少し調べてみることにしました。読んだ本は以下の通りです:

最初に手に取った西田谷洋『文学理論』はトピックごとに短めの文章で分かりやすく説明する、といった感じの構成で、それぞれの概念を大雑把に知るのには役に立ちました。ただ、各トピックが比較的個別個別に扱われていて、理論の成立の歴史的な流れはよく分からないという印象を持ちました。

次に読んだのがピーター・バリー『文学理論講義』ですが、ここではかなりのボリュームからなる文章を延々と書き連ねて説明がなされているので、話の流れが分かりやすい形だったと思います。個人的には「考えてみよう」みたいなコーナーを差し挟んでくるのはあまり好きではないですが、歴史的経緯や一般論についての話があったあとにそのスタイルの批評理論がすることを整理して、さらに実例を続けるという構成は非常に分かりやすいと思いました。

上の二書で大雑把に主要な文学理論・批評理論の内容と歴史的な流れについては把握したので、土田知則ほか『現代文学理論』と小倉孝誠『批評理論を学ぶ人のために』は比較的すんなり読めました。実際のところピーター・バリーの本を読むより先にこちらを読んでおけば良かったような気はします。大橋洋一『現代批評理論のすべて』ではより多種多様なトピックを挙げてそれぞれの概説がされているので、有名どころの理論以外について目を向けられるのが良かったと思います。

高校までの国語・現代文の授業の内容では、こうした文学理論・批評理論について細かく触れることがなかったので、全般的に新しく知る内容が多くてとても面白かったです。構造主義についてはレヴィ・ストロースが主要な論者として知られているというくらいは元々知っていましたが、ソシュールの言語学からの系譜で論じられたものだというのはここで初めて知りました。脱構築については以前建築様式について調べた時にフランク・ゲーリー等の一派の建築思想として触れてはいましたが、その際にはデリダなどがどういうことを論じていたのかはあまり深入りしなかったので、この機会に触れられて良かったと思います。文学・批評理論では、マルクス主義だとか精神分析だとかフェミニズムだとか、他の文脈でも耳にしたような内容との繋がりがあちこちで出てきたので、知識の連環が生まれていく感じを楽しめた気がします。

北アメリカ 2023年9月23日〜

9月の中旬あたりで『キャンベル生物学』を半分読み終えたところで、ちょっと生物学をこのまま続けていくのはモチベーション的に大変そうになってきたので、Suggest Toolを振り直しました。ここで「地理・歴史・紀行」分野の「北アメリカ」が選出されたので、しばらくは北アメリカについて色々調べてみました。

まず最初に、旅行地理検定のテキスト『海外旅行地理プラクティカル』と『世界浪漫紀行』が手元にあったので北アメリカに関する部分をざっと目を通しました。ただ、これらはあまり細かい内容については触れていなかったので、これを中心にする方針は早々に諦めて、「地球の歩き方」シリーズと「エリア・スタディーズ」シリーズを見ていく方針をとりました。

今回選ばれた「北アメリカ」という区分は、NDCの一般補助表 地理区分でいうところの-51〜-59の範囲で、-55〜-59の範囲として中央アメリカを含んでいます。そこで、ざっくり領域を「アメリカ」「カナダ」「中米大陸部」「カリブ海の島々」に分けて、それぞれ見ていくことにしました。

アメリカについては、元々知っている部分がそこそこ多いので、今回はそこまで深入りしないことにしました。一応『地球の歩き方 B02 アメリカ』に一通り目を通しました。

カナダについては、『地球の歩き方 B16 カナダ』と、『エリア・スタディーズ 83 現代カナダを知るための60章』を読みました。『地球の歩き方』については、ひととおり目を通しただけで記憶しているとは言いがたいので、もう一度読み直すというのも兼ねて、内容をドキュメントに箇条書きする、というのをやってみています。ちょっと分量が多いので最後までできるものか分かりませんが、うまくいきそうなら他の地域のものもやりたいところです。

中米大陸部についてはメソアメリカ文明についてがっつり勉強したい予定だったので、先にカリブ海に手を付けました。ここでは『地球の歩き方 B24 キューバ バハマ ジャマイカ カリブの島々』と『エリア・スタディーズ 197 カリブ海の旧イギリス領を知るための60章』を読みました。『地球の歩き方』については、たぶん日本人旅行者があまり行かない場所が多いせいだと思いますが、小さい島国についてほとんど扱っていないのでちょっと期待外れでした。『カリブ海の旧イギリス領を知るための60章』は小さい島国についても詳しく書かれていてとても勉強になりました。この本のおかげで、うろ覚えだったカリブ海の島国の位置関係はほぼ完璧に頭に入ったと思います。「エリア・スタディーズ」シリーズの中にはもう1つ『カリブ海世界を知るための70章』というのがあるので、そちらも読んでみたいところです。

中米大陸部については、まずは『地球の歩き方 B19 メキシコ』と『エリア・スタディーズ 130 メソアメリカを知るための58章』を読みました。メソアメリカ文明については、小中学生の時にマヤの数字と暦について調べていた時に身に付けたくらいの知識しかなくて、各地域・時代ごとの違いなどはほとんど分かっていない状態でした。『メソアメリカを知るための58章』の「III 古代文明の実像」で、オルメカ、サポテカ、マヤ、テオティワカン、エル・タヒン、トルテカ、アステカといった各地の文明について整理した説明があって、ようやく見分けが付くようになってきました。

ついでなので、メソアメリカの神話について少し深掘りすることにしました。マヤの神話については、グアテマラ付近のキチェー族の神話を書き記した『ポポル・ヴフ』を中公文庫の訳書でまずは読みました。また、 ジャン・マリ・ギュスターヴ・ル・クレジオ『マヤ神話―チラム・バラムの予言』も読みましたが、こちらはあまり物語的な内容ではないので読み物としては微妙なところです。昔調べた暦についての話はこういう資料が元になっているんだな、というのを感じながら読んでいました。ル・クレジオについては『
チチメカ神話―ミチョアカン報告書』というものも訳書があるようなので後で読んでみたいです。また、八杉佳穂(2019)『カクチケル年代記』(https://minpaku.repo.nii.ac.jp/records/8281)が国立民族学博物館の「みんぱくリポジトリ」で公開されているので、これはどこかのタイミングできちんと読みたいと思っています。

アステカ神話についてはあまり良い日本語の文献が見つかりませんでしたが、現代教養文庫の松村武雄『マヤ・インカ神話伝説集』でいくらかの話を読みました。ちなみに、この本にはポポル・ヴフからの話も書かれていますが、中公文庫の訳書と訳し方が違っていて面白かったです。アステカ神話についてはJohn bierhorstの『History and Mythology of the Aztecs: The Codex Chimalpopoca』のような洋書をそのうち読みたい気がしています。また、ベルナルディーノ・デ・サアグンの『ヌエバ・エスパーニャ概史』(フィレンツェ文書)についてもいつか読みたいと思っています。

その他、北アメリカについてその他の方針として、地質学方面についても調べたいと思いましたが、ちょっと頓挫しているところです。地質図はUSGSのサイト(https://www.usgs.gov/media/images/geologic-map-north-america)に北アメリカ全土のものが公開されているものを見つけました。また、岩波地球科学選書の『世界の地質』という本を持っていて、この中の北アメリカに関する項を読みましたが、地向斜からプレートテクトニクスへの移行期に書かれたことから、ちょっと古い記述が多い印象を受けました。これはもしかしたらアパラチア〜五大湖付近が地向斜理論のモデルとしてよく扱われたことが影響しているのかもしれませんが、プレートテクトニクスの描像では結構変わっている部分も多そうなので、全面的に現代の目線で書き直した世界の地域地質の概説書がほしい気がします。

衣服・裁縫 2023年10月11日〜

10月9日に、次のようなツイートを見かけました:

東大生とか京大生、(勉強とかその辺の方面を主に)新しいもの知らないものを受け入れて知る能力が異様に高いはずなのでオシャレの科学みたいな感じの授業開講すればおしゃれレベルが格段に上がるのではと思うなどしました

これを見て、そういえばこのあたりの内容について昔調べようと思って中途半端にしていたな、というのを思い出したので、良い機会だと思って少し深掘りしてみることにしました。

オシャレ方面の内容として、衣服、装身具、美容、理容といった内容がありますが、昔このあたりが気になった時に調べようとしていたのは服飾関係と美容関係です。服飾関係については、美術出版社の『世界服飾史』と、リンダ・ワトソン『世界ファッション・デザイナー名鑑』という本を買っていて、読みかけたまま放置している状態でした。美容については、日本化粧品検定の公式テキストと『資生堂 本気の美容事典 スキンケア&メーク』を買って読み途中にしていました。

まず、美術出版社の『世界服飾史』を最後まで読みました。これは西洋の服飾の歴史について、特に絵画その他の美術品の図像をふんだんに参照しつつ解説されていて面白かったです。美術館に行くのは昔から好きでしたが、衣服に着目して絵画を見たことはあまりなかったので、新しい視点が1つ加わってとてもワクワクしています。

続いてリンダ・ワトソン『世界ファッションデザイナー名鑑』に取り組んでいます。これはまだ現在進行形で読んでいる途中です。『世界服飾史』の中で20世紀以降の服飾デザインについても触れられていますが、ここでは具体的なファッションデザイナーについて1人1人詳しく書かれていて、それぞれ写真もいくつか付いているので、各デザイナーの特徴などが分かりやすくてとても良い本です。

服飾に関して、前に調べようとしたときにはまだ手を付けていなかったが気になっていたものとして、服飾デザインの専門学校である「文化服装学院」の教材があります。「文化ファッション大系」として何冊も出されているこの本は、服飾デザインでプロになる人が読むだろう本ということで気になっていました。一度に全部買い揃えるのはちょっと高そうなので、気になった順に、『服飾造形の基礎』『西洋服装史』などいくつかを購入して読み進めているところです。いずれは全部を揃えて読みたいと思います。

美容に関しては、日本化粧品検定のテキストと『本気の美容事典』はやはりちょっと一般向けに噛み砕いている感が強くて、物足りない感じがしています。これらの中で参照されている文献で、南山堂の『新化粧品学』という本がプロ向けに詳しく書かれてそうな雰囲気なので、どこかのタイミングで読みたいと思っています。

理容に関しては前に調べた時にはお座なりにしていましたが、日本理容美容教育センターの教科書が目下いちばん気になっているところです。これは近いうちに入手して読みたいと考えています。

その他

その他、腰を据えて勉強してはいないけれども書店で見かけたとか色々な理由でちょっと調べてみたものもいくつかあります。

  • チェス

    • 昔YouTubeの紀人チャンネル(https://www.youtube.com/c/kihitochess)あたりを見ながら練習・勉強していたことがあったが、何となく気が向いてまた少し勉強を重ねている。丸善丸の内本店に寄ったときに洋書コーナーで『The Mammoth Book of Chess』というのを見かけて購入した。それから、これまではlichess.orgでのみやっていたが、ChessJapanのチェスセットを入手してアナログでもできるようになった。

  • 教育学

  • 文化人類学

    • 文学理論・批評理論で構造主義について扱ったのと、北アメリカで先住民文化について知った流れで、文化人類学についてちょっと気になったので、米山俊直、谷泰『文化人類学を学ぶ人のために』を読んだ。マリノフスキーの『西太平洋の遠洋航海者』など、文化人類学の有名な本は名前は知っているが読んだことのないものが大半なので、いつか読んでいきたいと思う。

  • 発電工学

    • 丸善 ラゾーナ川﨑店で各棚を見て回っていたとき、ちょっと目に入って面白そうだったので電気学会大学講座の『発電工学』を買ってみた。『送配電工学』とかも気になるので後で読みたい。工学系はそこそこ手薄なのでたぶんどこかでがっつり時間をとって勉強することになるはず。

  • 租税理論

    • 10月からインボイス制度が施行されることになって、消費税の理論について気になったので租税関係の文献を調べ直していた。前にも少し調べていたがその時はよく理解できなかった部分もあるので再チャレンジという形。

    • 宮本憲一、鶴田広巳『所得税の理論と思想

    • 宮本憲一、鶴田広巳、諸富徹『現代租税の理論と思想

    • 金子宏『租税法

他には、過去に勉強していた内容の延長として言語学や倫理学なども少しずつ進めています。


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