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AIIT を卒業した後、ベルリンでエンジニアをしています

はじめに

こんにちは、社会人学生 Advent Calendar 2023 の 19 日目を担当する watsuyo です。2023 年 3 月に産業技術大学院大学(AIIT)の情報アーキテクチャコースを卒業し、情報システム学修士(専門職)の学位を取得しました。そして、2023 年 9 月からはドイツのベルリンでフロントエンドエンジニアとして働いています。

AIIT の同期生や先輩方の中には、卒業後に海外でのキャリアを考えている方が一定数いました。今回はそういった方やこれから社会人大学院に進みたいと考えている方の参考になるように、私が AIIT での学びから得た知識と経験が、卒業後のキャリアにどのように影響を与えたのかを紹介したいと思います。

AIIT 在学中 (2021 年 4 月 ~ 2023 年 3 月)

在学中はコロナ禍だったため、授業はすべてリモートで行われました。2 年次は、研究室に所属し、PBL(Project-Based Learning)活動が中心でした。また、夏季休暇中の合宿、最終成果発表、月に 1 度の対面ミーティングとランチ以外は、リモートでの活動がメインでした。当時、品川区にあるキャンパスまでの通学に約1時間かかっていましたが、通学回数が少なかったことが、学業と仕事を両立させることができた大きな理由でした。

※ PBL(Project-Based Learning): AIIT の PBL は、実務体験型の教育手法として定義されている、通常の大学院の修士論文に相当するプログラム。

1 年次 (2021 年 4 月 ~ 2022 年 3月 )

1 年次は、座学が中心でした。当時は、フロントエンド領域の経験がメインだったこともあり、Python を使ったシステムプログラミング、Linux の理解、AWS を活用したクラウドサーバの構築、Ruby on Rails を使ったWebアプリケーションの構築など、新しい分野の学びはとても刺激的でした。

これらの授業で得た知識は、業務にも活きています。例えば、Python で書いたスクリプトを AWS Lambda にデプロイして、業務効率を向上させる社内アプリを導入したり、Vue.jsのマイグレーションを進める際に、シェルスクリプトを使ってコードの書き換えを大幅に自動化しました。また、当時働いていた会社のサービスは Ruby on Rails と AWS を使っていたので、大学院での経験が業務に何度も活きました。

2 年次 (2022 年 4 月 ~ 2023 年 3 月 )

2 年次は、6人の研究室メンバーと共に、世の中に価値を届けることができるプロダクトを目指して取り組みました。活動当初は、メンバーそれぞれの職業、やりたいことや学びたいことが異なるため、目標を揃えるところから大変だったと記憶しています。

プロダクトの企画段階では、「リーン・スタートアップ」や「起業の科学」などの書籍を参考にしてチームでアイデアを練り上げ、プロトタイプの作成、ユーザーインタビューなどで仮説の検証を行いました。何度かプロダクト案が変わる中、最終的にはプロダクトを作ることができ、最終成果発表に臨むことができました。

このプロダクト開発経験は、エンジニアとしての実務経験とは異なり、プロダクトをゼロから構想し、調査やユーザーインタビューを実施するプロセスを学ぶ機会となりました。これらの経験は、プロジェクトマネージャーとしてのキャリア、技術選定、Web 技術を活用した課題解決アプローチにおいて役立っています。最近では、新しいツールを使った技術検証を行う際に、課題解決へのアプローチや新しいソリューションを考案するプロセスにおいて、PBL での経験が活きていると感じています。

次に、卒業後ワーキングホリデーの制度を使い、生活拠点をドイツへ移してからの経験についてお話しします。

ドイツ ワーホリ (2023 年 9 月 ~)

ワーホリを使ってドイツへ生活拠点を移すことになった経緯は、別のブログにまとめているので、併せてこちらもご覧ください。

Classmethod Europe への入社

2023 年 9 月に Classmethod Europe へジョインしました。私の主な業務は、Next.js や TypeScript を使用したフロントエンド開発、および Cloudflare Workers を利用したプロジェクトの開発です。

日本人同士では日本語でのコミュニケーションが中心ですが、全体ミーティングや多国籍メンバーとの打ち合わせでは英語を使います。また、ユーザーのニーズや課題に対応するために、ツールなどの技術的な検証を行い、その結果を基に実装作業に移ることが多いです。

ベルリン・ブランデンブルク門

英語はベルリンでの生活に欠かせない

ベルリンでの生活では、私は主に英語でコミュニケーションをしています。ベルリンは首都ということもあって、英語が通じない場面はほとんどありませんが、地域社会や日常生活の場ではドイツ語が基本です。ご近所さんとの挨拶、スーパーでの買い物、カフェやレストランでは、多くの場合、ドイツ語で話しかけられます。そういったときは、翻訳アプリを活用したり、英語での対応を依頼するなどして対応しています。

EU 圏内で旅行をするときなど、空港、ホテル、観光スポット、カフェ、フィットネスクラブなどでは英語が広く使われています。英語がヨーロッパの都市で広く通じるのは、英語教育の普及に加えて、シェンゲン協定による自由な国境移動や、陸続きの国境による国際的な交流の盛んさも一因であると感じています。そのため、現地語だけでなく英語も話せることは、ヨーロッパでの生活、ビジネス、旅行を充実させる上で重要です。

今後と AIIT 卒業のキャリアへの影響

日本以外で働く、滞在する

現在、私はドイツにワーキングホリデービザで滞在しますが、このビザの有効期限は発行から 1 年間です。日本以外の国に長期間滞在することで、ドイツや海外での生活が自分に合っているのか、異なる文化圏で生活することができるのかを確かめることができると考えています。また、ドイツや EU 圏でのキャリアを築くことも視野に入れているため、ワーキングホリデー後の就労ビザに関して調べた内容を紹介したいと思います。

EU ブルーカード取得のチャンス

EU ブルーカードは、EU 加盟国内で働く高度技能外国人に最大 4 年の滞在と就労を許可する制度です。このビザを取得するためには、一定の年収、職種一致する資格(学位)などが必要です。それぞれの大学や大学院の学位がドイツの資格として認定されているかは、Anabin というデータベースで確認できます。
画像の通り、AIIT も Anabin に登録されているため、大学卒業資格として認定されていることが分かりました。

Anabin 上の AIIT の記載

一方、EUブルーカードの年収基準は職種によって異なります。たとえば、「bottleneck profession」(エンジニア、医者など)の場合、年収の基準は €39,682.80、それ以外の職種では €43,800 です(2023年12月現在)。

また、エンジニアとして就職し、年収基準を満たしていても、情報系の学位がない場合、The EU Blue Card for IT professionals without a formal qualification という特別なケースに区分されます。この場合、年収や雇用期間の基準は変わりませんが、以下の追加条件が必要です。:

  • You must have worked in IT for at least three of the past seven years.

  • Your professional experience must have been at university level and a prerequisite for employment in Germany.

特に2番目の条件は、職業経験が大学レベルに達しているかどうかという点で曖昧なものになります。

ドイツや EU 圏での継続的な就業を目指す場合、AIIT の情報アーキテクチャコースを卒業し、情報系の学位を取得することにより、特別なケースとして扱われることなく、EU ブルーカードの取得確率を高めることが可能です。

ブルーカードに関する情報は以下の公式サイトから引用しました。しかし、年収基準などは変更される可能性があるため、最新の情報を確認することをお勧めします。

日本語でブログにまとめてくださっている方がいらっしゃるのでリンクを共有します。

永住権取得のチャンス

EU ブルーカードを一定期間(33か月)保持し、必要なドイツ語力を備えていれば、永続的な居住許可証へと切り替えることが可能です。ドイツ語スキルが B1 以上であれば、その期間は 21 か月に短縮されます。この居住許可証は、定住と就労を許可するもので、いわゆる永住権に相当します。

ブルーカードや永住権の取得は私の唯一の目標ではありませんが、AIIT での学びと卒業は、海外での生活とキャリアを築く上で、大きなきっかけとなりました。

まとめ

今振り返ってみると AIIT での学びは、海外でのキャリアを築く上での第一歩になったと実感しています。また、社会人としてエンジニアの経験を経た上で、社会人大学院で学ぶことは、実務に必要なスキルを習得し、これまで未経験だった技術領域への関心も拡げることになりました。

特に PBLでの経験は、プロジェクト管理やチームでの協力といった実務スキルを鍛える貴重な機会になったと感じています。これらの経験は、異なるバックグラウンドを持つ人々と協力し、共通の目標に向かって作業を進める能力が向上しただけでなく、グローバルな職場環境において今後も役立っていくと思います。

この note が、社会人大学院や海外でのキャリアを目指す方々にとって有益な情報となれば嬉しいです。フィードバックやご意見があれば、ぜひ X やコメントでお知らせください!

最後までご覧になっていただきありがとうございます!