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楢木範行年譜28 楢木範行と大間知篤三

楢木範行宛の研究者の書簡紹介。今回は大間知篤三。柳田国男に続いて二番目に多く遺されている。時系列に紹介し、後日、それぞれのエピソードに註を添えていきたい。

①大間知篤三→楢木範行(昭和十一年三月十日)
拝啓 その後失礼致して居ります。御壮健で御研究の由、最
上君から聞いて嬉しく存じて居ります。最上君からお話し
ましたやうに私今度薩摩の一村を調査することになり大層
喜んで居る次第です。お話の大川内村か藺牟田村に貴兄から
御紹介を願へるやうな事がありませんでせうか。またもし普通
の民家宿泊その他の御世話を頼めるやうな家でもあったら、宿屋になる
より遙かに採集効果をあげると思いますが、そんな適当
な家庭でももし御存知であったら望外の幸福だと伝へて
居りますが。鹿児島市へ参って貴兄にお会ひする機会は勿
論つくりますが、道順その他の関係ある、村の方が先になりさう

々の都合上、さう長くは居るまいと思います。
村へ入る期日は長崎の■の日取確定次第、お知らせ申し
ます。薩摩の村に対しては言葉の分からぬ心配は■
がありますが、非常に大きな期待を抱いてゐる次第です。
■種々御面倒をおかけ致しますが、よろしくお願ひ
申します 敬白
三月九日 大間知篤三
楢木範行様

②大間知篤三→楢木範行(昭和十一年七月二十一日)
「はやと」の活動はなかなか盛んになってやく趣で
嬉しう存じて居ります。第二号柳田先生から
頂きまして有難く読みました。それから
「薩藩年中行事」の御原稿深く御礼申し
上げます。野間君から「はやと」巻頭の小論依頼
されましたが、九月中旬まで、ぎっしり仕事がつまって
ゐますので、困りました。どうしても他に無ければ何と
か間にあはせを致しますが、それから真っ先にはまだ
「婚姻習俗語彙」お送り致しませんでしたせうか。
もしまだお持ちでなかったら、一冊お送り到ったこと
思いますが。なほ近く「葬送習俗語彙」を出ます

③大間知篤三→楢木範行(昭和十一年八月一日)
暑中御見舞申上ます
明□日本民俗学講習会
になりますので その前に
一休みに参りました。
御自愛を祈り
ます。
奥利根
法師温泉
にて
大間知篤三

④大間知篤三→楢木範行(昭和十一年十一月九日)
拝啓 先般は□々御迷惑をおかけ致し恐
縮に存じます。奥様方にもよろしく御礼申し
上げて下さい。あの朝から歯痛いよいよ激しく
なり、鹿児島も宮崎も別府も見ず、小倉で三四泊
寝て、療養、散々の体で帰京到った次第で
あります。柳田先生も下旬御当地へ参られる
ことに確定致しました。その機会に民俗研究会
の基礎を固めになっては如何かと考へられます。
□とりあへず御礼のみ
          □々

⑤大間知篤三→楢木範行(昭和十二年一月二十三日)
拝啓 □□採集手帖其他一二冊お送り
申し上げます。貴会にて適宜御使用下さるやう
お願ひ申します。「はやと」原稿承知致しました。
何かそのうち考へてお送り申します。たゞ□□で
すか、甲二版一頁と申しますと、六〇〇字位かと思
ひますが、その見当でよろしいでせうか。
東京の講座は□□□にて、まことに第三回の予
□をはるかに越したのには、いささか驚きました。
目下山村調査□□調査□□に□□□□
の体です。 奥様にもよろしくお伝へ下さい □□


⑥大間知篤三→楢木範行(昭和十二年三月二十二日)
拝啓 御手紙□□柳田先生の方へ
早速貴意をお伝へ致しておきました。
□□へ先生にお会ひした□で、もし先生の玉稿が
間にあはなければ拙文を□する□□で
したところ、計らずも十九日より胃瘍をひどく
こはして臥床致し、御堪信に□□□ざる
次第となりまことに申しわけなく存じて居り
ます。明日はなんとか致して先生にお会ひします
から、またお願ひはしますが、今回は悪しから
ず御諒承願ひます。        敬白

⑥大間知篤三→楢木範行(昭和十二年八月四日)
暑中御見舞申上候
「婚姻習俗語彙」二三□□に
お送り申し上げます。奥様に
よろしくお伝へ下さい
        八月四日
         住所
          大間知篤三

⑥大間知篤三→楢木範行(昭和□年十月八日)
拝啓 御手紙有難う存じました。
御尊父様の御逝去に対して心からお悔み申しあげます。
先般野間氏からのお便りで伝へ聞き早速手紙差し上げよう
と思ひながら、□だ/\して果さず大層失礼申してしまひました。
永年の念願かなって、いよ/\此状南島に行ける運びに
なって心□んで居た次第ですが、今度のやすな事件では、
島の人々も落ち着けないでせうし、それに僕自身も万一
召集された場合のことも気がかりになりますし、少時形勢
観望の体です。平山君へもその由伝へて当方待機して
貰って居る次第です。鹿児島はせめてそこに一年間位

住んでみたいと思ふほど好きな所ですし、また柳田先生も
鹿児島経由で□□やうに言って下さいますし、三度御当地に
参れることを大層嬉しく思って居ります。せめて三晩位は
御邪魔して種々お話を皆様からお聞き出来たら、採集
の為にも□□に御都合だらうと思ってゐる次第です。戦争
が今少し進んで先が見えるやうになってまないと何とも言へま
せんが、□□□□の出来次第お知らせ申しますから、何□
よろしくお願ひもうします。
「婚姻習俗語彙」大層遅れて失礼しました。一昨日丸ビルで
日本民俗学講座第三期開講しましたが、その際守随君に

頼んでおきました。御不幸のあった折でもあり、また貴兄
の□□資料もいくつも載録されてゐる次第でもありますし、「葬送習
俗語彙」も一□に贈呈したと守随君と話し合った次第です。
二三日中にはお手許に届く筈ですからお納め下さい。
奥様へもよろしくお伝へ下さい。  敬白

⑥大間知篤三→楢木範行(昭和十二年十月二十三日)
御著書有難う存じました。
廿五日本村の祭で、それまではどうしても
村にゐたいと存じますから、御当地に参
れるのは早くて廿六日午後になると存じます。
若しそれまで御□けたら直ぐ山形屋の方へ
参ります。しかし本村帰直或は都合により
一二日延ばさなければならないかも知れません。
なるべく□□□行くやうにしますが
             □□□□の上にて


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