マガジンのカバー画像

創刊号/vol.0

7
運営しているクリエイター

#小説

溢水「౨ৎ 333 ౨ৎ」

 手首に引いた線が、薄すぎたのか、リボンのように見えた。バイトもきっと限られる、腕も捲れない。でもそんなことは、どうでもいいだけだった。

 *

 かわいいものだけを散らかしたような部屋に、ただひとりで座っている。さいきんはなんだか、常に薄っすらとした眠気に覆われている。たぶん4週間ぶりの休みだった。眠って、2時間ほど起きて、水色の吹き出し、連絡を返してまた眠る。堕落していた。もう落ちる場所もな

もっとみる

私「春へ」

 わたしが、なりたくて、なれなかったもの。ピンク色の主人公、お花屋さん、パティシエ、少女漫画のヒロイン、チア部、アイドル、あの子、魔法少女、チア部のあの子、トイレの鏡の前のあの子、教室の窓辺でねむそうなあの子、花束を手渡されるあの子、いつか愛され幸せになれるあの子、うん、愛されて居たかった。わたしも。ノートからふと顔をあげる。息をする。「あなたも?」
「あなたも、そういうの、あるでしょう。べつに自

もっとみる