皮肉でもなんでもなく、今朝のフジテレビ日曜報道プライムでの、橋下徹氏と櫻井よしこ氏の、ウクライナ紛争についての議論には、事の本質をめぐる鋭い対立があって考えさせられた。リベラル、左翼の人はきっと見ていないだろうからこそ、読んでほしいなあ。


今日のフジテレビ日曜報道プライム。

 櫻井よしこさんが、すぐ「日本の本当の敵は中国なんです」って、ウクライナ問題なのに中国にスライスしていくのが大変だったけれど、それがあっても、橋下徹氏との議論は、面白かったのである。


 さて、僕の意見。少々、過激なことを書きますね。リベラルな友人のみなさんに向けて書いています。気を悪くしないで読んでもらえるとありがたいなあ。


 先週の、安倍元首相をゲストに招いてのこの番組も面白かったんだよな。今、日本の報道系の番組でいちばん面白いというか、見る価値があるのは、この番組だと思います。


 というのは、橋下徹氏が、ウクライナ紛争について、政府とも、他のメディアとも全く異なる独自意見を展開していて、それを譲らず、頑張るから。


 僕は、政府の立場には9割反対、橋下氏の意見には5割反対。橋下氏との方が意見が合う部分が多い。そのことをこれから解説していきますね。


 先週の安倍首相を招いての番組も、後半で出た「核共有」の話に話題が集中して、リベラル左翼のみなさんが激高してそのことでしか話題にならなかったのだけれど、その前の、実際、プーチン氏といちばんたくさん直接、会って話をした経験のある安倍さんの話には、聞くべきところがあって、面白かったんだよな。


 安倍さんが語ったのは、プーチンという人は「地域の平和のために」とか「世界の平和のために」とかいう、そういう正論を言っても、全然、信用してくれない。「で、それをすると、日本はどういう得があるのか。ロシアにはどういう得があるのか。」そういう話をしないと、話を聞こうとしない、そういう人物なんです。と安倍元首相は語っていた。


 プーチンのことを「頭が変になった」「正気を失っている」などという人が多いが、プーチンに対して、どういう損得で話をすることが解決の糸口になるか、という視点の話は、日本の報道番組で、この番組でしか出てこない。


 今日の番組でも、櫻井よしこ氏は、すぐに「中国のことを」って、ウクライナの話がすぐに「中国の」に飛んでいく、トンデモおばさん化が進行していて大笑いだったのだが、(しかし笑い話で済まないのは、ツイッター上のネトウヨみなさんは、櫻井さんが橋下を完全論破、さすが櫻井さんと大喜びだったこと。ネトウヨの方の番組読解力理解力に関して、本気で心配になる。)


 中国の話に飛ばないところでの、櫻井さんと橋本氏の対立点は、ウクライナ問題の現在の焦点をよく表していて、これは聞く価値があったのだが。


 この番組は、先週も今週も、明らかに聞く価値のある議論が展開されているのだが、ネトウヨの方ももリベラル左翼も、それぞれの先入観で「橋下徹だから」とか「フジサンケイだから」と思って、あらさがし揚げ足取りの目線で見るから、問題の本質を論じている、大事なポイントが理解できないのである。もったいない。たしかに核共有なんて全然賛成できないし(保管場所にされるだけで自国の意志で使えないんだから、それくらいなら自前で開発して保有しろ、だよね。)、今回も、全く賛成できない部分も多くある。でも、橋下氏の議論には、政治についての「根源的価値観」の問題に触れる瞬間というのが、この番組にはあるのだよね。それに賛成でなくとも、「あれ、そういう問いだとすると、自分は、どう考えたらいいのだろう。」と考えさせられる。そういうことを読み取れないのは、右左関係なく、もったいないと思うのである。


 今、キエフの目前までロシア軍が迫っている。ロシア軍は市街戦で、市民を躊躇なく殺害するであろう、中東シリアからの志願兵を投入することにした。市街戦なると、市民、市民からの急造志願兵たちに大変な犠牲がでることになる。


 この状況で、ゼレンスキー大統領が NATOに飛行禁止空域設定を呼び掛けても、NATOは応じない。


 櫻井氏の論点は、「ウクライナの人が、命をかけて、祖国を守る」と言っていることを尊重し、しかし、第三次大戦につながるのでNATOは、武器支援などはするが参戦はしない。という立場。「命より大切なものがある」と頑張っている人に「命より大切にモノなんてないですよ、妥協しなさい」なんて言うことは許されない、ということを熱弁ふるっていたわけだ。


橋下氏は
①NATOは参戦も辞さずという構えを見せろ。見せる一方で、
②中国にお願いをするなどして、プーチンが飲める政治的妥協を引き出せ。
③政治的妥協とは、停戦をして、ロシア軍がウクライナから撤退したら、ポーランドに配備しているミサイルをNATOも撤去するとか、それはこれまでも議題になっているさまざまな条件がありうる。
 つきつめると「市民の命より大切なものなんて無いんだから、なりふり構わず、節を曲げても、なんとか停戦にこぎつけろ」ということを言っていたわけだ。櫻井さんがどんなに中国嫌いでも、中国にしか調停実現可能性が無いならお願いすべきだって、わざと櫻井さんの神経逆撫でしていうところが、橋下徹らしかったけれど。


 これに対して櫻井氏は、ロシアの要求は領土、(と、あらっぽく言っていたが、まあ僕の解釈ではドンパス二州の独立した共和国の分離をウクライナが承認すること、クリミアについて文句言わないことの、二点の帰属問題)で、それはウクライナは妥協しないと言っている以上、ウクライナは戦うのであって、西側諸国はそれを最大限尊重して支援すべき。また、中国に仲介を頼むということは、中国の価値観を認めることになり、中国の香港の本土化やこれからの台湾侵攻などへの道を開くことになるので、受け入れられない、という意見。この話をすると、櫻井さんは日本の本当の敵は中国、という話にすぐ脱線してしまうのであるが。


(ついでに岸田政権は「G7各国とよく話し合って」しか言わないのはアホすぎるからなんとかしろ、ドイツだってエネルギー禁輸はできない、と自国の国益で発言しているだろうと正論。このド正論には僕も賛成。)


 ということで、実は櫻井さんは「ウクライナ政府とウクライナ人は、死んでも、命をかけても、国土の領有権と政治主権は渡さない」と言っている以上、それはウクライナ人が戦うことに、外国は「やめろ」とは言えない。「死んでもと言う人に、死ぬくらいなら妥協しろ降伏しろとは言えない」というのだな。


 という立場に対して、橋下氏は「ひどい殺戮が迫っているときに、それを回避するためだったら、中国にお願いすることも、NATOが戦わないまでももうすこし前に出ることも、出たうえで引いて「プーチンに対して得」と思わせる条件を提示できるようにすることも、なんでもできることはやるべし」と言っているんだよね。


 橋下さんの方が、戦後の「命は何よりも重たい」「命をかけて国を守るいう政治家の意地で、市民を多数死なせはいけない」というリベラル左翼的な価値観を主張しているのだよ。リベラルの人たち、「橋下徹だ」という先入観抜きにこの議論を聞いて、櫻井さんと橋下さん、この二者択一だとしたら、どっちを選ぶの?

橋下さんだと思うけどね。


 アメリカの民主党政権が戦争をしやすいのは、「筋を通す」「正論を通す」から。

 トランプが戦争をあんまりしなかったのは、プーチンともキムジョンウンとも「損得」の論理でしか話さないタイプの人間だったからだと思う。


 安倍さんはプーチンと「損得」の話をしようとして、そこはおぼっちゃまだから、まんまと「損」をさせられたわけだけれど、プーチンがそういうタイプの人間だということは、安倍さんは感じ取った、先週、そういう話をしたわけだ。


 そして、橋下さんも、「損得」で人は動く、というタイプの政治家だから、でもここでかかっているのは、キエフの市民の多くの人命(今も200万人くらいは残っている)だから、そのためだったら、中国に頭を下げるという損も、NATOが一瞬やる気を見せたうえで、実際はミサイル配備を引くという損も、なんでもしたほうがいい、ということを言っているわけだよね、


 「プーチン悪魔、ウクライナ頑張れ」という米英BBC・CNNからの日本メディアの洗脳(一見、反戦と言っているようで、戦争を煽っている)に染まった大衆視聴者は「橋下、プーチンや中国側の味方」「櫻井さんの言う通り」という反応をしたみたいなのだが、どうなんだ。


 僕は橋下さんに賛成しないのは「NATOは戦う意志を見せろ」の部分で、いや、NATOは、そもそもウクライナをもう誘わない、誘ったのが間違いでしたと引っ込むべきで、NATOによらないウクライナの安全保障枠組みを、米英はひっこんでもらって、独仏と、あとトルコに頼んで、と言うか、日本が出て行っても本当はいいと思うんだよね。

 今の政権だとありえないけれど、というかアメリカの属国だとロシアに思われちゃっているから資格はないと思うのだけれど。米英とは違うよ。ロシアともウクライナとも仲良くしたいよ、という立場で(トルコもそういう立場で仲介しているのだと思う。)直接欧州の利害に関係ないから、独仏トルコと一緒に、中国も連れ出して、日本も仲介するよ、という立場で関わるのが、本来、日本がとるべき立場だと思うよね。(トルコだってNATOの、一員でアメリカの同盟国だけれど、東洋と西洋の境目、イスラム教の国のなかでいちばん世俗主義よりということで、いろんな紛争の仲介者として役割を果たしている。日本もトルコくらいの自立的外交を目指していいと思うのだよな。)


 日本が取りうるのは①「米英と一体でロシアを責める」立場(現政権の立場)なのか「中国にお願いして、中国と一緒に、欧州の部外者として仲介に動く」(橋下氏の立場を政治行動に反映させればこうなる)なのか、という議論に、櫻井VS橋下の議論は発展する可能性を秘めていると思うのだよね。


 というような面白い議論は、今の日本の報道番組で、ここでしか展開されないでしょう。今の日本で、「中国に仲介をお願いしてでも、キエフ市街戦の前に停戦させなきゃだめた」って、テレビで熱弁をふるっているのは、橋下徹氏だけだよ、


 ここまで本質的な、戦争と、命の価値と、命より大事なものがあるかどうか、という議論を、他のどの番組でしているの? してないでしょ。


 そういうことも理解読解できずに、「橋下だから」「フジテレビだから」って色眼鏡で見る人のことを、僕は、バカタレと呼ぶのである。
(もちろん、櫻井・橋下2人そろって、原発再稼働を最後に言ってたのには、当然、反対だけどね。)

 橋下さんはウクライナ問題での発言、態度で、大阪でも人気を落としているみたいだけれど、きれいごとしか言わないリベラル左翼より、ずっと、「考える価値のあるラジカル(根源的)なこと」を言っている。それが「メディアに洗脳された大衆」には理解できないことなので、人気が落ちているのだと思うぞ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?