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子どもが喜んだ親が楽しかった絵本 その4 『子どもに語る グリムの昔話②』から「かしこいグレーテル」。くいしんぼうな妻と娘が大好きなお話。とにかく、とりの丸焼きがおいしそう。いい絵本や童話や児童文学は、食べ物がおいしそう。

『子どもに語る グリムの昔話②』こぐま社 から。

「かしこいグレーテル」


 これは、僕はあんまり覚えていないのだけれど、noteの新連載を読んだ妻が、「Mちゃん(娘、六人の子ども中ただ一人の女の子)が、グリムの中でいちばん好きだったお話はこれ」と教えてくれた。「Mちゃん、小さいときから食いしん坊だったんだよねえ」と言いつつ、妻が改めて僕に朗読、読み聞かせをしてくれました。


 グレーテルといっても、ヘンゼルとグレーテルとは何の関係もないんだな。

「あるところに、女の料理人がいました。グレーテルという名前で、かかとの赤いくつをはいていました。グレーテルは、そのくつをはいて外へ出ると、しゃなりしゃなりと歩きました。そして、「あたしって、やっぱりきれいだわ」と、思うのでした。
 それから、うちへ帰ってくると、楽しくてしかたがないので、ワインをひと口飲みました。ワインは食欲をそそります。そこで、グレーテルは、自分で作った一番おいしいものを、おなかがいっぱいになるまで食べるのです。そして「お料理人ってものは、食べものの味を知ってなくちゃならないからね」、と言うのでした。」


 という、ブッとんだキャラクターの主人公なわけ。

 ある日、だんなさんに「お客さんがあるから、にわとりを二羽、おいしく料理しておくれ」と言われて、せっかく、ものすごくおいしそうに焼き上げたのに、お客さんがなかなか来ない。お客さんを呼びにだんなさんが出かけたすきに「はねがこげちゃった」とか言って、ちょっと食べてはワインを飲んではして、結局、お客さんが来る前に、二羽とも一人で食べちゃうわけ。

 そこにだんなさんが帰ってきて、「急いでおくれ、お客さんは、すぐあとから見えるよ」と言う。


 聞いてるいる僕は「大ピンチじゃん」と心配になるのだけれど、グレーテルは全然あわてないの。


 だんなさんが鳥を切り分ける大きな包丁を研いでいるところに、お客さんがくると「すぐに帰りなさい、だんなさまがあなたの耳をふたつとも切ってとろうとしているんです」っていうわけ。お客さんがあせって走って逃げると、だんなさまには「お客さんが、にわとりを二羽ともかっさらって、持って行っちゃった」っていうわけ。


 だんなさんはお客さんに「ひとつだけでいい、ひとつだけでいい」って叫びながら追いかけるもんだから、おきゃくさんは、耳をひとつだけでもいいから切り取らせろって叫んでいるんだと思って走って逃げたって、そういう話。


 おしゃれで食いしん坊で腹が座っていて機転が利いてっていう、女の人の理想形を、このグレーテルに見てしまったらしいんだな、うちの妻と娘は。


 とにかく、にわとり丸焼きを作るプロセスの描写がおいしそうなんだな

「にわとりをつぶして熱湯をかけて、羽をむしって串にさしました。そして日が暮れかかったころに丸焼きにするために火にかけました。」「とりはこんがりきつね色になり、そろそろ焼きあがってきました」「汁気がたっぷりあって、おいしいときにたべないなんてもったいない」


ここでいったん火からおろして、ワインを飲みに地下室におりて行って、二杯ほど飲むわけ。

「それから上にあがって、とりを火のうえにもどし、とりにバターをぬって串をくるりくるりとまわしました」「そのうちにとりが焼けて、いいにおいがしてくると「しくじってないともかぎらないわね。どんなぐあいか、みてみなきゃね」と指でとりをおしてみていいました。」


 妻は、「クリスマスにとりを丸焼きにするたびに、毎年、この話を思い出すんだよね。とりの丸焼きって、ただ焼くだけなのに、おいしいよねえ」と、朗読をしたら、とりの丸焼きを食べたくなったみたいでした。


 素晴らしい絵本、素晴らしい童話、児童文学というのは、出てくる食べ物がおいしそう、っていうのがあって、『ジャムつきパンとフランシス』ミートボール・スパゲッティとか、あとはファンタジーの史上最高傑作『ナルニア国物語』『ライオンと魔女』のビーバーさんの家でのサケのフライとジャガイモバターとか、出てくる料理、食べ物が抜群においしそうなお話、というのが、あります。

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