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『人を助けるすんごい仕組み ボランティア経験のない僕が、日本最大級の支援組織をどうつくったのか』西條 剛央 (著)大震災で人生が変わった著者が震災から一年たたない2012年2月にその渦中で書いた本。困難な課題に解決を見出し実行する教科書として今も読む価値あり



この前、西條さんの『クライシスマネジメントの本質』の感想noteを書いた。

そのときにも書いたが

①僕が、吉野家役員問題発言(早稲田の社会人向け講座での)について「ほんとはこうだったんじゃないか」という文章(Facebook投稿とnote)を書いた

②早稲田の大学院(MBAスクール)の専任講師だったこともある西條氏が、それを読んで、すごく納得してくれて、Facebook友達になる。

③その後、僕のもろもろの投稿を読んで共感してくれる。

④西條さんが「著書を一冊、進呈したい」とメッセージをくれる。

⑤僕が「いや、本なら買います」とカッコつける。Amazonを見たらすごくいっぱい著書があり、『クライシスマネジメントの本質』を買って感想を書く。

ということなのだけれど、カッコをつけて隠していたことがあって、実は

⑥『クライシスマネジメントの本質』は自分で買っちゃったので、他の本、やっぱりなんか一冊くださいって、僕が結局、おねだりしたのだ。

そして、送って(贈って)もらったのが、この本。

僕と西條さんには、共通点がふたつあって、

①東日本大震災で、人生が変わった。

 僕は単に、それまで書かなかった政治や文学についての文章、当時はブログを書き始めた、というだけなのだが、結局、その方向に集中するために、早めに広告の仕事から引退したという意味では、あれが人生の転機だったのだな。

 西條さんは、宮城県の出身で、ごく近しい親族の方を亡くしてしるし、ご実家のご家族みなさんも被災をし、震災直後から現地に「何かできることはないか」とレンタカーに支援物資を積んで被災者支援にかけつけ、現地の人と直接出会い、話を聞き、その状況をなんとか解決しようとしているうちにどんどんその仕組みを拡げていく。人生が変わったという意味では、そのスケールも実行力も、ぼくといっしょにするのは失礼な、ものすごい人生の転換をされるわけ。

 その経緯を書いたのがこの本。2012年2月が初版なので、震災後一年たたないうちに、出版されているので、「激動の一年」の、その熱量が、そのまま記録された一冊なのです。

ここでAmazon内容紹介

「ボランティア経験なしの早大大学院(MBA)専任講師が、
日本最大級の援組織「ふんばろう東日本支援プロジェクト」をどうつくったのか?
 代表の著者がはじめて明かす、人を助ける仕組みと支援の舞台裏。東日本大震災を踏まえ、これからの有事に活かせる有効な支援の仕組みを大胆提案!
 約3000か所の避難所や仮設住宅、個人避難宅に対して、3万5000回、15万5000品目に及ぶ物資を届け、アマゾンの「ほしい物リスト」を援用し、2万4000個の物資を被災地へ支援。また、自立支援の一環である「重機免許取得プロジェクト」では、計200人以上の重機免許取得者を生み出したりと、誰も思いつかないアイディアを次々実行し、どうやって成果をあげているのか。行政や日本赤十字社もできない支援の仕組みから、1000人超の組織を無給で運営する秘密、トラブルを減らすための7か条まで、ぜんぶ一挙に公開!」

 で、この本の帯に、糸井重里さんが推薦文を書いているわけですが、本書の中の一章も、「ほぼ日」に掲載された対談が収録されています。西條さんが、被災者支援の活動を全国に広げていく中で、糸井さん、ほぼ日に取り上げられたことも、ひとつの要素だった。

Amazon内容紹介から

「岩をも動かす理屈はある。そこに方法がないなら、つくればいい」西條さんの学問は、実戦的で痛快だ。震災の状況だけでなく、あらゆる仕事の場で役に立ってしまう本になったと思う。――糸井重里」
「大反響!糸井重里氏との「ほぼ日」対談『西條剛央さんの、すんごいアイディア。』も著者視点で新たに収録!」

 実は、僕が震災直後にブログを書き始めた、そのブログが、万単位の読者を、ごく初めだけですが獲得できたのも、糸井さんがツイッターで拡散してくれたのが、これは唯一の要因だったんです。
②震災直後の人生の転機に、糸井さんとかかわりがあった、というのも、西條さんと僕の、もうひとつ共通点なわけだったのです。

 僕は、原発に関する糸井さんのその後の活動(早野さんとの共著とか)には賛成できないところもあって、僕が「糸井さんが推薦文、帯を書いている本の感想文を書く」ということに違和感を持つ人がいるかもしれないけれど。

 でも、震災直後、あの震災に衝撃を受けて、いろいろなことを考えたり行動したりした人にとって、糸井さんは、ある種、心強い「応援団」のような存在だった。SNSが力を持つということ、というか、多くのフォロワーを持つ糸井さんが取り上げてくれることで、マスメディアには取り上げられない一個人が、その意見や活動を多くの人に知ってもらえる。そういうことを教えてくれた、その力で助けてくれたひとである、というのは本当のことなんだな。と、西條さんと知り合って、再認識したわけです。

 それにしても、西條さんの、人を巻き込んで、どんどん前に進んでいく力はすごいものがあります。もちろんこの本が「震災後一年も経たず書かれた」というのも、その印象を強めるものだと思います。この本の後半で、すでに初期の熱から長期戦に向けて、組織のあり方を変えていく悩みに直面する様子が描かれています。

 西條さんの人脈の、謎の広さというのが、そもそもいちばん最初に被災地に支援物資を積んで出かけた友人というのが、北川貴英さんという「旧ソ連特殊部隊の格闘術の師範」で、(西條さんとは全く関係ない僕の趣味で)、ここ最近、北川さんの武道武術系のYouTubeをものすごくたくさん見ていたので、この本を読み始めてわりとすぐに、全く不意打ちのように北川さんが出て来て、もう腰が抜けるほどびっくりした。武道達人のYouTubeを山のように見ていますが、達人度合いでいうと僕の知っている「全達人超人たち」のベストスリーに入るすごい人なんですね。ジークンドーの達人、5センチの建築資材木材板を一撃で割るワンインチパンチの石井東吾さんの本気のワンインチパンチを、北川さんがお腹で受けて、なんでもない顔で「おお、重たいですね」って笑う衝撃映像がYouTubeにあります。 

 その北川さんにさらにびっくり。なんと、西條さんの立ち上げた「ふんばろう東日本」のサイトを始めに作ったのは北川さんが実家のパソコンで作ったと書いてあるんですわよ。この本に。

 「武道の達人なのに、そんなことまでできる、してしまう人なんだ」と、すみません、北川さんに感動してしまった。脱線。

 話は戻って。西條さんがそれまで研究者として取り組んでいた「構造構成諸義」という学問が、この震災と、被災者を支援するプロジェクトの体験、「状況と目的をクリアにすることで、方法は柔軟に生まれる。「なんとかする」」という「本質行動学」へと発展していく。『クライシスマネジメントの本質』で語られる本質行動学が、単なる机上の論理ではなく、震災、被災者支援を、行政の硬直を回避し、ポランティア組織の持ち問題とも向き合いつつ、「被災者の支援」という目的の実現のための方法を柔軟に生み出していった体験が鍛えたものだということが、深く納得できる本でした。

 僕は「本を読んでは文章を書く」ことだけをしてこれからは生きていこうと決めたので、西條さんのように、本当に困っている人のために行動する方の本を読むと、自分の選んだ「なんにもしない主義」について、これでいいのか、とも思うわけですが。

 しかし、まあ、人には適性というものがあり、僕は本を読んでは考えては文章を書くことで、西條さんのような方とも知り合うことができ、それを他の人に伝えることもできる。そういうもんだ、と開き直ってみたりするわけです。

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