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ブダペスト世界陸上 8日目 テレビ観戦記。日本男子リレーに何が起きたのか考察+女子5000m決勝 田中希実。

世界陸上8日目

の感想の前に脱線。

世界陸上テレビ観戦の合間に、NHK教育テレビで放送された全国中学生大会の陸上を見る。と、100m男子決勝、優勝した、千葉の片山瑛太選手、10.56の中学日本記録保持者で、今大会も10.75で優勝。決勝7人が10秒台、8番が11秒00である。すごいな中学生。カラダはまだ半分子供な感じで、上半身筋肉はそれほどついていないのに、女子世界陸上決勝とほぼ同じ記録(優勝が10秒65で8位が11秒03)である。こどもの中学校の運動会見に行って10.7秒で100メートル走る子がいたら腰が抜けるだろうな。

14~15歳の10秒7を出せる子のうち、どれくらいが、高校3年~大学に入る頃に10秒を切りそうなところまで行くのかな。みんなそれを目標にしているけれど、壁にぶつかる子のほうが多いのだろうな。

そう考えると日本代表に選ばれて世界陸上に出ている選手というのは、予選で敗退したとしても、ものすごい競争を勝ち抜いてきたエリートなんだよな。

ということで、そういう超エリートたちがまとめて出てくるリレー2種目。400×4マイルリレーの予選と、100×4の決勝が男女ともあり、日本チームは男子が出た。

 マイルリレーは、今大会個人の400メートル3選手が準決勝進出、二人の佐藤が44秒台、中島もそこそこ好調だったので、予選は楽勝だろう、メダルも狙えるだろうと思っていたのだが、予選1組5位で敗退。各選手の400持ちタイム合計ではアメリカについで二位だったのに。(イギリスが不明だったにしても、3位。かなりぶっちぎりで4位以下には差をつけていたのに。)

決勝進出は各組3位+タイム上位2チーム、2組しかないから16チーム中10位だったのだが、8位で決勝進出したオランダが3分00秒23、日本が3分00秒39。おーい。0.13秒差。一人当たり0.04秒ずつ速ければ。

男子100×4は、3走小池4走サニブラウンのバトンが伸びてしまい、5位。

ここ数大会の、世界陸上や五輪やアジア大会も含め大きな大会での、ここ20年間くらいの100×4リレー成績というのは、2008年北京五輪銀、2016年リオ五輪銀、2017ロンドン世界陸上銅、2019ドーハ世界陸上銅とメダル常連だったのが、2020年代に入ってバトン失敗が増えて成績が低下している。

両方のリレーで思ったのだが、今、日本は個人の100も400も成績が伸びていて、個人競技のレース数が増え、レース日程がより後半まである状態になってきた。ので、リレー、バトンの練習に割く時間が取れなくなっているのだはないか。

メダルが取れていたときは個人の走力は、10.2くらいでバトンが芸術的に上手い、だったのが、2020以降は、個人走力が9.9秒台に向上するかわりにバトンが失敗しやすくなる、という過渡期、中途半端期に入ったのだと思う。あるいは9.9秒台と10.2秒台が混在することでバトン難易度が上がっているのかもしれない。今日のレースでも、サニブラウンがタイミングだけだなく、本気だスタートしたら予想したより速すぎて小池が追い付けなかった、サニブラウンの爆発力がつきすぎたせいのように見えた。

イタリアは個人走力は低いのにバトンパス芸術的でメダルが取れる、というかつての日本型で強いし、ジャマイカとアメリカは走力が別格でバトンがかなり下手でも速い。

その端境期の迷宮に日本男子リレーは入ってしまったようである。

さて、今日の日本の入賞は5000m女子の田中希実。8位入賞と漠然と結果だけ聞けば、まあまあ頑張ったんだな、程度の印象を抱くかもしれないが、レース内容が素晴らしかった。

 Paravi解説の方が細かく分析してくれたが、レースは優勝のキピエゴンはじめエチオピア勢が先頭でペースを揺さぶり、二位になった、あのオランダのハッサンが中段で様子をみて、仕掛けるタイミングを狙う、という展開。この中で田中は、前大会あたりまでのような初めから先頭にたって行けるところまでがんばる。みたあな未熟なレースから完全に脱皮して、ハッサンを見ながらだと思うのだが、中盤だ、しかも埋もれないように、位置取りを変えながら、最終終盤のスパートに余力を残す。残り二周までその位置を維持し、ラスト一周ではトップメダル勢には食らいつけなかったものの、最後のストレートのスパートの上位入賞者と互角に争いきった。その、末の8位である。立派。

 田中より上位にはエチオピア三人。ケニア三人、オランダのハッサンもエチオピア生まれ。七人全員東アフリカの長距離強国ケニアとエチオピア系。それ以外では田中が世界最強だった、ということである。

 女子マラソンもエチオピアとケニアの強さは際立っていた。そこにどうしたら割り込めるか、という課題・構図がさらに明確になった今回の世界陸上の女子長距離。

 そこで一番戦えたのが田中希実でした。

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