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【連作短歌】蟹のいる生活

青痣が消えない点滴針の痕 終末前夜をどこまでも行く

血のにじむ絆創膏を剥がすとき無音の白い空間が来る

肝臓に棲む黒蟹の消息をきくたびに潮騒がうまれる

遺伝子の捩(よじ)れた蟹にぴったりと寄り添うような波をください

両肺に水玉模様の火を宿し浅瀬で泳ぐように息して

黒蝶ひらり万緑をゆく病む肺のようにひろがる翅ひややかに

天上の糧はこの世で食べたいね雪の香りのアイスクリーム

生きるとは別のいのちを奪うこと呼ばれた順に旅立つキウイ

わたしより前(さき)に薬を試されて逝った実験動物(ラット)のその生の意味

いずれわたしも呼ばれるときが来るでしょう待合室はしんとあかるい

わたしのゲノムを知るAIが死ののちも私を生きてくれるならいい

おつかれ。世界中から来る毒を受けとめつづけてくれた肝臓


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