【連作短歌】地下劇場の王国より
パペットの糸切れたあとその瞳(め)にはひかりが宿る やがて開幕
観客がわたし独りの劇場に轟きわたるオラクルの蒼
道化師がバビブベぼくの鼻先で告げる世界をはみだす呪文
真実は劇薬だからすこしだけ朝のスープにそそいであげる
錆びついたメロディーよりも熱い嘘 過激なほうを取り分けるから
托卵の歌とき放て明日にはきっとわたしがあなたを超える
硝子戸の前に立っても開かない自動ドアではない板硝子
何処へでも行けるIC乗車券かざして月の改札口へ
何周も同じ楕円をめぐりつつ なのに降りられないわたしたち
狂乱の一歩うしろを追いかける消炭色の沈鬱いまは
名づけられなかった星の血汐もて歌は夜空の黒板に画け
Gloria あなたの涯(はて)に降る雪を穢すわれらに幸いあれ、と
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