牧野ヶ池の鷺

【連作短歌】水の領域

龍の庭、その結界に触れるときかつてわたしも森だったこと

あと一歩踏み出せばほら、ここからは水の領域 うたがうまれる

たましいに鳥の刺青いつだって翔べる準備はできていたんだ

水が空を恋うように気がつけばまた ぼくらはとおく月をみていた

川面には光がさやぎ終わらない夏をあなたはいつまでも追う

けれどいま終着駅を過ぎたこと うたがわたしにおしえてくれた

なにもかも諦めた日のミントティーわたしに水の記憶が満ちる

あとはもう眠るばかりの千年を 水底のメドゥーサの燐光

夕雲にゆるされてきっと奇蹟はなべてやさしい木犀の雨

天の泣く声は地底をかけめぐり汚れたままで海を育てる

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