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【解説】なんでPFASって問題になっているの?

水関係のニュースを見ていると、ここ数年で聞く機会が増えている「PFAS」という物質名。世間一般では認知度は高くないかもしれませんが、それでもNHKのニュースなどでも聞く機会が増えてきました。

なぜ、ここ数年で急にこの名前を聞くようになったのか?なぜ健康被害が懸念されているのか?今後どのような対策が取られているのか?を解説したいと思います。

1.そもそもPFASって何?

PFASとは有機フッ素化合物の一種であり、正確にはペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物の総称になります。

なんかわかりにくいですよね。超ざっくりいうと、「フッ素と有機物の化合物でむっちゃ強い物質」になります。
フッ素化合物で有名なものとしては、フライパンのテフロン加工でおなじみのテフロンなどがあり、その親戚にあたると思っていただければ良い感じです。

燃えにくく、丈夫、そして加工性が高いので日常のいろいろな分野で使われている物質で、代表的な商品としては以下のようなものがあります。

  • フライパンなどのフッ素加工剤

  • 食品包装紙(耐油紙)

  • 防水・防汚スプレー

  • 消火器(泡消火剤)

  • 半導体の表面処理剤 

これまたざっくり言うと、「我々の生活を支えている有用な物質」という感じになります。


2.なんで急にクローズアップされたの?

そんなに生活に根ざした物質なのに、なんで急にクローズアップされたのか?というと、実はあまり調査できてません。(すいません、調べがついたら加筆します)

PFAS自体は1940年代に商品化され、上記のような様々な用途に使われており、様々な分子構造の化学物質が開発され、今では5,000種類弱の類似構造物があるそうです。

そして、「非常に強い」と書いたように、自然界で簡単には分解されず、一度廃棄しても自然界にずっと残り続ける性状のため「フォーエバーケミカル=FC」なんて呼ばれたりしてます。
(ちなみにフッ素の元素記号はF、炭素の元素記号はCなので、うまく語呂合わせになっているとか、いないとか、、、)

そんな超安定な化合物なので、自然界に入ると分解されずに蓄積され、それが悪影響を与えるようだ、ということで、業界最大手の3M社が2000年代頃から減産に踏み切り、2002年に製造停止をするという決断をしました。

それに伴い米国としては2006年に将来的に生産停止が自主目標化され、EUでは2009年にREACH規制対象物質として、事実上の禁止。その後も各国で徐々に自主目標規制から正式な規制値に変わっていって、現在に至っている。という感じです。

つまり、ここ20年程度の動きであり、現在進行系で、その対策が論議されている物質になります。


3.どんな被害が想定されているの?

こちらについても実は調査が済んでいません。と、いうか、水俣病やイタイイタイ病のように直接的&劇的な変化が少ないために、臨床データがまだ少ない、という実態があるようです。

文献によると発がん性物質であることは複数報告されていますが、それ以外にも妊娠時の接種により低体重児が生まれる可能性がある。などの報告があります。ですが、人間での事例ばかりで、野生動物への影響被害までは報告されてなく、真偽の程はまだ確認できるレベルではありません。

ただ、動物実験では「フォーエバーケミカル」と言われるだけあって、肝臓や腎臓に蓄積し、免疫系に障害を発生させることは確認されているため、生物へのなんらかの影響があることは間違いがないようです。

それでも現在進行形で研究やデータ解析が行われている状況であり、WHOの基準も昨年12月に引き上げられたばかりで、明確なコメントができない状態にあります。


4.今、どんな規制があるの?

まだどれだけの毒性があるか詳しく理解されていないPFASですが、各国ではどのような基準が設けられているのでしょうか?

上記のように各国での規制も色々と強化されている段階なので、このnoteをアップしたときと、読まれている時期では若干の誤差があるかもしれません。(noteを書いてる最中でも多数のバリエーションがあった。)

ここでは便宜的にNHKのクローズアップ現代で特集された時の数値を参考に記載します。

各国のPFAS規制値(2023年4月) アメリカは規制値案、日本は暫定規制値

これだけ見ても、規制は各国バラバラですよね〜。それだけ、規制が追いついていない物質、ということになります。

ただこれ、あくまで「飲料水の規制値」なんです。

飲料水で規制したとしても、どこかで排出を続けていたら、人間を含む動植物が接種し続けちゃいまいますよね?
でも、まだその規制値はないのが現実なんです。
(一部、◯◯年までに撤廃、という掛け声はあるけど、実際には製造し続けられているし、除去しきれてないという、現実です。)


5.どうやってPFASを除去するの?

もうすでに環境中にでちゃってるPFAS、飲料水に混じっていたら、どのように処理ができるのでしょうか?

水処理には大きく3つの処理方法があります。それが「生物処理」「化学処理」「物理処理」です。

生物処理は微生物のちからを借りて、物質を分解する手法なのですが、そもそも、めっちゃ安定的な物質であり、生物では処理ができません。

化学処理は化学反応の力を使って、物質を変質させたり、固形化させたりして除去しますが、これもめっちゃ安定的な物性なので、どんな薬品を加えても処理が難しいです。(めっちゃ大量の薬品で処理は可能ですが、そもそも大量の排水も発生させてしまうので現実的ではない。)

最後に残る物理処理ですが、これはその名の通り、膜で分離したり、水だけ蒸発させて分離させたり、なにかに吸着させて除去する方式になり、これでないとPFASは処理ができません。

飲料水で有望なのは、費用対効果からいってRO膜か活性炭処理になります。ただ、これも通常の浄水処理からするとコストが非常にかかるので、一番効果的な方法は「取水源を変える」ということになってしまっています。


6.今後、工場側で規制されるの?

飲料水側で規制値が強化され、人間の健康が守られたとしても、製造工場からPFASが流出しつづけたり、消化器を使用することで環境中に撒き散らし続けられたら、どこかで破綻してしまうのではないでしょうか?

そう思われた方、はい、そのとおりです。
ただ、残念ながら、各国でも「PFAS利用の撤廃」は努力目標に掲げてるものの、工場排水の規制値に触れている国はありません。

日本でも同じ状況で、飲料水では規制をかけているものの、河川や地下水などで自然環境を監視する「目標値」はあるが、肝心な排水処理設備に対する規制値はまとまっていない状態です。

1の項目で記載した通り、すでに現代人の生活のあらゆるところに入り込んだ物質であることと、3の項目で記載した通り、実際にはどこまでの生物への悪影響があるかわかっていない物質であることが相まって、簡単に規制がかけられない、というのが本音なのでしょう。

ただ、こういった正常性バイアス的な消極的規制も、外部環境が変わると急に規制強化に走る可能性があります。
なので、各排水処理プラントを有している事業会社の皆さんは、これらの情報にアンテナを貼って、監視し続ける事がますます需要になってくるでしょう。

え?うちの工場でそんな事をしている人材なんて居ないって?
ご安心ください!そんな時には私のような「フリーランスの水処理技術者」にご用命ください!
PFASのような最新情報だけでなく、既存の用水処理、排水処理など水に関する様々な技術的課題についてアドバイス可能です!

※すいません、6月までには会社登記とホームページ作成を終わらせます!

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