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水処理と技術営業/一般産業編

水処理の分野の営業さんは、いわゆる技術営業というものに該当することになります。こちらの記事でご紹介した分野毎に、営業の仕方や仕事の仕方がどう違うのか?を経験と知見を基に解説してみました。

今回は一般産業編です。前回の巨大プロジェクト編においては、顧客の業界が限定的でした。一方、一般産業においては「一般」というだけあって様々な業界が対象となります。技術営業においては、お客様の業界に精通して情報を収集し、必要な技術情報を提供する必要があります。従って、この分野においては大中小様々な、食品業界、印刷業界、ゴム産業、金属加工産業、ガラス業界、金属めっき業界、、、様々な業界に精通することが必要になってしまいます。ここまで数が多すぎると、非常に情報収集が難しくなることは想像できるかと思います。業界を知らないながらも、お客様の要求を察知して、「その場合はこうしたほうがいいですね!」として信頼を得ることができるスーパー営業さんは本当にごく一部です。おのずと、顧客の業界情報から必要技術を当てはめていく思考でなく(業界情報→技術特定)、手持ちの技術から顧客の業界/要求を満たす技術の紹介する思考が必要となってきます(技術知見→業界適用)。巨大プロジェクト向けと比べて、一般産業向けの営業においては、より技術側を理解を深めた上での営業が必要になってくるということです。巨大プロジェクトの思考で営業活動をしていると、お客様から全然信頼を得られず上手くいかない、なんてことが起こります。

今回はこの視点を起点に解説していきます。

5.一般産業向け用水・純水処理プラント納入

一般産業においては、単に工業用水や水道水を直接使用できない用途が多々あります。その場合、その用途に合わせて水をブラシュアップする水処理設備が必要になってきます。

どこまでブラシュアップするのか?は業界次第、用途次第、顧客次第。ただ、この業界では水は大事なユーティリティの一つとして認識されており、製品の生産に直結することから、お客様から必要条件の提示をいただくことが比較的可能です。また、水処理設備も工業用水、水道水、河川水、井戸水、海水が処理対象設備と決まっているので、ある程度技術を絞り込めることができます。処理対象の物質も決定しやすいです。従って、有象無象の一般産業といいながら、条件が固定的であるため、巨大プロジェクトのような営業スタイルでも通用しやすい業界です。ただ、巨大プロジェクトのように限定的な仕様がない分、知識さえあれば参入しやすい業界であるため、し烈なコスト競争にさらされていくことになります。

6.一般産業向け排水プラント納入

「食品を製造します。1日に1000m3くらい排水がでます。見積もりできますか」
「何を製造するのか明かせないのですが、金属加工でめっきを使います。1日に100m3くらい排水が出そうです。お見積りできますか」

この業界の水処理設備相談はだいたい上記のようなものです。この時に営業が技術のことをほとんど知らない(応用がきかない)と、もやは伝書鳩となり、他の技術を知る人に聞いていくことになってしまいます。そういった営業は、残念ながらお客様の信頼を得ることはできません。お客様が疑問と不安を抱いている時間=お客様の信頼を失っている時間です。お客様は、営業に話すことがまどろっこしくなり、知っている人に直接聞きたい、と思うのが常です。

対応策は2つ。ニッチな水処理産業の中でも、例えばめっき業界限定、などさらにニッチに業界を限定して型にはめ込んで技術営業していくか。技術営業として技術知見にもう一歩踏み込んでいくか。ここでは後者について解説します。

技術営業として技術知見により踏み込んで営業する方は、営業→技術営業よりも技術者→技術営業のパターンで営業していることが多いです。その場合、まだお仕事を頂いていないにも関わらず、せっかくの商談が「設計確認」のような場になってしまうことがよくあります。営業でなく設計者として必要な情報を聞き出そうとしてしまうのです。そうなると、その商談で得られる情報は、お客様のためのものでなく、水処理会社のためのものだけになってしまいます。お客様が何を求められているのか、何を解決したいのか、ということに対して向き合い、設計からくる知見によって、お客様の疑問を解決する場にすることが大切です。また、受注後の設計や現場のフェーズと違い、お客様は不満を直接口にしないことがあります。「この人に言っても無駄だな」と思われたら、何も言わずに商談は終わります。お客様の「まぁいいや」は、営業の段階では「了解」を絶対的に意味しない点にも注意です。一方で、営業からこの分野に入る方は、設計に必要な情報とは何なのか、ということに対してより理解を深めていくことが大切です。

「排水」はいわば利益を出さないゴミ箱のようなものです。いくら政府が排水規制を施行しようが、お客様のお考えの中心は製品です。ですので、製品に直結する純水などのユーティリティの情報は比較的主体的に考えていただけますが、排水については全く知らないことが多いです。「排水のCODを教えてください」といっても、情報が得られないことがほとんどです。その場合は、お客様の知り得る情報まで目線を落としてヒアリングします。排水量が分からなくとも、製造に必要な水の使用量はご存知です。排水水質が分からなくとも、排水がでる工程や使用する薬品と量についてはご存知です。異業種であるお客様の工場の製造工程を勉強し、一つ一つヒアリングしていきながら、水処理会社の技術知見に落とし込んで理解していきます。異業種であっても、本質を捉えたその先に共通のゴールがあります。その過程をお客様と共有すると、信頼も得ることができます。

余談ですが、この分野でたまにお客様の中で非常に自社の排水処理に詳しい方がいらっしゃる時があります。有象無象のものをこなしている水処理会社のプロであっても、こと該当お客様の排水に限っては知識・技術で太刀打ちできるものではありません。そういった方が商談相手にいらっしゃった場合は、「お前はよくわかっているな」と気に入ってもらえるように努力していました。


一般産業業界について解説しました。この業界は記述した通り、より技術側に寄った営業が必要になってきます。また、比較的規模の小さな案件が多いこともあり、巨大プロジェクトと違って、一人の担当者が計画~試運転まで一貫して担当する方が効率が良いことが多いです。

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