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水処理と工事

事件は会議室で起きてるんじゃない!現場で起きてるんだ!

某有名なドラマのセリフ。世代がばれますね。このセリフを受けて、「そうだ!現場は大事なんだ!」という意見や、「会議室で情報整理しているから現場が成り立つんだろうが!」という意見もありましたね。どちらも正しいと思います。この言葉の持つ意味と背景は、水処理と工事を解説する上で通じるものがあります。工事を行っている現場は、図面が具現化する場です。備えや図面に不備があれば現場は動きません。私は現場そのものを対応してきた経験はないのですが、「会議室側」の設計者やプロジェクトマネージャとして現場に関わってきました。その観点から解説します。

現場が上手く回るためには「備え」が重要です。ただ、図面や備えがしっかりしていれば現場でトラブルは起こらない、というわけではありません。備えがしっかりしていると、トラブルを収拾しやすくなる、という捉え方が適切かと思います。この備え+有能な段取りができる現場監督が組み合わさると、トラブルをトラブルと認識させないようなスムーズさで現場を管理していくことができます。この「備え」について、下記に記載します。

1.設備のコンセプトの明確化の備え

現場をする作業員も監督も、経験を持っています。現場という最後のチェック機構においては、彼らの経験と意見は不具合を未然に防ぐために重要です。このチェック機構を最大限に引き出すには設備のコンセプトの明確化が必要です。

コンセプトがブレてしまうことがあります。よくあるのが、複数のお客の要求が組み合わさった結果、要求を鵜呑みにする形でブレが生じてしまう場合です。例えば、なぜこの部分の配管はこの材質で、同じようなこちらの部分は違う材質なのか?なぜこの部分は執拗なほど検査を要求するのに、同じようなこちらの部分は不要なのか?という答えが、「あの時、あのお客が指定したから」というものです。こういう部分が多発してくると、例え工事仕様書に内容が明記されていても問題になり得てしまいす。例えば作業員が、「この現場の仕様、変わってるからな」と間違えに気づいてくれなくなったり、「なにか、よくわかんねーな、この現場」という気持ちから現場の作業効率が落ちたりしてします。こういった問題を抱えた現場に設計者として訪問すると、質問攻めにより、現場監督以下に吊し上げられてしまいます。このような事態にならないよう、お客様と設備のコンセプトについては十分にすり合わせておく必要があります。

2.工事スケジュールの確保への備え

現場工事のスケジュールは、設計や計画の図面仕事のスケジュールと比べると制約が多く、初期の段階からスケジュール調整をしておく必要があります。この機器は早めに入れなくてはならない、とか、機器の搬入にルート確保が必要だから、この時期はここは使えない、とかです。こういったことを工事の直前になって段取りしだすと、大抵は想定していなかった事前検討必要事項が追加で出てきてテンヤワンヤすることになります。工事スケジュールは初期の段階からケアをしていかなくてはなりません。また、工事の準備にむけてのスケジュールも見落としがちです。工場を建設する前なのですから、工事中に使う電気ガス水道はどうするのか?スタッフの待機場所はどうするのか?なども事前に決めておくようにします。直前になって、やはり発電機が必要でした!プレハブ事務所が必要だけど場所がない!となると結構大変です。

3.図面の管理への備え

図面のrev管理は工事のために確実にやりましょう。旧図で現場進む、なんという笑えないことは避けたいですね。こうなってしまうと、revをupした労力が無駄になるばかりか、現場ではどうやって事態を収拾するのかに多大な時間を浪費させられます。今はIT化でrev管理の方法も様々かと思いますので、しっかりと段取りとコミュニケーションをしていく必要があります。また、特に工事の発注準備を始める頃からのrevUPは十分慎重に行います。できれば避けたほうがいいですね。設計初期にバルブを一つ加えるのはお絵かきですみます。しかし、工事の見積もり依頼後ですと、バブル一つで作業段取りが代わって見積もりに大きく影響がでる可能性があったり、もし発注まで進んで工事が行われていれば、改造が必要になってきたりしてしまいます。

4.安全への備え

次に、経験は少ないですが工事そのものについてのお話です。工事においての必要事項は、「安全(safety)」を第一優先にしつつ、「品質(Quality)」を保ち、「納期(Delivery)」を満たす範囲で「コスト(Cost)」を最小限にコントロールしていきます。QCDSと呼ばれていているものです。優先順位があり、バランスが重要な事項です。この中で安全は何よりにも優先する、ということはよく聞きます。しかしながら、なんでも一辺倒に安全を考えて行動すればよいわけではありません。安全に関しては、「伝える方法」が重要です。例えば毎日のパトロールと安全レポートを徹底した結果、書類仕事に明け暮れることになり、作業員が、安全を内容でなく「手続き」のように考えてしまう、ということがありました。安全への要求の仕方はバランスが必要です。

5.トラブル対応への備え

現場でトラブルが起こってしまった!その時の対応にはいろいろなマニュアルが紹介されていると思います。そういったことを加味した上で、私が現場の人が心強い、と感じたマインドがあります。

それは当事者感です。その事態が、例え設計ミス、発注ミスから来ていたとしても、「設計ミスや発注ミスを直前でチェックしきれなかった自分にも責任がある」として対応に当たってくれる人です。もちろん、冷静に考えれば設計ミス、発注ミスは現場からコントロールしきれないことですので、その人の責任どうこうという話にはなりません。ただ、プロジェクトを一緒に進める者として、現場からこういったマインドを感じると本当に心強いです。

こういった形で「非を認めること」は、とくにトラブル対応初期の現場マネジメントに非常に重要と考えています。トラブル対応には多くの人が関わります。「なんでこんな余計な仕事を!」という気持ちのやり場が必要です。工事監督、プロジェクトマネージャは、例えそのトラブルに直接関係していなくても、マネジメントを任されている以上、トラブルが起こってしまったことに対して責任があり、それを表明するだけでも、士気を維持しやすくなります。

こういったことを踏まえ、もしも自分がトラブルの原因だったら、現場の士気も考えて、自分の振る舞いをどうするべきか?自身の保守でなく、現場を維持することを優先して考えれば、おのずと答えは出てきます。


以上、現場の経験は少ないですが、私の観点から工事についての解説でした。

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