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水処理と検査

検査とは、まさに縁の下の力持ちです。プロジェクトにおける、ヒト、納期、品質における、品質を守る重要な工程になります。水処理設備の検査の仕事は、自社の仕様書に沿い、構成する機器たちの検査要求内容を考えてメーカに提示したり、それに対して出てきた検査証明書をまとめたり、実際に機器メーカへ納入予定品の検査を立ち会ったり、水処理設備工事完了後にチェックしにいったり、と節目節目で品質をチェックしていくものになります。

1.検査とコスト

水処理と技術営業/巨大プロジェクトでご説明した通り、検査でプロジェクトのコストが大きく変わることがあります。従って検査は、設計や工事といった仕事に対して目立ちませんが、隠れた重要工程なのです。特別な検査は多くのコストが発生します。例えば、メーカからポンプを購入する時、ポンプの機械的仕様は一般的でも、検査要求項目に非常に特殊なものがあったとします。メーカは、自分たちのポンプの品質を安価に保つためにすでに十分な自主検査を行っており、一つのルーチンとして製造工程に組み込まれています。そこに特別な検査を要求されると、ルーチンとなっている製造工程から個別に該当ポンプを抜き出さなくてはなりません。しかも、個別に人による検査を実施した後、個別に人の手によって製造工程に戻すさなくてはなりません。さらに、特別検査の内容によっては、一度該当生産ラインを停止させなくてはならない場合もあります。これが電力向けや、公共機関向け、医製薬向けなど、特別な検査を要求されるとコストが高くなる所以です。

2.検査と過剰

設計や工事側からすると、顧客満足度を守るために納期優先としたいところ、品質を過度に守ろうとして無駄な細かい検査コストと時間が発生しているように見えてしまいがちです。そこに、ショートカットをしてしまう隙が発生します。検査は、重要と認識されながらも手を抜かれやすい工程です。昨今、「検査偽装」でニュースが賑わったことがありましたが、こんな背景があります。これにより、ご存知の通り、顧客信頼を失い、多大な利益を失ってしまう結果となってしまいます。

決まった検査内容を変更調整する、というのは非常に難しいものです。そもそも簡単に基準を変えられては品質は保てません。また、会社や国が基準としてその検査内容を発行するにあたっては、数々のトラブルの解析の結果と、それに対して多くの議論を重ねた結果になっています。例えその解析結果に過剰な安全評価の部分があったり、状況にぴったり則さなかったりしても、そういった状況を踏まえ、理解した上で検査項目に従うのが筋です。もし異議を唱えたいとしても、その調整業務が非常に難しくなることは想像できるかと思います。このように、検査内容は影響が大きい一方で調整に時間がかかるものなので、もしプロジェクトの初期または受注前に検査の内容を調整できるチャンスがあれば、優先して調整すべきです。

一方、検査の内容が一般的であっても、検査担当が検査内容を読み込んだ結果、検査者本人の解釈と裁量で過剰な検査になってしまう場合もあります。検査の内容を主張するのは、正論を振りかざしているのと同じで、反論が非常に難しいものがあります。こういったことが起こっているプロジェクトは、メンバーが疲弊していってしまいます。

厳しい検査基準を課すのは品質を保つのに大いに貢献していると思います。逆に、コスト競争力という観点からは大きな足かせとなっているのも事実です。この品質の調整(品質を保つだけでなく、バランスさせるクオリティコントロール)はプロジェクトマネジメントの中の重要なポイントの一つになります。

3.検査と品質レベル

例えばある製缶業者(鉄製の反応容器などを、図面に基づいて制作する業者)に、検査体制が優れているA社と、検査が適当なB社が、まったく同じ反応容器を同じコストで発注したとします。結果はご想像の通り、例え材料が同じであったとしても、A社は発注時に提示した検査要求や検査員の立ち合い検査を実行するため、反応容器は不具合が少なく綺麗な仕上がりになります。優れた検査体制によって、発注先業者の品質を向上させることができるのです。こういった検査による品質レベルの向上が、A社とB社の間の差別化につながり、会社の水処理設備の品質に大きく寄与します。

また、発注を受けた側からすると、発注側からの検査員の指導により品質が向上することで、自社の品質向上と販路開拓に寄与できることが期待されます。一方で、彼らへ要求する受注時の検査条件や立会検査があまりに過度であると、次回の発注時にコストを上乗せされたり、引き合いを辞退されたりしてしまう場合があります。水処理と協力会社でご紹介したように、検査の観点からもWin-Winとなるように調整していく必要があります。

4.検査について思うこと

ある企業さんの部品は、とても日系企業に納入できない品質だそうです。問題は歩留まりが悪いからとのこと。一方で、非日系企業とその部品で大きな取引をしています。その非日系企業は日系企業のライバルですが、売上は非日系の方が上です。その非日系企業は、歩留まりからくる不良品については、最終検査ではじいてしまうか、出荷して不具合あればすぐ交換する体制で進めているとのことでした。

この前、ニトリで中国産の家具を購入しました。組み立て式家具で、ネジが同梱されているのですが、ネジ山がつぶれたネジが一本ありました。「組み立てられないじゃないか!」と思ったら、ちゃんと各ネジの種類につき一つのスペアがついており、問題ないく組み立てることができました。

日本製の品質は最高です。一方、それがコストの部分で足かせになっている部分もあるのも事実です。こういった事例とITの発展という事情から、今の検査の常識について疑ってみるのもいいかな、と思いました。

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