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水処理と技術営業/製品販売編

水処理の分野の営業さんは、いわゆる技術営業というものに該当することになります。こちらの記事でご紹介した分野毎に、営業の仕方や仕事の仕方がどう違うのか?を経験と知見を基に解説してみました。

今回は製品販売編です。プロジェクトを通して、顧客の要求仕様に沿った一品ものとしての水処理設備の技術営業とは異なり、すでに狙った市場に合わせた仕様で出来上がっている製品を販売していく営業になります。ここでは、製品そのものがどうあるべきかについてでなく、製品が「プロジェクトのような手順を踏まずに商品が提供できることを目的」としていることを前提に、技術営業について記述します。

7.一般産業向け標準ユニット販売

一般産業編でご紹介した通り、この分野の用水・純水処理プラントは、お客様からの要求する条件が固定的です。そのため、その条件に合わせた仕様の製品を標準ユニットとして予め量産しておき、販売することが可能になります。これにより、どの標準ユニットラインナップがお客様の条件を満たすのかチェックして、該当する標準ユニットを並べて、水道水や工業用水を繋げて納入完了です!

とはなかなか上手くいかないものです。建売住宅のように、お客様が自分に合う条件のものを選んでいるにもかかわらず、結局はお客様から、状況に合わせてたカスタママイズのご要求が出てくることが多いです。3m3/hと5m3/hのラインナップの中、3.5m3/hをご所望の中で5m3/hの製品をお勧めするとご不満になったり。「こういう時に給水して」「こうなったら停止して」「この場合は・・・」など、どんどんと標準で備えている制御を超えるご要求をしていただいたり。技術営業は、なるべく標準オプションの範囲内で納得いただいて標準ユニットを改造しないで販売できるよう、お客様と条件を交渉していかなくてはなりません。

もしこの技術営業がプロジェクトの技術営業も兼ねているとしたら、考え方の切り替えが大事です。プロジェクトの技術営業は、お客様の要望を聞き、一品ものの設計仕様に落とし込んでいくのが基本です。一方、標準ユニット販売の場合は、お客様の要望を聞き、自社の標準ユニット仕様に合うようにお客様の要望を誘導していく営業が必要になります。お客様の要望を満たせなかったら、それはその製品がお客様とマッチしていなかったという諦めも必要になってきます。この段階でプロジェクト技術営業のマインドが出てくると大変です。プロジェクトのように細かい手順を踏まないことで手数を削減して裾野を広げようとしているのに、「お客様の要望に応えられないのに、なにが裾野を広げるだ!」となってしまいます。何かを始めるときに、目的と意義の理解、と共有が必要な典型です。

8.合併浄化槽販売

浄化槽とは、人からでる生活排水を河川に放流できるまで処理する装置です。ニッチな水処理業界ですが、その中でもさらにピンポイントでニッチな業界になります。一般産業編でご紹介した通り、こういった分野の対応策は二つです。

ニッチな水処理産業の中でも、例えばめっき業界限定、などさらにニッチに業界を限定して型にはめ込んで技術営業していくか。技術営業として技術知見にもう一歩踏み込んでいくか。

合併浄化槽の販売では、徹底的にこの分野に特化して浄化槽を販売している業者さんが多数いらっしゃいます。浄化槽についての社団法人もあります。圧倒的に前者の対応を講じている分野です。

浄化槽という分野を限定している分、そのノウハウとして様々なデータが蓄積されています。人ひとりの生活排水量は一日あたり245Lで、BOD濃度は191mg/Lで、、、というように、「何人でお住まいですか?」という質問に回答するだけで、ある程度の浄化槽の仕様が推測できるような知見が豊富にあります。それだけに知識の奥が深い分野です。お風呂はあるの?キッチンの広さは?といった場合でも、経験豊富な技術営業者が回答してくれます。正直、私はそこまで詳しくなく、こういった案件が来た時には「餅は餅屋」ということで、業者さんにお願いしていました。

余談ですが、日本の浄化槽で扱っている数値は日本に特化していて、外国にそのまま適用すると不具合が起こりやすいです。日本はお風呂という文化があるので、水の使用量が比較的多いことに起因します。また、食べ物も日本と外国では異なるため、生活排水の質にも変化があります。東南アジアはなぜか窒素負荷が高い!とかです。標準化には前提条件があります。日本での標準化の前提条件を把握していないと外国でそのまま適用することはできません。その標準、そのままその環境に適用して大丈夫ですか?という問いかけが重要です。

こういった、水処理の中でもニッチだけども一つの業界として成立している分野は浄化槽だけでなく、井戸掘削冷却塔などもあります。プラントエンジニアリング側からすると、この分野は大切な協力会社で、共にプロジェクトを遂行していくことになります。

9.卓上浄水器販売

この業界は、BtoBでありながら、BtoCに近くなってきます。私としてもあまり経験がある分野ではないので、見聞きしたことを中心に記述します。

ユーザーさんは大学の研究所や企業の実験室、病院などになります。例えば水道水直結型の純水製造装置などがあります。プロジェクトの水処理設備のように個々の顧客のニーズに個別で答えることは難しく、市場のニーズに対応した製品を量産して提供することになります。

プラントエンジニアリングの考え方を応用するにしても、個々のシーンに対して何が本当に大切なのかを考えないと、この業界との乖離が大きくて適用できないと思います。ユーザーインターフェイス(UI)の考え方、メンテナンスサービスの考え方、など、顧客視点で考える場合の「顧客」があまりにも異なります。水処理設備のUIといえば、運転員によるタッチパネルなどの操作や、配管についているバルブの操作性です。研究者などが使う卓上浄水器とは大きな違いがあります。根本的な技術は同じではあるのですが、こういった事情が、いわゆる水処理エンジニアリング会社がこの分野にあまり進出していない原因かと思います。


以上、少し記述するには経験が足りない部分はありますが、この分野の解説でした。

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