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水処理と予算管理

予算管理で重要なことはなんでしょうか。予算管理とは全体の現状を把握して未来を予測する、ということです。現状だけを把握して、管理してます!というのは、管理ではなくて単なる現状リポートです。現状を把握せずに最終仕上がり予測を述べているのは、夢を語っているだけです。

ある会社において、プロジェクト予算について現状把握の仕組みだけは整っていることは多いです。しかしながら、それが未来を予測するツールとして利用できる整え方になっていないことが多く、予算管理の仕組み構築の妨げになります。水処理においては、プロジェクト単位で予算を管理することになりますが、この点を考慮して改善し進めていくことが重要です。言ってみれば、プロジェクト単位で管理会計を導入していくようなものになります。水処理における予算管理について下記に記述します。

1.実行予算をつくる

営業が原価を元にプロジェクトを受注します。この原価が予算の源泉になります。一般的に、プロジェクトを受注するときの原価は以下の点において精度がありません。

①受注前のベンダーへの見積もり依頼への回答は、高い見積もりを提示している場合が多い。

②一つ一つのプロジェクトについて原価精査をすると時間がかかりすぎてしまい非現実的な場合がある。

ベンダーにとっても、注文をもらえるか分からないような、発注者が受注もしていない案件に関しては、上司の許可を得てまで特別価格なんて提示できないので①の状況が生まれます。もちろん受注前の時点で、そういった状況を打破するためにじっくり交渉していくことは可能です。ですが、主要部品に絞ったとしても相当数はあります。さらに、受注前なので該当プロジェクトだけに注力すればいいわけではないのです。他の受注前プロジェクトもあります。「水処理と購買」で紹介したような手法は、簡単にはとれません。

こういった状況を加味し、受注した時点で原価を再度精査して予算を立てていきます。これを実行予算の策定といいます。直前でないと原価がつかみにくいプロジェクト関連でよく使われる言葉です。

でもちょっと待ってください。「原価を精査する」のが実行予算であって、その精査が「業者の最終見積もりをつかうこと」とすると、購買の業務が無くなってしまいます。そもそも、そんなことをしていたら時間がいくらあっても足りません。受注後、プロジェクトは実行予算と共にすぐに始動させなくてはならないのです。従って、一般的な実行予算の定義ですと業者の最終見積もりを予算として入れ込むべきなのでしょうが、現実的ではありません。私は完全に要求することは不要と考えています。

そういった矛盾が生み出す例を挙げましょう。予算も策定していないのにプロジェクトを始動させて、あるモノの発注承認を求められたことがあります。理由を聞くと、「〇〇の部分の業者の見積もりを受領していないからプロジェクト予算発行できない。けどこれは急いでいて業者からも見積もり取得していて最終金額決定できているから承認してくれ」でした。却下です。全体の現状を把握して未来を予測する、という予算管理の原則に反しているのが理由です。

実行予算はプロジェクトの全体を把握する基盤です。プロジェクトのスタート時には策定する必要があります。つまり、実行予算の策定は時間との戦いです。受注時の情報をベースに、速やかに実行予算を立てることが重要です。その際、たとえ見積もり取得できていなくとも、精度は現時点で分かりうる情報をベースに、最小のマンパワーで積算できる範囲にてコントロールしましょう。購入品ならば、現時点での発注量に応じて市場価格の情報を調査して入れ込む、などして業者との交渉時間を省きます。工事積算では、詳細積算に耐えうる図面が仕上がるのに時間がかかるので、受注前の図面をベースとしてそれなりの精度で見積もり取得もしくは予測を行いましょう。実行予算化のあとは購買部門に託せばよいのです。実行予算不成立のままプロジェクトが進むことは、全体把握に大きく影響するために、精度のために時間を犠牲にしすぎるのはよくありません。予算は変動するものです。予算管理は、変動を抑える管理でなく、変動を把握した上で予測し、予算を抑える管理をすることです。

2.予算を管理する

予算は変動するものなので予測して管理します。予算に対して現状は発注状況をモニタリングしていきます。その消化状況に応じて、最終的にどのくらいの仕上がりになりそうか?を予測していきます。代表的な手法はアーンド・バリュー・マネジメントですね。ただ、手法よりも原理原則の方が重要です。どのくらいの予算を現在使っていますか?どのくらいの予算をこれから使いそうですか?この二つの問をしっかりと反映できる予算管理を行います。

「報告します。工事の予算が100なのですが、図面ミスがあって発注額に影響がでそうです。でも私なら調整できるので予算に入れてみせます。」

報告してくれるのはありがたいです。しかしながら、この部下が予算内に入れる可能性は信じてはいますが、現時点では調整できるか不透明です。ですので、この場合は仕上がり予測にミスの影響を想定で反映させるように指導しています。想定よりも低く収まりそうな見込みがでてきたら、その時点でその仕上がり予測を逐次変更させるのです。1st:予算の管理は、全体の現状を把握して未来を予測し、2nd:それをベースに予算内にするようコントロールすることです。この部下は1stの把握をすっ飛ばして2ndに集中して夢を語ってしまってますね。予算管理における現状把握の大切さについて指導する必要があります。

3.プロジェクトの労務費と管理会計

プロジェクトにおいて、労務費が費用として参入されている場合があります。この場合、予算管理にプロジェクト労務費が加わることがあります。これは、税務処理上、プロジェクトにかかった人件費を労務費として区別しなくてはならないために導入されていることがほとんどです。また別の観点では、各プロジェクトにどの程度マンパワーがかかっているのか管理する名目もあります。

ただ、私はこの労務費をプロジェクトの予算管理に参入させることは反対です。この議論は、財務会計と管理会計を区別して考えて議論ができるかできないかで結果が変わると思います。

プロジェクトの予算管理に労務費を入れると、「プロジェクトが赤字だから労務費がつけられない」などという理由でブラックな環境になってしまうリスクが高いです。プロジェクト毎に本当にどれだけ労務費がかかっていたのかを把握する妨げにさえなり得ます。

労務費は人件費として、会社全体で管理会計として管理すべきです。人件費の管理の中で、各プロジェクトにかかっている労務費を把握する仕組みです。財務会計の観点からは「は?」という、わかってない烙印を押されてしまいそうですが、これが一番効果的かと思います。

会社によっては、プロジェクトに労務費を参入させることが多いかと思います。そんな時は、報告上はしっかりと従った上で、人件費という全体を見渡したうえでのプロジェクト労務費の視点を常に持ち、捉えておく必要があります。

プロジェクトの予算管理は、会社経営管理に通じるものがあると感じる日々です。

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