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イヤホンで音楽聴きながら散歩してるときの裏番組(イヤホンの外側の音)を録音してみた

お姉ちゃん「今日本中でこれ(紅白歌合戦)見てるんだろうねえ」
まる子「うん」
おばあちゃん「たいしたもんだねえ」
まる子「ちょっと裏番組見てみよっと」
お父さん「こら!余計なことするんじゃない!」
お母さん「まる子!」
お姉ちゃん「まる子、戻しなさいよ!」
まる子「ちぇっ」
ナレーション「まるちゃんは、超高視聴率の裏なんて一体なにをやってるのか不思議だったのだ」
—アニメ版ちびまる子ちゃん第1期の第52話「年越しまる子ちゃん」より

はじめに

♨:イヤホンで音楽を聴いているときの、裏番組を聴いてみたいんですよ。
👼:なるほど、一から説明してもらえますか?
♨:イヤホンって知ってますか?
👼:そこまで戻らなくても大丈夫です。
♨:イヤホンをつけて音楽を聴いているときって楽しいですよね。
👼:そうですね。
♨:そして、音楽しか聴こえなくなりますよね。
👼:最近はノイズキャンセリングの機能も充実してきてかなり音楽だけに集中できるようになりましたよね。
♨:気になるじゃないですか...!裏番組(イヤホンの外側の音)が...!!!!!!!
👼:え?
♨:というわけで今回の企画はこれじゃ!!!「イヤホンで音楽聴きながら散歩してるときの裏番組(イヤホンの外側の音)を録音してみた」!!!!
👼:なんですか?
♨:ついてきて~

使用するもの

♨:では早速今回の企画で使用する機材などについて説明していきたいと思います。ここでどのような道具を選び取るかは、収録される裏番組の音に少なからぬ影響を与えるのでとても大事なところです。
👼:よろしくお願いします。

スマホ(iPhone11)

♨:まずはスマホ、iPhone11です。これはApple社の製品で、AppleMusicという音楽を聴くアプリを使用するために必要な道具です。
👼:画面にひびが入ってるし、気泡も入りまくってますね...
♨:買い替えたいですね。
👼:好きにしてください。

イヤホン(AirPods Pro)

♨:続いてイヤホンですが、今回採用したのはApple社AirPods Proという製品です。
👼:またAppleですか。写真をよく見るとなんか中央に極端に小さい文字で「Designed by Apple in California  Assembled in China」と書いてありますね。
♨:この道具を選んだ理由は2つあって、まず1つ目は優れたノイズキャンセリング機能があること。これによって音楽を聴いてるときに裏番組を完全にシャットアウトすることができます。そして2つ目の理由は、ワイヤレスであること。これによって、ケーブルつきのイヤホンで歩いているとき特有のイヤホンケーブルが服にこすれてガサガサ音がする(タッチノイズ)こともありません。

レコーダー(ZOOM H1n+風防/ウインドスクリーン)

♨:続いては、ZOOMというメーカーの製品で、XYステレオマイク搭載のハンディレコーダー、H1nです。これで裏番組を録音します。これは軽くて小さくて気軽に使えるので旅行の持ち物に入れることも多いです。
👼:旅行先で急にフィールド・レコーディングしたくなるときってありますもんね。なんかマイクのところにモフモフのスポンジがついてますが、これは?
♨:これは風防といって、録音に風切り音が混入することを低減させる効果があります。風防は素材によって種類が分けられますが、これはスポンジ型なのでウインドスクリーンと呼ばれるものですね。
👼:風切り音をわざわざ低減させるねらいはなんですか?
♨:うるさくて他の音が全部埋もれかねないので。もちろん、わざと風防を使わない選択もありですが、今回は風を録音しよう!のコーナーではないので、積極的に使っていこうと思います。そして、もちろん風防が低減させるのは風だけじゃないので、録音される全ての音にも影響があるでしょうね。
👼:なるほど。待てよ、ということは、今回風防の効果によって裏番組に収録されない風の音は、裏番組の裏番組ということに...?
♨:たしかに...

靴(RANRA x Salomon スニーカー)

♨:最近買ったお気に入りの靴です。かっこいいですよね。この上に被さってるレザーは外すこともできて、中身はSalomonのスニーカーになっています。なんで実はめっちゃ歩きやすいんですよね。これで散歩もルンルンですよ。
👼:へえ~(ただ買った靴を自慢したかっただけなのでは...)

散歩のシチュエーション

♨:いつどこで散歩するかは録音される裏番組の収録音に直結するのでとても大事な要素です。
👼:なるほど。
♨:というわけで、まず季節ですが、これは原稿の〆切の都合により「夏の終わり」です。
👼:今年の夏、全然終わんなくないですか?
♨:ほんとそれ。最悪ですね。散歩は涼しければ涼しいほど楽しいので(※人によります)。とはいえ〆切は守らないといけないので、ギリギリまで待っていちばん涼しそうな日の夜中に散歩に出かけたいと思います。そして天候ですが、「晴れ」です。雨だと濡れちゃってテンションが下がるからです。雨の日に長靴で散歩して水たまりをバチャバチャやるのも一興ではありますが、今回は不採用とさせていただきます。
👼:それで、どこらへんを歩くんですか?
♨:まあ、ふつうにいつも通り家の近所を歩こうと思っています。ぼくの家の周りは基本的にアスファルトで舗装されているので土や草を踏み歩くことは公園に行かない限りなさそうです。また、夜は人通りもかなり少ないので人の声が収録されることもほぼないでしょう。

散歩中に聴くもの

♨:では散歩中に聴く音楽ですが、OGRE YOU ASSHOLE『自然とコンピューター』にしようと思います。

👼:これすごくいいですよね...なんなんでしょうね...この繰り返される催眠的な魔力は...
♨:盆踊りってあるじゃないですか。ぼくはなんかそんなイメージですね。なんらかの引力に巻き込まれて繰り返し同じ踊りを踊らされているうちに、いつの間にか身体ごとつくり変えられていくような.....そして、盆踊りといえば夜。そして歩行。つまり散歩にはもってこいの音楽なのです...!
👼:なるほど。
♨:というわけで、今回は本作を聴きながら散歩をし、最後の曲「たしかにそこに」と同時に録音を開始、この曲のはじまりから終わりまでをレコーダーに収録しようと思います。

いざ、散歩へ

♨:さて、道具も揃ったところで、とある日の深夜に満を持して散歩に出掛けます。ここから読んでいただくのは僕が散歩をしながら実際にスマホのメモアプリに書き連ねた文章を曲ごとに区切って貼りつけたものです。また、最近話題のアプリ、BeRealでいくつか写真も撮ったのでそれもお見せします。というわけで、レッツゴー!


1.偶然生まれた

風が強い。電灯の明るさが嫌だ、もっと暗いところに行きたい。車や家があるのに人の気配がしないのがゾッとしてよい。なんて散歩するのにちょうどいいBPMなんだろう。知らない場所に行きたい。


2.影を追う

影を追う最高すぎもう踊ろうかな。暗い中で見えた今だ〜♪近所の川で釣りをしてる人がいてお互いビクッとしていた。この街に人間はめちゃくちゃいるはずなのにこんなに静まり返っているのゾクゾクする。とりあえず月の方角に向かって歩いて行くことにした。


3.お前の場所

どつどつどつどつどつどつ。すげーへんな気分になってくる曲だぜーーーー。家のガレージの暗闇を見つめてみる。急に怖くなってきた。いつもと違う。


4.君よりも君らしい

なぜ踊りたくなるのだろう。不思議だ。なにに誘われているのだろう、打撃音が規則的に鳴ってると踊りたくなるのはなんでだろう。この曲は踊りたくなる。急に視界の隅に光が映ってびっくりする。自分のスマホの明かりだった。寺や神社がいっぱいある。奥の暗闇を見つめてみる。この赤信号を見ているのは世界に自分だけなんだ。シンセサイザーの音きもちよ


5.快適な麻痺状態

変な音


6.ただの好奇心

涼しくてきもちいーーー。ブランコが揺れてないか気になってしまう。景色ってこんなにも気配に満ち溢れてたんだ。いつ


7.熱中症

あーーーいい。歩行はダンスだ。誰もいないのにテレビがついてる。誰もいない街風が吹いてる〜〜ーーーサントラすぎる、今の俺の。コンビニびっくりするほど人いる。車が脇を通り過ぎていく、すごいスピードで。ドライブ中にこのアルバム流したらどんなことになるんだろう。


8.家の外(alternative ver.)

後ろで声が聞こえるので振り返った。二人組が距離をとって同じ道を歩いている。いつの間にか月が消えてて進む道がわからなくなってしまった。うーーーん素晴らしい曲。


9.自然とコンピューター

緊張感だけがある。車や、大きい木や、自分の影やスマホの光に怯える。そのスリルが心地いい。リバーブのかかりがよすぎる。引き込まれる。


10.たしかにそこに

なんかホッとしてる。よくわからない。多分曲の影響だろう。今まで曲に緊張させられてたんだ。びっくりするほどリラックスしてる、今。地元の街だ。


帰ろ いやここどこだ?????


散歩の感想と裏番組の試聴

♨:ただいま帰ってまいりました。
👼:おつかれさまでした。どうでした?
♨:深夜ということもあって街がとても静かだったのと、異常な緊張感があったのをよく覚えてます。暗いところがとにかく気になったり、動かない家や車や木々から勝手によくない気配を感じ取って怯えたりしてましたね。子どものころ親に連れられて歩いた夜道ってこんなふうに感じてたなっていうのを思い出しました。
👼:なんでそんなことになったんですか?
♨:やっぱ曲の雰囲気の影響が大きかったと思います。音楽ってここまで見える景色を変えてしまうんだって恐ろしくなりましたね。
👼:なるほど、では収録した裏番組のほうを聞いていきますか。
♨:よろしくお願いします。
👼:では再生してみます。読者のみなさんも下記リンクから聞いてみてください。

♨:……。
👼:……。
♨:うるさっっっ
👼:騒がしいですね。
♨:つーか暴走族いたんだ。全く気づかなかった。なにが「人の気配がしない」だよ。近くに暴走してる人がいるのに。
👼:暴走族もそうですが、やっぱ車の走行音って大きいですね。
♨:あと、途中からしっかり鼻息も録音されてますね。やっぱ長々と歩いただけあってすげー鼻息荒く感じるな。
👼:こういう鼻息の音ってなぜか不思議と普段は意識できないですよね。録音して聞いてみることではじめて認識できるというか。
♨:そうそう。だから録音して再生された音って、実際に自分の耳で聞いた世界ともまた別の世界なんですよね。

おわりに—散歩中に感じていた街の姿はなんだったのか

👼:では、ひととおり裏番組を聞いてみたところで、あらためて表番組のほうに戻って考えてみたいと思うのですが、結局♨さんが散歩中に感じとっていた景色ってなんだったんでしょう?
♨:もちろん音楽の雰囲気にのせられてしまった部分は多々あるにせよ、あのとき見ていた世界もまた街の景色の別の一面といいますか。そう言いたい気持ちがあります。逆にイヤホンを外して散歩をすれば「街の本来の姿」を見られるのかといったら、それもそれで間違ってる気がする。だって普段生活していて聞こえてくる音って無意識に選択された一部の音だけじゃないですか。自分の鼻息の音ですら認識することないわけだし。
👼:なるほど。そう考えると、みんな各々がちがう音を聞いて、それぞれ別の世界が見えているといっても過言じゃない気がしてきますね。そして、イヤホンで音楽を聴いたりフィールド・レコーディングをすることは、そうして見える世界のチャンネルを変える行為でもあるんだ。
♨:面白いな。また別の音楽を聴きながら散歩してみたり、別の機械でフィールド・レコーディングをしてみたくなりました。
👼:では、最後にOGRE YOU ASSHOLE『自然とコンピューター』から「たしかにそこに」の歌詞を引用して終わりたいと思います。みなさん、最後までお読みいただきありがとうございました。



ドクドクとよく聞こえる
姿はよく見えないが
たしかにそこにいる

弾け出る音 刺さる光
すべてが剥き出したまま
そんな世界

名前は付けなかった
掴めそうにもないから
モゾモゾと動く
ドクドクしている
たった今も
たしかにそこに

ただいるだけで
私すらないまま
ドクドクと動く
わからずに叫けぶ
たった今も
たしかにそこに



参考文献

柳沢英輔. 『フィールド・レコーディング入門―響きのなかで世界と出会う』. 東京: フィルムアート社, 2016.
OGRE YOU ASSHOLE, 郡司ペギオ幸夫. 「人工知能と対極の創造性を司る『天然知能』の話」. Niew Media, 2023年5月24日. https://niewmedia.com/specials/052400/ (アクセス日: 2024年9月28日).


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