見出し画像

味覚シンセサイザーで音楽を味わったら革命的だった

WaterWalkをご覧の皆さん、はじめまして。この度加入しました小宮まりんと申します。

普段は皆さんと同じく音楽を聴いたり、ネットでおもしろ記事を読んだりして、のんびりとハイスクールライフを送っています。しかも親元をちょっと離れて、おばあちゃんの管理するマンションの角部屋で悠々自適の一人部屋生活です。まさに平々凡々。I'm a ボンボン。今の暮らしが最&高。

……しかし、この平凡ながら充実した高級食パンのような生活に、ちょくちょくイカの塩辛をのせるがごとき突飛な味付けをしてくる隣人がいるのもまた事実なのです。

その隣人

自称・天才発明家、鍬崎玲さんです。天才を自称していますが、実際はひたすら生活力のないお騒がせポンコツ野郎です。

私は鍬崎さんに都合の良い時だけ助手呼ばわりされていまして、あるときは人体複製装置の試験台にされて4人になったり、またあるときは平面化ライトを照射されてペラペラになったり、えらい目に遭わされてきました(助手というより完全に実験体だな)。この話は今度ひまな時に書くかもしれません。
ただ決して仲が悪いわけではなく、たまにごはんを作ってあげたり、アイスをおごってもらったり、一緒に散歩に出かけたりと、歳の離れた姉妹のような感じでわりと親しくしています。

前置きが長くなりましたが、今回の記事のテーマはこちら!

鍬崎さんの発明品で、「音楽」を「味」に変換して遊んでみようという企画です。

この記事に詳しいですが「味覚シンセサイザー」とは味を合成する装置で、実用化こそされていないものの既に発明されているアイテムです。そして、鍬崎さんが作ったのがコレ。

@味覚シンセの画像を入れる@

鍬崎さんはコレをくれた時、

こいつは周囲に流れている音楽の曲調、音色、歌詞なんかを分析して、それを反映した味を合成してくれる画期的なガジェットだ。聴覚以外に音楽を楽しむ方法があってもいいんじゃないかと思って作ったんだが、今のところ持て余していてな……あげるから有効活用してくれ。
小宮くんは音楽よく聞くんだろ?使った感想をレポートしてくれたらいちごミルクぐらい奢ってあげようじゃないか。まあ、そんじょそこらの味覚シンセサイザーとは格が違うぞ。舐めてると痛い目見るから気をつけろよ!

などと言っていました。痛覚までは感じたくないな
一見するとサイバーパンクすぎる駄菓子屋さんが売っている銀色のペロペロキャンディですが、棒の部分をよく見てください。

@棒のアップ@

小さくて黒いものがついているのがわかると思います。これがコンデンサーマイクらしいです。AUX入力などはついていないので、なるべくここに音源を近づけて再生した方が良さそうです。

さて、味覚シンセの説明も済んだので早速レポートしていきましょう。
一曲目はこちら!

「ラーメンたべたい」 矢野顕子

言わずと知れた食べ物ソングの名曲、矢野顕子の「ラーメンたべたい」。矢野さんは山下達郎から「歌詞に最も食べ物がよく出てくる作詞家」と言われたらしいですね。これを聴くとラーメンが食べたくなります。
再生してみると、だいぶあっさりした味。醤油由来と思われる塩味(えんみ)に旨味が乗ってきて、その上にわずかな辛味を感じます。

これは多分、歌詞に出てくる「山盛りのねぎとにんにく」に起因するものだと思います。
……ただ、言ってしまうと実際のラーメンの味には及ばないです。しかも味覚シンセサイザーという機械で味わっている以上「麺をすする動作」が発生しないので、頭も微妙に混乱します。どうやら味覚シンセに合う曲、合わない曲があるみたいです。
気を取り直して次の曲を味わってみます!

「Pizza VS Hamburger」 キリンジ

「すする」がダメなら「噛む」はどうでしょう
「ハンバーガーかピザ ハンバーガーかピザ」というリフレインがすごく耳に残る曲。これを聴くとやたらピザとハンバーガーが食べたくなったり、ハンバーガーちゃん絵日記が見たくなったりします。果たして前者の欲求は味覚シンセで手軽に満たせるようになるのか……!?

……結論から言うと「噛む」もダメでした
ハンバーガーの肉とチーズの塩味と旨味、それとは質感の異なる、ピザのトマトケチャップっぽい塩味と旨味、両者のバランスは結構良いんです。口の中に物理的な温かみも感じます。しかし、バンズとピザ生地の小麦っぽい風味がまるでなく、トータルでは微妙にぼけた印象になってしまっています。残念……!
あと、「火花を散らす ピザカッターとターナー」のところで一瞬鉄の味がしました
2曲連続でイマイチとなると故障していないか不安なので、念のため鍬崎さんに訊いてみます。以下、やりとりの書き起こしです。

私「……というわけなんですけど」
鍬崎「うーん、まあ仕方ないな」
私「仕方ない?なんでですか?」
鍬「天才の私が作ってるとはいえ、だ。コレはあくまで『味の合成』を目的としたガジェットなんだよ。だから助手の言うとおり食感までは表現できないし、あとは香りを表現する機能も省いてある」
私「香り!確かに、嗅覚は食事でも重要な感覚だって聞いたことがあります」
鍬「香りまでカバーしようとすると大変でな……匂い物質って大体数十万種類はあるらしいんだよ。生物化学は私の専門じゃあないし、思いつきで作っただけだからちょっと手を回す気になれなかったんだ」
私「なるほど。じゃあ、どんな音楽を味わってみると良いですか?」
鍬「食べ物がテーマの曲だと、味を本物と比較してしまうだろ。だからこう……食品となるべくかけ離れた、人工的な?インダストリアルな?音楽はどうかな。具体的なアドバイスができなくて申し訳ない」
私「いえいえ、ありがとうございます」
鍬「結果報告待ってるぞ」

鍬崎さんのアドバイスを受け、3曲目にチョイスしたのはこれ!

「Desolation」 SPK

SPKのセカンドアルバム「Leichenschrei」より「Desolation」です!
有名どころばかりで申し訳ありません。メンバーの一人が精神病院の看護師、一人がその患者というオーストラリアのインダストリアルノイズバンドはどんな"狂気"を舌の上で見せてくれるのでしょうか。



……すさまじいです。口の中を切ったんじゃないかと錯覚するぐらい、鉄の味が波打っています。多分合成される味に加えて、味覚シンセそのものの味が強調されているんだと思います。しかもなぜか辛い。より正確に言うと、痛いです。カプサイシンでも入ってるんでしょうか。まさか鍬崎さんの「舐めてると痛い目見るぞ」という言葉が本当だとは思いませんでした。
「鉄男」のサントラとか聴いたら口の中どうなっちゃうんでしょうね。怖いから絶対やらないけど……

最後は口直しに(なることを願って)こちらの1曲!

「Listen to Peyote」 Michael Prime

フィールド・レコーディング入門」という本で紹介されていて知った作品です。「メキシコのサボテン・ペヨーテから電位差を取り出し、増幅した音を現地の環境音と混ぜ合わせる」というなんとも手の込んだ方法で作られているらしいです。サボテンを食べたことはありませんが味わってみましょう。


かなり面白いです。長い曲だからか、ゆるやかに味が変化していきます。
まずミントを口に含んだような冷たさを感じます。そして”サボテンの音”が入ってくると、それに合わせて舌のあちこちで点滅するように甘苦酸っぱい味がします。起きていることは複雑ですが不快な感じはしません。わかりやすく言うとレベル100の「わたパチ」を食べたみたいな印象です。
4分30秒あたりから徐々に低音が増えてくるのですが、この低音がだんだん増えるにつれて甘みも増えていきます。同時に、本体が暖かくなってきます。9分ごろまで上昇を続けて、それを境にだんだん冷えていき、15分を過ぎる頃には水道水ぐらいの温度になります。ここで味の点滅も復活。
最終的に冷たさも点滅もフェードアウトして曲が終了……と、非常にアミューズメント性の高い一曲でした!鍬崎さんは多分こういうことがしたかったんじゃないかな?

まとめ
そんなわけで今回は「味覚シンセサイザーを使って音楽を味わってみる」という実験的な取り組みをお届けしました!
取り上げたのは有名な曲ばかりだったので、知らない音楽との出会いを求めていたコアな音楽ファンの方には申し訳ない内容でしたが、いつものWater Walkの箸休めのような立ち位置に落ち着けていれば幸いです。
さすがに「みなさんもぜひ試してください」で〆ることはできませんが、もし私と同じく「隣人が自称発明家」という方がいたら、その隣人に似たようなものを作ってもらうといいかもしれません。ぜひ使った感想を聞かせてください!(あと境遇についての愚痴とかも)

Water Walk、今週は小宮まりんがお届けしました。それでは来週の更新もお楽しみに!


【お詫び】
この記事、「一度文章をガッと書く→必要な画像を用意する」という方法で書いてきたのですが、文章を書き終えて写真を撮ろうとしたところ味覚シンセサイザーが爆発しました。
よって味覚シンセの画像が載せられなくなってしまいました。本当にすいません。
今からこの機械の安全性について鍬崎さんを問い詰めてこようと思います!

それではまた!

(筆者ツイッターアカウントはこちら)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?