【ライブレポート連載】自然の中で起きている美しい現象すべて vol.2 ①
昨年夏に発足し、ライブペイント×音楽という新しい形でシーンにじわじわと影響力を及ぼしつつあるイベント “しぜすべ” こと、「自然の中で起きている美しい現象すべて」。2023年1月15日(日)に開催されたvol.2の模様を、複数人のライターにより三週にわたって連載していきます。
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第二回:pencil、Omodaka、荒井優作 + 特別鼎談
第三回:肋骨、諭吉佳作/men、yuigot
写真:荻原楽太郎
0. “しぜすべ” とは
共に作家として活動する米澤柊と駒澤零が2022年8月に発足したイベント。
音楽の全アクトでライブペイント or VJのパフォーマンスがあることが特徴。それまでライブハウスやクラブイベントで飛び道具的に使われることはあっても、メインコンテンツではなかった絵やVJと音楽の親和性を考える実験的な催しとなった。会場は両回ともに渋谷・Circus Tokyoで開催されている。
1. OA: KAOMOZI Special Stage (Yoshino Yoshikawa×布施琳太郎×駒澤零×米澤柊 feat.きあと+oriko)
執筆:栄免建設
様々なイベントが行われているCircus Tokyoだが、今日は普段とは違う空気が漂っていた。所狭しとステージを埋め尽くした機材の数々が、これから始まるイベントを期待させる。
会場に流れていたDJ Paypalの楽曲がフェードアウトすると、急遽オープニングアクトとして発表された、レーベル”KAOMOZI”のスペシャルステージが始まった。
Yoshino Yoshikawa、布施琳太郎、駒澤零、米澤柊の異色メンバーで制作された「あの冬で複製された夢のコピー」のイントロが流れはじめると、アートワークで描かれた少女のような装いの駒澤零、米澤柊がステージに立つ。
一つの演者に一人のライブペイントという試みはしぜすべの大きな特徴の一つだが、彼女たちは今回ヴォーカリストとしても、そして勿論ライブペイントでもステージに立つ。
多くの小物、歌詞、映像がリンクしたこのアクトは、イベントの始まりでありながら、このイベント自体を体現したステージにも思えた。
“あの冬”の歌詞を手がけた布施琳太郎自身によるVJと、以降の楽曲でのorikoによる透明感あるVJが、シームレスに空気感を作る。はじめは様子を伺っていた観客たちも徐々にフロアの前へ、前へと移動していく。
続けて、駒澤零と場内装飾のかわむらちなによるユニット“nemuigirl” の楽曲「pygmalion」のカヴァーを二人で歌い上げると、ステージにはゲストボーカルとしてきあとが登場。
“くいしんぼあかちゃん”として歌唱しリリースされている作曲Tomggg、作詞Yoshino Yoshikawaの楽曲「ぷかぷかワンダーランド」、Yoshino Yoshikawa「Peckish Smash!」を順番に歌い上げ、フロアを沸かせた。
そして最後は駒澤零と米澤柊の2人のみで、もう一つの“KAOMOZI” レーベルコラボリリース曲「Secret of Magic」を歌い上げると、ステージは瞬く間に終わりを迎えた。
先ほどゲストボーカル “くいしんぼあかちゃん” として歌唱していた彼女は、“きあと“ として再びステージに立つ。
2. tamanaramen + きあと
執筆:木村和希
徐々に熱量のもった光に包まれて
tamanaramenのDJ、きあとのライブペインティングからなるパフォーマンスを見た。
初めはアンビエントからテクノなど様々なジャンルを横断しつつも、質感などは統一感のある程よい緊張感の中で、ゆっくりと着実にフロアを盛り上げていく。
姉妹でDJを行うことは何をどう共有し、お互いの感覚の中でひしめき合っているのだろうか。
淡々と流れ続けるダンスミュージックのなかに芯のある熱を感じた。
また、きあととtamanaramenという珍しい組み合わせでもありつつ、きあとの明るくも複雑な色彩のイラストとのコラボは普段とは違う一面が見れ、興味深かった。
見終わったあとは少しお腹が空いてきたので、フロアの上でKATが出しているフードのルーローハンを食べに向かった。
3. アナルテクノ + 駒澤零
執筆:佐藤あんこ
「こういうクラブのイベントに出るのが初めてで、鳴りが良くて、リハーサルのときからテンションあがりました」とMCで語っていたアナルテクノ。
イベント開催前の”しぜすべ2 参加アーティスト紹介”にて、駒澤零がアナルテクノについて「バンドルーツと宅録の絶妙な距離感で発生するローファイ感」と書いていたが、これは言い得て妙だろう。
実際、こういった非クラブ的な感覚をちゃんぽんできることは、”しぜすべ”が単なるクラブイベントにとどまらない理由の1つである。
アナルテクノは作詞担当の亜蘭、作曲担当の厳鬼、編曲担当の自動車からなる3人組。打ち込みのオケと自動車の演奏の上に、亜蘭と厳鬼の味のあるボーカルが乗る。
冒頭3曲、2020年にリリースしたアルバム「Good Bye, ALAN」と同じ曲順で、畳み掛けていく。
3人ともキャラクターが立っていて良いのだが、個人的に印象的だったのは、ステージ上での亜蘭の鋭い眼光である。
漫画家「亜蘭トーチカ」としても活動する彼の、そのギラギラとした何かをしでかそうとする目つきは、捉え方によっては「のほほん」とも取れるトラック・楽曲に、ヒリヒリとした何かを添加していたように思う。
中盤も厳鬼が華麗なスタイロフォン裁き?を魅せる「だいじょうぶマイフレンド」、ホール&オーツの名曲を日本語カバーした「プライベートアイズ」など、見どころが続く。
後半の「Thank You & Goodbye」からは女性ボーカル「明間(あけま)」を迎え、最後は神奈川・日吉の今はなき喫茶レストランを歌った「YOU&I」で大団円となった。
一方、本イベントといえばライブペイントである。アナルテクノの担当は駒澤零。近年、レコードdig漫画「ディグインザディガー」を連載している彼女らしく、背景のスクリーンには次々と罫線でコマが割られていく。
「はて、30分の持ち時間でどんなストーリーの漫画を?」と思ったが、蓋を開けてみると「コマ通りに読めばアナルテクノのセトリになってる漫画」であることが判明。
これはなかなか良いアイディアだったように思う。ニューウェーヴは何よりもアイディアが大事ですからね。
"しぜすべ" ライブレポートの次回掲載は2月25日(土)を予定。お楽しみに!
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