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雨音を1年録り続けて気づいたこと

小宮まりんです。みなさんは『』好きですか?

著者近影

私は好きです。具体的には雨が降ってきたらそれを録音するのが習慣になっているぐらい

レコーダー近影

……ご存知の方もいるかもしれませんが、こういう屋外での録音行為には「フィールドレコーディング」という名前がついています。
フィールドレコーディングでは雨音に限らず、演説などの人間の活動、波音や川のせせらぎのような自然音、はては人間には聞こえないコウモリや駐車場の機械が発する超音波まであらゆるものが録音の対象

以前Water Walkで記事を書いたとき、Michael Primeの「Listen to Peyote」というフィードレコーディング作品を取り上げましたが、これも手法の自由度の高さや表現の幅広さを物語る一作と言えそうです。

ところでタイトルにも書いたとおり、わたしがこの習慣を身につけたのはざっと1年前。

この本を読んだことをきっかけにちまちま録り続けて、いつの間にか録音したファイルも100件以上。
まだまだ私もフィールドレコーディングの世界ではひよっこの人間ですが、得られた「気づき」を5つ、備忘録的に記していきます。

早速!


①良いところで乱入してくる車、バイク

これは場所によりけりなんですが……
私は基本的に家の近辺で録っています。住宅街なので、そばに道路があるわけです。
録音しているとちょいちょい車が水を差してくるんです。だから、録音レベルにわりと気を使う必要があります。
先ほど取り上げた『フィールド・レコーディング入門』では、

録音レベルの設定はオートではなく、必ずマニュアル録音を選択する。録音レベルはマイナス12デシベルにレベルメーターが時々達する位を目安にする。リミッターはオンにしても良いが頼りすぎない。

柳沢英輔、2022年、210頁

……と書かれています。
私は車が通っていないときに12デシベルらへんになるように録っていて、車が通った部分だけ、後から編集ソフトで切るようにしています。
編集を前提にすると、何かあっても「あとでここカットすればいいか……」と、ちょっと心が広くなれるのでおすすめです。
でも暴走族はゆるさない。

②通行人をビビらせてしまう

これもまた場所次第なんですが……

”人気はないがたまに人が来るような場所(例えばマンションの駐輪場)”で録る時に起こりがちなトラブルです。
パッと見たときに何をやっているかよくわからないので、まあまあ怪しまれます。
幸い、職務質問はされたことないです。

困るのはレコーディング中だから「これこれこういうことをやっていて……」と声を出して説明するわけにもいかないこと。なので私は、向こうが気づいたときに軽い会釈をするように心がけています。
あとは、音のモニターにイヤホンではなく大きめのヘッドホンを使うことで「なにか音を録っているんだな」と向こうが気づきやすいようにしています。

……最初の頃はとにかく気配を消してコミュニケーションの発生を回避していましたが、あれはよくないです。
夜11時ごろ、マンションの駐輪場でトタン屋根に当たる雨音を録っていたとき、その方法をとったせいで仕事帰りのおじさんに悲鳴を挙げさせてしまった前科があるのでお勧めしません。

③意外と風の音がバカにならない

野外録音のための『ウィンドジャマー』という便利なグッズがあります。さっきのレコーダーの画像の

ここ。この毛みたいなやつです(見るたびにトロール人形を思い出します)。
マイクにかぶせることで、風を気にせず録音できるようになる。反面、音が若干こもってしまうという諸刃の剣。私は音がこもるよりも風の音が入る方が嫌なので、ほぼ毎回かぶせて録音しています。
特に春先などは風が強いので、うっかりこれをつけないで外に出ると、即ボボボボ!!ドドドド!!青いくるみも吹きとばせ!!という感じのノイズが入って、録音が不可能になってしまいます。必須!

④自分が無自覚に鳴らす音もバカにならない

これ、本当に録音を始めるまで気がつけないです。
撮り終わってから聞き直してみると、雨音や町の音に混ざって、無意識に自分が発していた音が聞こえてきます。具体的には鼻息とかお腹が鳴る音とか。
フィールドレコーディング始めたての頃は「ピュアな音を取る上で自分ってこんなに邪魔になるんだ……」という衝撃を受けました。

対策としては、

マスクです。鼻息はマスクでなんとかなります。

⑤多少レコーダーに雨がかかっても大丈夫

記事の冒頭にも出てきましたが、私の使っているレコーダーは、ZOOMの「H4nPro」という機種です。

マイク付きなのでこれ一台でフィールドレコーディングができちゃう。ハンディレコーダー以外にもオーディオインターフェース、マルチトラックレコーダーなどの機能を備えている優れものです(その辺の機能はあんまり使ってないけど)。
防水じゃないので、始めたての頃は一滴もかからないように手でガードしながら録っていましたが……
さっき出た"ウィンドジャマー"があれば、マイクが雨で濡れることもないですし「ちょっと雨がかかる」ぐらいなら特に問題なく動いてくれます。
気になるのであれば本体にラップとか巻いておくと良いのかな。

まとめ

……なんか全体的にフィールドレコーディングあるあるみたいになってしまいましたね。
大事なのは『とにかく気長に』ということだと思っています。楽器と違って鳴らす音を自分で選べない以上、偶然に任せるしかないので。

あと、レコーダーを持って街をうろうろしていると「普段聞いている音」と「実際にそこで鳴っている音」の違いに気づけます。そうすると、音ひとつひとつに対する意識の向け方、世界の聞こえ方がぜんぜん変わってくるんです
この過程はすごくおもしろいですよ。みんな体験してみてほしい。

写真を録ってインスタにあげるみたいに、音を録って投稿するのが当たり前になったら楽しいだろうなあと思っています。

それではまた!

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