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恋人の元へ駆ける尊さよ

「四月になれば彼女は」を観た。
仕事終わりのレイトショーが初めてでどきどきしたが、最前列以外ほぼ満席で日曜日の駅近映画館の雰囲気に圧倒された。

両脇を若いカップルに挟まれながらソロの私はずっと泣いていた。私は最近別れを経験して、愛することについて考えることが多かったから森七菜ちゃんの透き通った声に乗せられた言葉がどうしても心に刺さってしまった。

佐藤健さんの演じるフジと森七菜ちゃん演じる春が学生時代に気持ちを通わせていく過程や、それまでの出来事が時が経っても心に大切に残っていることが分かる描写に恋の儚さを感じて胸がきゅっとした。

いい大人になった佐藤健と長澤まさみさん演じる婚約者の弥生。弥生の表情は初めから暗さMAXで何か抱えていることがすぐに分かる。
孤独も幸せも恐れて不安になってしまう気持ちや、恋人がいつか離れていってしまうと思っている臆病な一面にも共感できた。

物語が進んでいくと、2人の出会い、幸せな時間を思い起こすシーンがあり、恋の始まりと現在の対比にどうにも抗えない変わっていく2人や愛の形について考えざるを得なかった。

選べなかったという言葉から分かる過去の恋人への想いと過去の自分の行動に対する後悔。

だからこそ今大切にしたい人にまっすぐに走っていき向き合おうとする姿。

かつては好きな人を追いかけられなかった自分、婚約者から逃げてしまった自分、愛することを怠った自分たち。
変わっていく自分たちを超えていこうと恋人のもとへ駆ける姿が何と尊いことか。
愛することを辞めない、続けようとする勇敢な姿に涙が溢れた。

フジと2人の女性だけではなく、春と弥生との限られた時間があったからこそ、この物語は3人の繋がりを感じられた。

鑑賞前はきっと誰かが亡くなってどこかで観たことのあるストーリーだろうかという想像しかできていなかったけれど、私の想像は甘すぎた。

原作が小説だからなのか聞こえる言葉の数々に、お別れしたの恋人姿や愛とは何なのか見えるようになってきた自分なりの考えが重なり、本を読んでいる時のような、こう考えている、感じているのは自分だけではないなと感じられる感覚になり心地良かった。

さあ、小説を買いに行こう。
しばらくは映画の余韻と桜の季節に浸りながら過ごせそうだ。

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