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七草にちかは幸せな思い出に打ち勝てるのか?(ノー・カラット感想)

気がついたら最後の投稿から8ヶ月が経過してしまいましたね。

今回は2021年4月にシャニマスに新規実装されたアイドル「七草にちか」が幸せになる方法について,現段階で推測をつけたものを自分用に纏めていきたいと思ったものを共有させていただきます。

WINGの期間を通じて、プロデューサーは過去のアイドルたちと比較すると彼女の才能を見出すことに苦労していました。「にちかがアイドルになったことで幸せになれる」よう彼女をプロデュースする覚悟を決めたのは彼女が優勝してようやく、という状況です。
それでは、彼女にとっての「幸せ」とは果たして何でしょうか?伝説のアイドル「八雲なみ」のように合わない靴を履き続けて特別なトップアイドルになること?それとも、家族で住めるほど大きい家を建てるという大金持ちになるという結果を手に入れることなのでしょうか?

彼女に関するコミュを見て来た中から推測すると,七草にちかにとっての幸せは「思い出の中にある,幸せだった家族との時間を再現する事」にあると考えられます。あくまで私の感情的な仮説ですが、トップアイドルになる事も大金持ちになることという夢のどちらも,未来になりたい姿を実現させるという意味での「夢」ではなく、あくまで過去の「思い出」を取り戻す事だけを実はにちかは追い求めているのではないでしょうか。


誰も私を見ていない

ノー・カラットの話の中で、にちかはこのようなモノローグを語るシーンがありました。

幸せになれるのかも 全部があった頃みたいに

 いきなり結論が出てしまったような感覚がありますが、彼女が「幸せ」とイメージして最初に思い浮かんだものは「過去の思い出」です。後に七草家の家庭環境が語られるとともに思い出の詳細が明らかになりますが、七草家の父親が存命であった頃、にちかには一緒に歌い、自分が八雲なみの真似をする事を喜んでくれる家族が確かにいたのです。彼女の父親は国際弁護士だと言うことが「明るい部屋」で間接的に語られていた事から、おそらく金銭的にもそこまで困ることはなかったでしょう。

 しかし、父親の死をきっかけに環境は一変していまいました。少なくとも才気溢れる人物という描写が多い姉の七草はづきが彼女自身の能力を伸ばすことにお金と時間を費やせず、複数のアルバイトを掛け持ちしなければならないほど七草家には金銭的に余裕が無くなっています。
その結果として、最早にちかに構っている暇は無くなってしまったのでしょう。
幸せな生活が一変し、顧みられる事が減ったにちか。歳を取るに連れて、特別な才能を持っている同世代の人間と自身を何度も比較した彼女はおそらくこう思ったのでしょう。

「七草にちかは八雲なみの力を借りなければ誰からも注目されない」

 WINGで彼女がなみの物真似をする事に拘泥したのは、幼い頃に彼女の物真似をしていた時代にしか他者から注目された経験が無かったからであり、結果として「七草にちか」を無価値な存在としてしか定義出来なくなっていたのではないでしょうか。

アンカーボルトソングを取り戻せ

 彼女がトップアイドルになる目的は
「大金持ちになって、家族みんなで住める大きい家を建てる事」です。
 これ自体は自分の将来への希望に満ち溢れた夢に見えます。そして決して否定されるべき内容でもありません。
 しかし、当初に挙げた彼女のモノローグと「ノー・カラット」での描写を重ねるとそれだけでは無いようにも見えます。彼女の夢はファンを見ずにいっているのです。
 初期実装の4ユニットはWINGの段階でファンの存在を強く意識するイベントが発生する事が多く、激物と呼ばれていたストレイライトやノクチルも今や決してファンの存在に無関心という訳ではありません。(天塵で浅倉透がSNSでノクチルの批判をする反応に対し「アイドルがいる人」と言った事が象徴的)
繰り返すようですが、にちかは父親が生きており、家族に金銭的な余裕があった時代の事を「全てがあった頃」と言っていました。
 ここから、彼女が「ビッグになって大きい家を建てたい」のは自分が父親の代わりに家族の大黒柱になり、家族から注目されていた、いわば「全てが満ち足りていた幸せだった時代」に舞い戻りたいからという推測が成り立ちます。今のところ、彼女の夢はどこまで行っても「過去の思い出を現在に呼び戻す」以上のものではないというのが私の感想です。

 余談ですが、「明るい部屋」ではづきさんが過去の夢を諦めて現在の283のアイドルが輝けるよう全力を尽くす人生を受け入れた事、そして「ノー・カラット」で「夢が叶わなくても人生は続いてしまう」とはづきさんの目には現在が強く写っている事の対比にも見えます。


「トップアイドル」の時代が終わる


 七草にちかの「幸せ」は現在、ましてや未来への展望を達成することではなく、むしろ幸せだった思い出に満ちていた過去に舞い戻る事で達成されるというのが私が抱いた所感です。恐らく彼女は手っ取り早く大金持ちに成り上がる為にアイドルになったのであって、今もファンを作って自分の価値を認めさせたいという思いはあっても「ファンの為に」という思いは薄いように見られます。にちかにとってはステージと言うものは流離譚伝説を達成するための戦場でしかありません。
ファンの事を完全にシャットアウトしたアイドルであっても、八雲なみが天井社長に導かれて国民的アイドルになった時代ならばトップアイドルになれる可能性もあったのかもしれません。パフォーマンスが完璧ならば彼女の時代は国民的になれたようです。
 しかし、時が巡りファンが「アイドル」に求める物も変わった。七草にちかはパフォーマンスが完璧だと言われ続けた相方の美琴よりも「パフォーマンスが上手く無い方」と認識されながら注目されるようになります。
完璧なパフォーマンスが出来るよう、プロデューサーが完璧な靴を履かせられば国民的アイドルになれる時代は終わった。
 ストーリーストーリーで番組スタッフがアンティーカの筋書きで視聴者からの反響が大きくなったことを無視できなかったように、いかに芸能界といえども「ファンからの見られ方」を無視できなくなるほど、アイドルとして成功する為にファンの存在は無視できなくなっている強調している描写が多くなっています。

 作中でアイドルたちの「敵」として描かれる事がある芸能界の人間ですらファンの声に縛られる要素が多く、この世界に生きる一つの生命として必死に生きているだけ。シャニマスの世界は誰かに支配されてないからこそ、「絶対悪を倒してハッピーエンド」という筋書きも通用しないのです。

 倒すべき敵は最早なく、トップアイドルになって喜んでくれる父親も今や他界してしまった。そんな時代と環境の中で、過去の思い出に縛られた七草にちかはどうすれば幸せになれるのでしょうか。

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