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アリーナ・ロックイン


 入学式の季節なので、ふと思い出したので書こうと思う。
 
 僕は4歳違いで長女と長男を同じ東京都内の区立中学校に入学させた。
 その入学式での出来事だ。
 もうすでに10年以上の時間が過ぎているので、流石に今はそんなことはないだろうと思うが、その当時でさえ衝撃的な出来事だったので、今も鮮明に当時の事を思い出せる。

 入学式。
 アリーナと呼ばれる(ほぼ体育館ではあるが)、体育館とは別の温水プールとの複合施設でそれは厳かに行われた。
 新入生の親は前列の新入生の席と後列の在校生の席に挟まれる形の保護者席に座り、新入生入場から華々しく始まるセレモニーに我が子をビデオや写真に収めようと奮闘する。長い校長の話や、聞きたくもない来賓のPTA会長や区議会議員の話もスルーして我が子を画面に収めるのに必死になる楽しい時間を過ごすのだ。
 
 そんな楽しい時間もつかの間、セレモニーも終わり、新入生が退場する。退場する我が子をまた動画や写真に収めようと親たちは奮闘する。そんな中、こんなアナウンスが流れる。

「新入生の後に来賓の方と在校生が退場しますので保護者の方々はそのまま席でお待ち下さい」

 真面目な親たちは来賓と在校生が退場するまで、静かに保護者席で待っている。すると子どもたちが全員退場した刹那、アリーナ中の鉄の扉という扉が全て重い音と共に閉まるのだ。そして壇上にはPTA会長が再び現れ、PTAへの加入は任意だが云々の能書きを語った後、保護者は新入生のクラスごとに集められ、すべてのPTA役員が決まるまで保護者はアリーナに軟禁されるのだった。
 最初は誰も手を挙げない。
 広いアリーナに重い空気が流れる。
 しかし敵もさるもの、決して慌てず、その重い空気の重圧に耐えきれず恐る恐る誰かが手を挙げるまでじっと待つのである。全ての役員が決まるまで。

 流石に令和の今はそんな荒業で役員を決めてはいないと思うが、とにかく、 
 
 新入生の皆さん、入学おめでとう。そして、
 新入生の保護者の皆様 お疲れさまです。

 今年からは昔ながらの集合形式の入学式が多くなることでしょう。
 元PTA活動経験者の私からのアドバイスとしては、PTA活動に参加したくないならば、保護者席にはゆったりと座らず、ドア際に写真を撮るふりをして(実際に撮ってもいい)陣取ることをオススメします。ワタシ、息子の時はそうして逃げ出しました。
 ただし、欠席裁判で一番やりたくない役員になってたりすることもありますので、そのへんは要注意で。

 PTA活動は参加するも、しないも自由なのです。本来は。


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