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櫻坂46『BAN』

 「あなたは今、何をしているの?」この質問に答えられない。たいして夢中になっているものが無い。だらだらと夜遅くまで起きていて、布団の中でスマホを見ながら寝落ちを待って、昼頃になって起きる。少し前の自分からすると信じられない日常。あの時の私が今の私を見たら、「羨ましい」なんて言いながらその表情には軽蔑が浮かんでいるのだろう。

 櫻坂46が2ndシングルとして『BAN』をリリースした。私は好きなアーティストは誰?と聞かれたら、乃木坂46や日向坂46も含めた坂道グループを答えている。だけど握手会やライブには行ったことがないにわかである。櫻坂46は坂道合同オーディションをきっかけに少しずつ興味を持つようになった(当時は欅坂46だったが)。私にとって欅坂46や櫻坂46は満たされている時に聞くよりも、何かを抱えていたり、逆に何だか空っぽの気分の時に必要になる。この『BAN』はまさに空っぽの今の私とマッチする音楽である。

 何をするにも面倒くさくなってしまった今の私。いつからこうなったのだろう。きっとコロナ禍が原因の1つなのだろうと思っていた。

でも、多分違う。もともと私はこうだった。コロナ禍において、省けるものは省いて、必要最低限のものだけしか自分の時間を縛る。自分の時間がたくさん与えられた今、自分がわからない私はこの時間をどう使えば良いのかわからない。将来の夢も無い、夢中になれる趣味も無い。「みんなどこへ行ったんだ?なんでそんな忙しいの?」は私の心の声そのものだ。

コロナが原因で暇になったんじゃない。コロナが私は本当は何も無い人間であることを暴いたのだ。

 夢を持つことが素晴らしいとされる世の中。だらだら過ごすのはみっともないみたいな空気の世の中。音楽だって夢追い人を励ますものばかりだ。だからこそ『BAN』は私にとって衝撃だった。何もない自分に寄り添う歌なんて聞いたこと無かったしある訳ないと思ってた。

 今の自分の状況は良いのか?周りは羨ましいけど、今の自分は否定されなきゃいけない?答えはわからないけど、『BAN』はちょっとだけ私に寄り添ってくれた。櫻坂46は世の中の流れに不器用な人間の心を助けてくれる。『BAN』に限らず、今までの楽曲でもそうだったのだろう。

 多くの人が目を向けない陰があること、その陰をスルーしないこと。櫻坂46はそんなグループだと思う。そういう人間に、私もなりたい。

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