未就学児と行く国立科学博物館 大全
■更新履歴
<2024/08/17 更新>
・記載内容が古くなっていないことを確認
・子どもひろば コンパスの予約変更について追記
・ムーセイオンのメニューや整理券の扱いについて更新
・さいごに に近況を追記
<2024/04/09 公開>
・記事を公開
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ついに友の会(年パス)の会員になりました。
暇さえあれば6歳/2歳/0歳の三兄弟を連れて科博(かはく)こと国立科学博物館に子どもと行っています。何度も何度も通っていると、子ども連れの方が多いことに気が付きました。それも、科博のパンフレットを片手に連れて歩く様子をよく見かけます。今思えば、私も初めて子どもをつれて科博に来たときにパンフレットを見ながら歩いたことを思い出しました。
東京に住んでいて通うことができるのであれば特に困ることはないかもしれないけれど、地方から東京に来て、科博に子どもを連れて行く。特別展で恐竜博があるから連れて行く、年に一度、あるいは一生に一度のレベルで子どもと科博に行く人もいらっしゃるかと思います。そんな保護者の方に、子どもと行く国立科学博物館入門として、私が国立科学博物館 友の会の会員になるほど通う以前にもっと知っておきたかったことをまとめようと思います。
事前知識 編
一日ですべてを見みようとするのは諦めてください
はい、まずはこれに尽きます。無理です。絶対に一日という時間の中で満足に見終えることは不可能です。試しに「科博 時間が足りない」でXをのぞいてみましょう。
どうでしょうか。知の巨人を前に時間が足りないという嘆きが聞こえてきたでしょう。彼らは、自分たちが全力で楽しんだそれが国立科学博物館全体からするとほんの一部にしか過ぎないことに驚くとともに、もっともっと楽しめる魅力が科博に詰まっていることに愕然とし、ただ嘆くというよりもむしろそれを喜び、興奮する様子ではないでしょうか。全然時間が足りない、まだまだ見たいものがたくさんある。それが国立科学博物館なのです。
科博を一日で見るのは到底不可能です。何度も通っている私でさえその一部しか見ることができていません。それがわかったら次に進みましょう。
初めて行く・年に一度行く・一生に一度かもしれないなら常設展の地球館へ
「まずは、特別展に行って、地球館を一通り見終わったら、その後レストランでお昼食べて、そのあと日本館に行きましょう?」
いやいやいやいや、ムリムリムリムリムリ!
国立科学博物館は、大きく分けて日本館と地球館の2つからなる博物館で、それぞれの建屋のワンフロアだけで一日が終わるレベルの膨大な情報量と魅力的な展示が山ほどあります。シアター36◯(シアターさんろくまる)では球体スクリーン全方位に投影されるショートムービーを見る施設もありますし、展示は常設展だけでなく特別展(別料金)に加え、企画展(常設展入場で見られる)もあります。
地球館と日本館は上記の通り、展示のジャンルによって建屋が分かれているが、年に一度、あるいは一生に一度行くかどうかというレベルで科博に臨む場合は、両方のいいとこ取りをしようと思ってどんなに頑張っても見きれないので、地球館をおすすめします。
理由は簡単で、日本館よりも地球館のほうがあとから作られた建屋で、施設として新しいからです。
科博の歴史は1877年にさかのぼり、日本で最も歴史のある博物館の一つでありますが、日本館は1931年竣工に対して、地球館は1999年展示開始で2004年グランドオープンしたこともあり、日本館よりも展示が新しい地球館の方が子どもウケします。
地球館は設備が新しいので、薄暗い中で特殊なライティングにより展示を見せたり、大型スクリーンにプロジェクタを投影したり、規模の大きい恐竜の化石の展示するなど、今の時代にあった迫力のある見せ方で展示されていて、子どもにウケること間違いありません。よって、初めて行く・年に一度・一生に一度なら地球館は鉄板です。
どうして初めての人に特別展をおすすめしないの?
理由は3つ、1)特別展の混雑と2)特別展のみ再入場不可と3)子どもには特別展より常設展がウケるのためです。
初めていく・年に一度いく・一生に一度いく というレベルで明示的に見たい特別展、例えば恐竜がどうしても見たいのだ、など子どもにはっきりとした目的があるのであれば、ぜひ特別展に足を運ぶのが良いと思います。ただ、前述の通りどの展示も情報量が膨大なので特別展に足を運ぶのであれば特別展だけで一日が終わります。はじめからその覚悟で行くのであれば全力で特別展をお楽しみください。
理由1)特別展の混雑
特別展はとても人気です。特別展は料金枠が別(特別展 一般・大学生2,000円程度 / 小・中・高校生 500円程度)なのにもかかわらず大変混雑しており、大人たちに紛れて子どもたちが楽しむには少しハードルが上がります。
特別展の始まりごろは特に混みます。また、ゴールデンウィークやお盆の時期は特別展だけでなく常設展やレストラン、ラウンジ、ミュージアムショップすべてにおいてとても混雑します。
特別展については、子どもが全然楽しめないのかというと、そうではありません。特別展のためにおろしている動画があったり、巨大な剥製があって見ごたえがあったりと、楽しめる要素はたっぷりあるのですが「特別展」という性質上、お金のかけどころをどうしても"切り口"に振ることになってしまいます。
常設展が普遍的な科学を扱う展示だとすれば、特別展はその科学に対して特別な"切り口"でのまとめなおした上に、最新の研究にもふれるという作りになっています。最新の研究や、その"切り口"ならでは挿し込める話などにフォーカスしているため、どうしてもコンテンツが文字情報に寄りがちなのは否めません。
文字情報がかかれたパネルの前で腕組みをしながら大人が見ている中、子どもがうろちょろするという形式は避けられないため、文字情報以外の映像や剥製、レプリカなどを見て楽しむということになります。
さて、ここで直近5年分の特別展のテーマを見てみましょう。
混雑している特別展の中を未就学児を連れて歩く場合は細心の注意が必要です。なぜなら、ここは国立科学博物館です。この世に二つない貴重な資料や剥製が手に届くほどの距離でじっくり眺められる最高の施設です。テンションMAXの未就学児がこんなに面白そうな展示を目の前にするとどうなるか、保護者のみなさまならもうおわかりかと思います。
当然、特別展で展示を守っているスタッフは小さい子どもにギンギンに目を光らせています。子どもが走り出したり、資料にさわろうとするとメチャクチャ怒られます。もちろん、声を荒らげたり、つまみ出されるなどはありません。とても優しい口調でお話していただけますが、人類の叡智の結晶を子どもに壊されてたまるかと鬼の形相で常に見張っています。当たり前です。これを汚したり、壊したりすると、少し大げさではありますが人類の科学の進歩を遅らせることにもなりかねません。その一方で、未来の科学を作り上げるのもまた子どもたちであるということも考慮し、子どもに優しくお声かけしてくださいます。
また、ここで展示されている特別展は、その後、他の科学館の特別展として展示が行われるため、この場限りというわけではなく、この先何年にもわたって、各地の科学館を巡ることになるわけです。ここで資料を汚したり、壊したりすると、各地の科学館でそれを目にすることができなくなるというわけです。そのため特別展のスタッフは特に走り回る子、展示にペタペタさわる子には特に敏感です。
理由2)特別展のみ再入場不可
科博の常設展については再入場が可能ですが、常設展は再入場ができません。未就学児をかかえる保護者のみなさまはよく分かると思いますが、行動は常に子どもの気分や体調に左右されます。特別展の価値として、見られるコンテンツと楽しめる時間を考えれば2,000円程度なので格安と言えるのは間違いありません。ただ、2,000円払ったのに見られなかった。というのはなかなかお財布にもメンタルにくるものがあります。
特別展のチケットを買うと「せっかく特別展のチケットなんだから、最初に見なければ」というタイムテーブルの足かせになります。子供のペースに合わせてゆっくり過ごそうと考えるのであれば、再入場が柔軟にできて、お手頃価格の常設展の方が心にも余裕が持てます。
"特別"展という響きに惑わされてはいけません。「特別展」が"特別"面白く、"常設"展がいつも同じでつまらないのではありません。わざわざ東京に出てきて国立科学博物館にやってきたのだから特別展を楽しまないと!と鼻息を荒くする必要はありません。「常設展」は人類がこれまで築き上げてきた普遍的な科学の叡智を結集した展示です。むこう100年、1000年変わらない可能性が高い科学の原理原則をまとめ上げた展示です。常設展も十分に楽しめます。その理由を次の項で確認しましょう。
理由3)子どもには特別展より常設展のほうがウケる
特別展は、いろいろな工夫を凝らして見て楽しむものもたくさんありますが、どちらかというと前述の通り文字情報で楽しむという性格のもので、大人ウケするコンテンツだといって差し支えないと思います。小学校低学年以下だと、想像に難くないとは思いますが、展示が意図する楽しみ方はできず、おっきい!すごい!くらいの話にとどまってしまいます。もちろん、おっきい!すごい!で楽しめる特別展もあります。ただ、私としてはその楽しみ方であればむしろ常設展のほうが向いていると考えています。
特別の"特別"は常設展よりレベルが高い、常設展より面白いということを指すものではありません。特別展はあくまでも"特別な切り口"での展示を指し示すものです。この"特別な切り口"というのは、たしかにコンテンツとして大人は面白いのですが、普遍的な展示にはならないことからあまりお金をかけるわけにもいかないのだと思います(展示から感じる個人の感想)。
一方、常設展はその名の通り"常設"されるという性質上、施設としてある程度お金をかけても長期的に楽しめるコンテンツが盛り込まれています。それなりにお金をかけられるので、見て・聞いて・触って・嗅いでと、子どもたちがある程度乱暴に扱うことも想定された展示が多く、子どもたちのテンションに任せて全力で楽しむことができます。
子供向け施設 親子探検ひろばコンパスの予約は毎月1日に翌月分オープン
こちらは新型コロナウイルス感染症の影響で一時休止しておりましたが、2023年よりリニューアルオープンしています。
現在は、主に4歳から6歳を対象としている子供向けの別料金(保護者・中学生以上 300円 / 子ども2歳〜小学生 300円)の広場です。親子探検ひろばの何ふさわしく、いろいろなところに登ったり降りたり、子どもといっしょに楽しむことができます。すべり台や、やさしめのボルダリング、吊り橋など子どもが遊べる場所は大人も登ったり降りたりできるようになっています。
変な落ち方をしたら骨折できるくらいの高さはあろうかというはしごに登ったりできるような施設なので、子どもだけで遊ばせるというよりは、常に目を見張っていなければ少しハラハラするような場所です。
未就学児はそこまで激しい遊び方をしないかもしれませんが、小学校に入るか入らないかというくらいのお子さんは走り回ったりして、危険な行為として注意を受ける場面はよく見かけます。何度も言いますが、走り回ると本当に危険な施設です。
リニューアル後は事前予約制になっており、ART PASSで予約と購入をする必要があります。0歳〜1歳は無料で入場できますがその場合も日時予約が必要になります。
しかし、例えば2024年3月末現在の4月の予約状況は以下の通りです。
気軽に行こうと思い立っても土日はまず取れません。平日であれば予約を取ることができます。どうしても土日の予約をおさえたい場合は、実際に科博に赴く前月の1日オープンする予約枠を確保する必要があります。
2024年4月1日 12:02の様子はこちらです。
土日や祝日にどうしてもコンパスを抑えたい場合は前月の1日 正午の予約争奪戦に参加しましょう。争奪戦と言ってもそこまで一瞬で全部埋まるということはありません。パラパラと予約は埋まっていきますが時間や曜日を考慮して選択すれば全く取れないというものではありません。
コンパスの予約は無料で当日朝9時まで5回まで日程変更が可能
購入したコンパスのチケットは、突然いけなくなってしまっても無駄にはなりません。日程変更が可能です。
コンパスの入場料は、楽しめる時間や内容にしてはそこまで高くありませんが、1ヶ月以上前に予約をしなければならないという特性上、急にいけなくなってしまうということもあるかもしれません。
そんなときは、ART PASS(コンパスが採用しているチケット販売サービス)から、「予約スケジュールを変更する」ことができます。変更できるとはいえ、変更先の枠はたいてい平日しか空いていませんので、いったん、チケットのキープという意味で延期しておくことになるかと思います。
(例)8月中の週末にコンパスを予約していたがいけなくなってしまった。
暫定対処:いったん9月中の空いている枠にダミーで変更しておく
恒久対処:9/1の正午12:00に開放する10月の本当に行きたい日に変更する
当初予定していた日取りよりも2ヶ月も後ろ倒しになってしまいますが、チケットが紙くずになるよりはマシ、という策です。5回も変更できるのであれば、紙切れになることはないだろうと思って、毎月1日の正午には仮予定でも良いので、コンパスの予約をいくつかおさえるようにしています。
実践 編
有料範囲で書かれていることの概要
実践編ではより具体的に、未就学児と一日を過ごすおすすめタイムテーブルをもとに、科博内レストラン ムーセイオンの整理券の発券方法、くじらカフェ(ラウンジ)の混雑状況、授乳室の場所・内装、地球館1Fの見どころ、ベビーカー置き場、ベビーカー移動時におすすめのエレベーターの場所、子どもと一緒にすわって休憩したりおやつを食べられる場所はどこなのか、実際の写真を使いながらお伝えします。
せっかく科博にきたのなら、明治5年創業の上野精養軒が運営しているレストラン ムーセイオンに足を運んでみてください。味はもちろんのこと、特別展に合わせた企画メニューなども面白く、子どもも大喜びです。
とても人気なレストランなのでとても混んでいて1時間待ちは当たり前ですが、足しげく通っている私が見つけた待ち時間ゼロでムーセイオンに入る方法をお伝えします。
さらに、年パスホルダー編では、これから科博ファンになるであろうみなさまが毎週のように子どもと科博で過ごすようになると「年パス」という言葉がちらついてくると思います。この記事を購入してまで科博について情報を集めてようというあなたなら間違いなく科博ファンになることでしょう。
ただ、先にお伝えしておきますが、はっきり言って、毎週のように散歩がてら常設展に足を運ぶというレベルでなければ、価格面で年パスを持つメリットはないと言っても良いと思います。それはなぜかというと、そもそも入場料がそれほど高くないからです。
ここでは、それでも年パスを持つ魅力についてお話します。価格面ではお得にはならないかもしれないけれど、毎回チケット買う手間が省ける、友の会向けの雑誌milsilが届く、レストランでの割引、ミュージアムショップでの割引などもっともっと科博が好きになることは間違いありません。みなさんも年パスホルダーになりましょう。
最後に、寄附による所得税控除 編では、すっかり科博ファンになったみなさま向けに寄附のご案内です。私は科博の中の人でもなんでもありませんので寄附金が増えたからどうという話ではありません。
国立科学博物館は特別公益増進法人であることから、寄附をすると寄附金額から自己負担2,000円を除く全額を所得から控除する仕組みがあります。ここでは寄附することによって所得税がどれくらい減額されるのかというお話を具体的な例に基づいて書いています。特別公益増進法人ということは、寄付金は所得控除だけではなく税額控除も選択できるのか?と気になったかともいるかと思います。こちらは実際に科博の賛助会に裏取りをしています。
さて、ここからは途中で有料になりますが、私が実際に何度も科博に通って得られた情報から考えた、時間を効率的に使いながら子どもたちを飽きさせずに、科博を大好きになってもらうための作戦が存分に込められています。全体で2万6千字におよぶ大作になっています。全部読み切るのも疲れてしまうほどのボリュームになっていますので、ぜひ購入してお楽しみください。
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