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人物試験におけるジレンマ(1)

今回から「人物試験におけるジレンマ」をテーマにとりあげて、3回にわたって考察して行きたいと思います。
『ワンランク上の人材選抜』を行うために、「人物試験」について深掘りして行きます。(Mr.モグ)

人物試験におけるジレンマ

多くの採用試験では、それぞれの組織の採用目的に合った「優秀な人物」を選び出すために人物試験(面接試験)が行われています。
他方で、人物試験には、評価者(試験官)の主観による評価バイアスが入り込む余地があることが知られているのは、これまでも説明してきました。

(詳細は「ワンランク上の人材選抜 優秀な人材を逃がさない人物試験(1)~(6)」をご覧ください。

各評価段階の境目の誤差についてのジレンマ

例えばA,B,C,D,E5人の受験者に対して、5段階評価による人物試験を行なう場合、評価者(試験官)は、(独立して受験者を評価しつつ)最上位層はA、最下位層はEと判断していくことになります。

人物試験の評価結果(評価分布)は、次の図のように各評価がはっきりと分かれた分布を示すことになりますが、実際は、最上位層A 最下位層Eは、別としても、AとBの境目の評価、BとCの境目の評価、同様にCとDの境目DとEの境目の評価には、試験官が頭を悩ますことが多いものです。

人物試験のジレンマ(1)グラフ

そのため、試験官の最終決定前の頭の中の評価段階の状況概念図として表現すると下の図のように、それぞれの評価の境目については、あいまいな部分が生じている可能性があり得るのです。

もちろんこのような場合、試験官は再度、自らの評価や人物試験の状況を振り返って、例えばBとCの境目にある受験者の評価については、優劣をハッキリさせ、最終的にB(もしくはC)と一方に決め、それが最終評価となるわけです。

各試験官の評価分布の相違についてのジレンマ

また、A,B,C,D,Eの5段階の人物試験は、評価者(試験官)は、独立して(受験者を)評価するため、(事前研修の徹底などが図られていない場合は)各評価段階の「評価の分布」が試験官によって多少のズレが生じてしまう可能性も否定できません。

一人の受験者を、試験官①②③の3人が、互いに独立して5段階評価するケースで、その際の「評価の分布」が次のようなものであったとしましょう。

試験官①:(正規分布の出現確率に近い形で)評価A,Eは少なめの出現確率評価B,Dはやや少なめの出現確率評価Cは多めの出現確率という評価の分布。

試験官②各評価ABCDEがそれぞれ均等の確率で生じるという評価の分布。

試験官③
:(やや中心化傾向の出現確率で)評価A,Eはかなり少なめの出現確率評価B,Dはやや少なめの出現確率評価Cはかなり多めの出現確率という評価の分布。

これをイメージ図で示すと、次の図のようになります。

人物試験のジレンマ(1)評価のばらつき

この場合、各受験者の評価は次のようになります。
(※なお、各受験者の評価は(試験官①の評価、試験官②の評価、試験官③の評価)のように示すものとします。)
  受験者1の評価(A,A,A)
  受験者2の評価(B,A,B)
  受験者3の評価(C,C,C)
  受験者4の評価(D,D,C)
  受験者5の評価(E,E,D)
  受験者6の評価(E,E,E)

ここで、「評価の分布」が各試験官ごとに多少異なっていても、最上位層受験者1の評価(A,A,A))、最下位層受験者6の評価(E,E,E))、中間層受験者3の評価(C,C,C))の評価は、各試験官の評価が一致する可能性が高いのですが、それ以外の層については、評価のバラツキが生じる可能性が高いことがわかります。

人物試験における評価のジレンマを最小化するために

人物試験においては、これらの評価誤差を最小限にするために、
①試験官を(一人ではなく)複数人にしたり、
②面接回数を増やして、できるだけ多くの試験官による評価を行う
など、工夫を凝らしているわけです。

しかし、試験官を増やしたり、面接回数を増やす場合には、コストや手間がかかるため、現実の人物試験では、試験官の数、面接回数のいずれにおいても、無制限に増やすことはできません。

そこで、次回からは、「試験官の人数」と「評価誤差」の関係を、数値モデルを使って分析することで、「試験官を何人に増やしたら、誤差の少ない選抜が可能になるのか」「試験官を1人増やすと、どのような効果があるのか」といった疑問に対して、答えていきたいと思います。

今回も最後まで、お読みいただきありがとうございました。(Mr.モグ)

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