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優秀な人材を逃がさない人物試験(4) 「構造化面接」と「コンピテンシー面接」

ワンランク上の面接方法を考える際には、「構造化面接」「コンピテンシー面接」に関する知識は不可欠なものとなります。
今回は、これらについて解説していきます。       (Mr.モグ)


人物試験・面接の最終目的は何か?

人物試験や面接の成否は、筆記試験などでは測定するこのできない受験者の「真の姿」を引き出して、それを評価できるかにかかっています。そのため、評価者は、いろいろな質問を投げかけることで受験者に多く語らせ、その内容や態度・反応などを観察することになります。
「構造化面接」は、あらかじめ採用・評価基準を明確にした上で、事前に決めた質問を受験者に投げかけることで、各受験者の能力を(比較的)客観的に確認していく面接手法です。

構造化面接と非構造化面接

一般的に、構造化面接は、非構造化面接に比べて、採用後のパフォーマンスとの相関が高く、採用後の能力の予測にも優れているとされています。

構造化面接と非構造化面接の概要は表のようになります。

その4 構造化面接と非構造化面接表

構造化面接では、(あらかじめ決まった質問を投げかけるので)評価者の主観が入る余地が比較的少なく、質問に対する各受験者の返答ぶりの比較が容易になります。また、あらかじめ質問する内容を決めておくことから、(限られた)面接時間が終了してから、聞きそびれたことや、いわゆる質問のし忘れ、確認すべきことの聞き忘れなどを防ぐことにもつながります。

そのため、評価結果の客観性が高くなると考えられますが、一方で、あらかじめ定められた質問を受験者に投げかけることになりますので、その質問以上の情報は得られない可能性が高くなり、個々の受験者の深い部分を把握し難いという面があるのです。

(実際の構造化面接としては、面接時における質問を細かく定めるのではなく、質問の大まかな内容のみが定められているといったように、構造化レベルの低いものもあれば、全ての受験者に同じ質問をするといった、構造化レベルの高いものもあります。
通常の面接の際には、半構造化面接として、ある程度の質問の自由を評価者に与えることが多いと思います。)

 構造化面接が、評価者のバイアスを少なくする効果については、様々な研究が行われており、
例えば、
〇評価者の性格と同じ性格の受験者が高く評価されやすいという評価バイアスは、構造化面接により抑えられるという報告(※1)や、
〇面接時における初期印象によるバイアスも同じく構造化面接により抑えられるという報告(※2)がされています。

※1 今城志保、二村英幸、内藤淳、「採用面接の実証的研究2:面接の構造化の効果」、産業・組織心理学会第17回大会発表論文集
※2 Snyder,M,& Swann,W.B.Jr.,Behavior confirmation in social interaction:From social perception to social reality,Journal of Experimental Social Psychology,14 ,148-162,1978

なお、個別面接試験と一般知識能力の相関を分析した研究があり、これによると、個別面接試験で成績の良い者は、一般知能の評価も比較的高い傾向にあるとされ、両者の相関は0.40との報告があります※3。
(個別面接試験でどのような部分を重視して評価するかにもよりますが、一般知能の高い者の方が、個別面接試験の質問等に的確に答える傾向が強いのかもしれません。)

※3 Huffcutt,A.L.,Roth,P.L.,& McDaniel,M A.,Ameta-analyticinvestigation of cognitive ability in employment interview evaluations, Moderating characteristics and implications for incremental validity., Journal of Applied Psychology,81,459-473,1996

さらに、個別面接試験を行う際には、「組織として望ましい人材像」を明確にし、そのような人材像から抽出される多数の要素(能力や特性)の中から、評価項目を選び出すことが重要になります。
特に組織の中で理想的な行動をしている職員に共通する行動特性や思考特性を抽出して、それらを評価項目にすることが効果的です。


コンピテンシー評価型面接

近年、組織にとって優秀な良い人材を選抜する面接手法の一つとして「コンピテンシー評価型面接」が多く導入されてきています。

これまでの個別面接試験は(行動に表れにくい)人柄や性向等を評価することが多かったのですが、そのような(人柄や性向など)受験者の内に秘められた潜在的な評価項目は評価しにくく、結果として評価の妥当性を高めることができなかったという反省から、
受験者の外に表れた行動(行動事実)に着目し、そのような行動と、(その受験者の)これから表れうる行動(将来の行動)とを関連づけて評価しようとするものです。

コンピテンシーとは、いわゆるハイパフォーマーの行動パターンを分析し、抽出した行動特性のことであり、そのような行動特性をとる人を採用すれば、その人は(その組織にとって)高業績者(ハイパフォーマー)になり得る可能性が高いという仮定の下で行われる面接になります。

(例えば、ある受験者が「私は何事にも一生懸命に努力します」と、話しても、採用後に何事にも努力して行動する人なのか判断できませんが、
「私は大学のゼミで自ら企画してメンバーと一緒に○○をテーマに研究を行い、その際△△の問題が生じましたが□□して対応しました。」と具体的な過去の行動に基づいて話した受験者の場合、採用後も同じような状況下では同様の行動をする可能性が高いと判断する訳です。)

このように、
①行動に表れるもの(もしくは行動に表すことができるもの)、
②その能力・特性が結果や成果に結びつくもの 

評価項目として設定し、それらの評価項目に関連した受験者の過去の具体的な行動を聞き出したり、なぜそのような行動をとったのかを聞く中で、その受験者が持つ行動パターンを見極めるのが、コンピテンシー評価型面接なのです。

コンピテンシー評価型面接を行う際の注意点

その際に留意すべきことは、過去の行動が成功したから良いというのではなく、(成功したか否かにかかわらず)「どのような状況下で」、「どのような行動」を「なぜとったのか」について、質問を展開し様々な情報を把握する中で、受験者の真の姿(深層)に近づくことが重要なのです。

(例えば、部長になったからリーダーシップがあると単純に判断するのではなく、(部長になっていない人でも)サークルのメンバーにどのように働きかけて、自分自身がどのようなことを考え、どのような行動をとったかを、質問を通じて把握する中で、その受験者の行動パターンを見極めることが可能となるのです。)

なお、このような受験者の過去の行動に関する質問は、その質問を深掘りしていく過程で、受験者のウソを見抜くことが出来、本来の受験者の姿を正しく評価しやすいとされています。

コンピテンシーの例

国際機関の採用においては、次のようなコア・コンピテンシーが必要であるとの考えの下で、受験者がこれらのコンピテンシーを持っているかについて、個別面接試験が行われています。
(なお、採用するポストごとに求められるコンピテンシーは異なります。)

例 国連事務局のコア・コンピテンシー
(1)コミュニケーション(Communication)、 (2)チームワーク(Teamwork)、
(3)計画・組織力(Planning & Organizing)、 (4)説明責任(Accountability)、
(5)創造性(Creativity)、 (6)顧客志向(Client Orientation)、
(7)自己研鑽(Commitment to Continuous Learning)、(8)技術認知(Technological Awareness)


STARモデル

これまで説明した構造化面接コンピテンシー評価型面接を合わせた個別面接手法として、「STARモデル」があります。
これは、一般に「行動」は、受験者本人の資質や性格などから生じるもので、「(過去の)行動」を分析すれば、その背後に隠れている受験者の考え方、性格や行動様式などを測定できるとする考えの下で、その質問パターンを、状況・課題・行動・成果の各段階に分けて聞くというものです。

具体的には、「あなたがこれまで、もっとも苦労した経験を教えてください」といったように、受験者に過去の具体的な行動を質問する中で、当時の状況(Situation)その時の課題(Task)を確認した上で、その課題の解決のために、どのような行動(Action)をして、どのような成果(Result)になったのか等を、掘り下げて聞いていくもので※、STARモデルの質問例は、次のようになります。

S:状況(Situation)」「T:課題(Task)」「A:行動(Action)」(R:結果(Result)」の、四つのカテゴリーの頭文字がSTARとなるで、STARモデルとされています。

○ STARモデルの質問例
Situation:状況

「どのようなメンバーで行ったのですか?」 「そのなかで、あなたはどんな役割でしたか?」 「どのような責任(役割)を持っていましたか?」
Task:課題
「どのような課題があったのですか?」 「どのような問題が生じたのですか?」「問題発生の原因は何ですか?」
Action:行動
「具体的にどのようなことをしたのですか?」 「どの位の期間で行ったのですか?」「周りの人とのやりとりはあったのですか?」
Result:成果
「課題は解決できましたか?」 「何か学んだことや反省点はありますか?」 「どのような成果が出たのですか?(周囲の反応はどうでしたか?)」

まとめ

今回は、人物試験や面接の際の重要なキーワードでもある「構造化面接」「コンピテンシー面接」について考察してきました。
さらに、最近、人事担当者の間で話題になっている「STARモデル」についても紹介しました。
いかに受験者の「真の能力」を見極めることができるのか、永遠の課題に、引き続き取り組んでいきましょう。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。次回は、面接の実際について、さらに深堀していきたいと思います。(Mr.モグ)


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