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なんでオペラ歌手がV系の曲歌うん?

最近、昔から好きなV系の歌を歌ったりしている。
オペラ歌手がV系を歌う物珍しさももちろんあるかもしれないけど、たまに知らない方から「聴いたよ」とか「いいね」って話しかけて頂けるのは本当に嬉しく、ありがたいことだ。

もちろん、歌を聴いてくれたってだけで嬉しいんだけど、

きっと私がV系の曲を歌う事でソプラノ歌手の歌を初めて聴いたって人もいるかもしれないし、逆にクラシック界隈の人がV系の曲に対して「良い曲だな」って思ってくれるかもしれない。
もしそうだったらもっともっと嬉しい。

そんなちっぽけな可能性でも、自分は多分V系とクラシック音楽どちらにも精通している数少ない歌手だと思ってるから。

どんな音楽も、楽しめるようになるまでには知識がある程度必要だと思う。

クラシック音楽はイメージ通り(だよね?)、時代の流れとか、奏法とか、作曲者の傾向とか、ここのテクニックがーとか、音楽や楽譜をある程度理解してからじゃないと物申せない雰囲気がある。

正直、義務教育の音楽の授業だけ受けてきた人にとってはヴィルトゥオーゾとかカデンツァとかレチタティーヴォとか言われても「は?」って感じだろう。

V系に関しても、専門用語が多いのは知られている事かな?と思う。
こちらはどちらかというと"楽しむ側"の用語かな。

「咲く」「逆ダイ」「折り畳み」

これを読んでるクラシック界隈の方は「??」って感じだと思う。
これらはノリ方の呼称で、バンドの作曲者はこのお客さんのノリを意識して曲を書いたりするらしい。

つまり言いたいのは、どちらのジャンルも形式的な枠がガッチリあって、少し排他的(最近は少しずつ変わってきてると思うけど)で、楽しめるようになるまでの道のりが少し長めって事だ。

…昔話をする。
中学生時代からV系の音楽が大好きだった私は、クラスの子達にそのCDを押し付けて布教したりしていた。

中には受け入れてくれる子もいたが、大半の反応はこうだった。

「声が変」「歌詞が怖い」「見た目が…」
違うんだ、注目して欲しいのはそこじゃなくてこのベースラインで…とか、ここで音楽がこう展開するんだとか、ここの歌詞はすごく難しい言葉が使われているんだけど実は韻を踏んでいて…とか、音楽的な事を話したかった私にとってはすごく辛かった。

当時はJPOP、ジャニーズが流行りに流行っていて、どこに行ってもそんな感じの音楽が流れていた。
今はだいぶ丸くなったけど、当時はそういう音楽が大嫌いだった。
みんなの「好き」にうまく溶け込めない自分も。

結論から言うと、私がなんやかんやあってオペラ歌手になった理由は

・地声が絶望感に出なかった
・陰陽座の黒猫さんやアリプロの宝野アリカさんに憧れた
・SHOXXのインタビューでプラの有村さんが「僕はオペラ歌手みたいに上手くは歌えない」って言ってた
・私の音楽性は正しいって事を証明したかった

あれから10年くらいが経った。
オペラ歌手として活動し始めて、コンクールで賞を取ったり海外留学をしたり、ちょくちょくコンサートやお仕事に呼んで頂けるようになった。
結果として、私の音楽性は正しかったということにしておく。(でないと困る)

オペラ歌手としてはまだまだ超若手だが、
世間的にはそろそろ何か結果を出したくもあるお年頃だ。

そんな時期にやってきたこのコロナ禍。
諸先輩方の背中を追ってひたむきに走り続けてきたが、急にその道がガラガラと崩壊した。

オペラに未来はあるのだろうか?

私達の声は、響かない部屋でマイクを通すと途端に美しさを失う。

コンサートホールが使えない(使っても採算が取れない)この現状、かなりヤバい。

でもさ、

私達の声は、高い声低い声合戦やCMで替え歌を歌うための声じゃない。

美しい音と言葉の芸術をこの世に具現化させる
ための唯一の楽器だろ?

どんなに難しい曲が来ても、歌いこなすのが私らの仕事だろ?

どーにかして踏ん張ってこうぜ。

これを読んでる同世代のオペラ歌手、
私らがやり方を変えなきゃだめだよ。
それぞれのやり方で、協力しあおう。
まずは、知ってもらおう。

これを読んでる音楽好きの方、
絶対にあなた達を楽しませるから、
絶対にあなた達の生活に新しい色を差し込むから、

入り口はなんでもいい。
付いてきてください。


めっちゃ脱線しちゃったね笑

そんなソプラノ歌手の独り言でした。


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