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純粋な思いと確信と

夕方から大雨警報が出ていたから心配していたが幼稚園のお迎えには間に合ってほっとしていた。
すでに雲があやしげで空気も湿っていたためすぐに家に帰ってきた。
すると子供が
「てんとう虫捕まえたいんだけど」
と虫かごを取り出してきた。
「え?うちにはいないよ」
雑草の処理が面倒だから家を建てた時に庭は砂利にしていた。
早く言ってくれたらバス停横の公園で捕まえてきたのに…。しかし今日はもう天気が不安定すぎるし病み上がりだから家でゆっくり遊んでほしいところ。
「てんとう虫捕まえると図鑑にできるんだよ」
どうやらクラスでてんとう虫を見つけて見つけた模様、種類で図鑑を作っているらしい。
「うーん、じゃあ明日早めにバス停行って公園で探してみよう」
夕方から明日にかけて雨ですけどね…。
申し訳ないと思いつつ、自分が嫌にならない提案をさせてもらった。
それになんとなく、バス停の近くは草が生えているところが多くてんとう虫をよく見かけた気がしたのだ。
子供も納得して家に入り、夜まで中で遊んでいた。
正直みんなてんとう虫のことを忘れていた時だった。シャッターを閉めようと窓を開けた瞬間、小さなてんとう虫が手すりに向かって飛んできたのだ。
「てんとう虫、きた!」
ごく小さな黒に小さな黄色い点が2つついたてんとう虫だった。
虫かごでは隙間から出そうだとあわててお豆腐の空き容器とサランラップで作った虫かごに入れる。
子供は大喜びで何度も眺めていた。
思わぬ事態に私もテンションが上がった。
そしててんとう虫用の砂糖水を用意していたところ今度は
「まだね、赤いてんとう虫がいないんだよ」と子供がもらした。
「そうなんだ。じゃあ明日バス停のところで探してみよう。赤いのいるといいね」
私の中ではむしろバス停の近くには赤いてんとう虫がいっぱいいるイメージがあった。だから雨が降っても1匹くらいいるんじゃないかななんて思っていたのだ。

迎えた朝。
てんとう虫の入ったお豆腐容器を嬉しそうに持つ子供と公園周りの道を目を凝らしながら歩く。
幸い極小雨で傘がなくても平気そうだったから探しやすかった。
そしてついに
「赤いの、いた!」
お望み通りの赤いてんとう虫が1番バス停に近い茂みにいたのだ。

探していたのが幸運の象徴のてんとう虫というのもなんだかよかったけれど、子供の望み通りに叶って私もとても嬉しかった。
対象がちょうど今いっぱいいるてんとう虫というのもあるけれど、子供の純粋に捕まえて幼稚園に持って行きたい思いが届いたのかな、なんて思う。
そして私の中にあったバス停近くにいる」っていう確信に近い感覚もなんだか一役買ったのかなと思ったり。

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