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甘いは深い。

田舎で活躍しているばあちゃん達のことを私はこっそりと「砂糖の使い手」と呼んでいる。食堂や寄り合いでいつも出される惣菜や漬け物のほとんどは甘くて茶色い。だけど、さじ加減が絶妙で美味しいからさすがだ。

砂糖使いの妙に私が気づいたのは、ここ数年のごく最近の話。うちの母親は昔から砂糖をほとんど使わずに料理をしている。なぜなら、父親はごはんが甘いのを許さなかったから。そして両親共に薄味が好きだった。

小学生の時に参観日で母と一緒にロッククッキーを作った時に、レシピから砂糖を半分減らしているのをみて私はその事実を知る。そして料理の時には、父の知らないところでめっちゃみりんを入れてることも知っている。砂糖がダメでみりんはオッケー、そのへんの母のさじ加減はよくわからなかったけど、そのおかげで我が家では、砂糖は敵だ!みたいな風潮があった。お菓子を作る時に砂糖を減らすと上手に膨らまなくて、レシピ通りに作ると大量の砂糖を目の当たりにしてしまうし、当時の私にとっては大きなジレンマだった。だからお菓子作りは苦手だ。

かつての職業柄、大人になってから色んな地域でばあちゃん達の料理を食べる機会が増えて、私は彼女達の砂糖使いに衝撃を受けた。何を食べても大体甘い。最初は我が家の鉄の掟を守ろうと、甘いのなんてと思っていたけれど、そうやって払いのけることが出来ないほどにばあちゃん達の料理は美味しかった。

特に大好きなのは、「やまっこ」という地元で豆腐や揚げを作っているばあちゃんグループの料理で、そこの惣菜は何を食べても美味しくてついお代わりをねだってしまう。長年、農家の嫁をしてきた彼女達は大人数の料理を仕込むのも得意なので、砂糖を使って味に深みを出すのがとても得意なのだ。そしてレパートリーの数もすさまじい。今日採れた野菜をその日のメニューにちゃちゃちゃ〜とやってしまう感じにひたすら感心する。実家へ帰るたびに食べに行きたくなる場所で、本当に美味しいんだよなあ。私が弁当に詰め込みたいのはそんな味。そぼろごはんは地元のばあちゃん達をイメージしている。うちの母親が作るお出汁がきいた料理とばあちゃん達の砂糖使いをいつかマスターして、さらに自分の好きなものを織り込んで、わくわくするような料理が作れたらいいなあ、と思う。

最近「農家の娘」と呼ばれている私は、色んな地域の色んなばあちゃん達との思い出で出来上がっているとつくづく思う。

2017年06月06日

「サウダーヂな夜」という変わったカフェバーで創刊された「週刊私自身」がいつの間にか私の代名詞。岡山でひっそりといつも自分のことばかり書いてます。