えみ

「えみ」の自叙伝。 徒然なるままに言葉を紡ぎ、その瞬間の「わたし」の切れ端を残す。 そ…

えみ

「えみ」の自叙伝。 徒然なるままに言葉を紡ぎ、その瞬間の「わたし」の切れ端を残す。 その一片、一つ一つを再度手に取り、私自身がそれを愛せるように。

最近の記事

生きる

生きるのがこわい。 実感をもって生きるのが。 心が生き生きと「いま」に呼応し、生身の「わたし」にダイレクトに伝わる生き方をしてしまったら、何か怖いことが起こるんじゃないかと、こわい。 「わたし」を幾重にもぼやかして、なにが自分の気持ちかも分からないような酩酊状態で生きていると、楽しくはないけれど、何かあった時に強く傷つけられることもない。 まるで、世界との間に分厚いガラスの隔たりがあるように、わたしを守る。 でもたまに、自分を呼び起こすようなものに遭遇して、心が動く。 そ

    • スケスケスケブ

      高校1年生の時が、一番絵を描いていた。 久しぶりに、スケッチブックをしまってる棚を開けてみたら、一緒に仕舞ってたココナッツオイルが容れ物から漏れて、オイル塗れになってしまっていた。 裏表、何なら2、3ページ先まで見えちゃう、透け透けスケッチブック。 思い出の、淡いスケスケスケブ。

      • 孵化する準備は、きっとずっと前からできてた。大丈夫だよ。

        • 孤独に潜る

          「なぜ生きているのだろう」そんな取り留めのない事を考えるのが好きな、変わった子どもであった。 そして、年端も行かない子どもが、その問いを持っている事の奇異さと、ある種優越で慰めている孤独さを、無意識のうちに理解していたので、口に出して周りに聞くような事はしなかった。 昏い問いは、実生活での乾きを表しており、ひとたび、それを自身の問題として提示すれば、私の満たされない寂しさを気取られる、と何処かで分かっていたのだ。 「孤独」を悪としか捉えない文化圏に生きる人々に囲まれ、自

        生きる

          始まりのゴング・濡れたパジャマ

          「お父さん、欲しいでしょ…?」 少し震えた猫撫で声で、伺う様に、しかし反論を許さぬ様に、母が尋ねてきた。 その強く媚びたような目に、いつもと様相が違うのを子供ながらに感じ取った私は、思わず目を逸らしたくなった。けれど、何故か今逸らしてはならない気がして、私も懸命に母を見つめ返し、咄嗟に「いらない」と答えた。 ひざまづき、私を下から見上げる母の目が、瞬間赤く揺れる。 私は洗面台の前に置かれた、古いバスチェアの上に立ち、母に両腕を掴まれていた。 顔を洗っていたのだ。 身長の足りな

          始まりのゴング・濡れたパジャマ